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黒猫とピンクのバラを、君に。

#7

ヒーローになんて、なれなくても。

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昨日、店で声を上げて泣いたせいか、今朝の斗真の心は驚くほど軽かった。


鏡に映る傷だらけの顔。


以前は「自分への罰」だと思っていたその傷が、
今は「誰かの痛みを受け止めてきた証」に見えた。


学校の廊下を歩く。相変わらず、周囲は波が引くように距離を取る。


けれど、斗真はもう下を向かなかった。


斗真「……あ…」


隣の席の女子生徒が消しゴムを落としたとき、斗真は自然に手を伸ばして拾い上げた。


隣の子「あ、ありがとう……」


驚きで固まる彼女に、斗真は小さく、本当に微かにだけ口角を上げた。


それだけで、教室の空気の粒子が少しだけ入れ替わったような気がした。


放課後、いつもの店へ向かう道すがら、斗真は公園の隅でうずくまる少年を見つけた。


上級生たちに囲まれ、今にも殴られそうになっている。


かつての斗真なら「代わりに俺を殴れ」と言っただろう。


だが、今の斗真は違った。少年の前に立ちはだかり、真っ直ぐに上級生たちの目を見据えた。


斗真「やめろ。……痛みは、与えるもんじゃない。分かち合うもんだ」


その瞳に宿る静かな、けれど圧倒的な力強さに圧され、上級生たちは逃げるように去っていった。



少年「……お兄ちゃん、かっこいい」


少年の言葉に、斗真の胸が熱くなる。


殴られなくても、誰かを守れる。


その事実に、彼は初めて救われた気がした。


店に着くと、カウンターには六輪のバラが置かれていた。


そしてその横には、一通の封筒。


中には、学校の制服を着た一人の少女の後ろ姿が写った写真が入っていた。


その足元には、あの黒猫が寄り添っている。


斗真「……お前、学校にいるのか?」


窓の外を見ると、夕闇の中で金色の瞳が一つ、悪戯っぽく瞬いた。


その視線は、明日への招待状のようだった。
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暴力表現ファンタジー黒猫花言葉バラ

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