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黒猫とピンクのバラを、君に。

#9

最後の一撃は、愛のように。

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店内に足を踏み入れた瞬間、鉄の匂いが鼻をついた。


暴れていたのは、かつて斗真が「身代わり」になって救ったはずの男だった。


男「お前のせいだ……! お前が代わりに殴られたせいで、
俺の惨めさが消えなかったんだよ!」


男は酒に酔い、狂ったように拳を振り回していた。


店主は床に倒れ、椅子やテーブルが無惨に壊されている。


男の手には、鋭く光るナイフが握られていた。


結衣が「行かないで」と服の裾を掴む。だが、斗真は静かにその手を解いた。


斗真「……これが俺の役割なんだ。あいつの絶望を、誰かが止めなきゃいけない」


斗真は一歩、また一歩と、凶器を構える男へと近づく。


殴られ屋として、数多の拳を受けてきた。


けれど、今日ほど足が重い日はなかった。


[大文字][斜体]生きたい。結衣と笑いたい。[/斜体][/大文字]


初めて芽生えたその「欲」が、死への恐怖を増幅させる。


斗真「来いよ。……全部、俺が受け止めてやる」


男が叫び声を上げ、突っ込んできた。


鈍い衝撃。


けれど、斗真は避けなかった。


腹部に走る、熱いような、冷たいような感覚。


男の拳ではなく、ナイフが深く、斗真の体を貫いていた。


斗真「……っ、がは……」


血が溢れ、視界が急激に白くなっていく。


それでも、斗真は男の体を力強く抱きしめた。


斗真「……これで、気が済んだか。……もう、自分を、責めるな……」


男の手から力が抜け、ナイフが床に落ちる。


泣き崩れる男を背に、斗真の膝がゆっくりと折れた。


結衣「斗真!!」


駆け寄る結衣の叫びが、遠くで聞こえる。


彼女が流した涙が斗真の頬に落ちた瞬間、
店中に敷き詰められていたピンクのバラが、一斉に枯れて散っていくのが見えた。


ああ……そうか。あのバラは、俺の命の欠片だったんだな……


誰かのために削り続けてきた、自分の命。


斗真は薄れゆく意識の中で、必死に結衣の手を握り返した。


結衣「クロ……泣かないで……くれ。俺は、幸せ、だった……」


窓の外では、黒猫が悲しげに一度だけ鳴き、夜の深淵へと消えていった。


静まり返った店内に、結衣の慟哭だけが響き渡る。
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暴力表現ファンタジー黒猫花言葉バラ

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