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黒猫とピンクのバラを、君に。

#6

凍りついた記憶と、雨の日の約束。

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写真に写っていた、傷のない自分。


斗真はその感触をなぞりながら、封印していた幼い頃の記憶を呼び起こした。


かつて、斗真の家は笑顔で溢れていた。


父は優しく、母はいつも穏やかで、そして足元には一匹の黒猫がいた。


すべてが変わったのは、ある雨の日の事故だった。


暴走した車が、幼い斗真の目の前で家族の命を奪った。


自分だけが生き残ったという罪悪感。


そして、事故の時に顔に負った深い傷は、幼い彼から笑顔を奪い、
周囲から「不吉な子」として遠ざけられる原因となった。


親戚を転々とし、孤独に耐えかねた中学時代。


ある日、自暴知らずに喧嘩に明け暮れていた斗真を、今の店の店主が拾ったのだ。



店主「お前の拳は、誰かを傷つけるためのもんじゃない。……痛みを知るためのもんだ」


店主はそう言って、斗真に「殴られ屋」の仕事を与えた。


最初はただ、自分を罰するつもりだった。


殴られることで、生き残った罪が消えるような気がしたから。


だが、次第に気づき始めた。


自分の体に刻まれる痛みは、誰かの「怒り」や「悲しみ」を吸い取っているのだと。


自分が傷つくことで、誰かの心が少しだけ軽くなる。


それが、家族を守れなかった斗真にとって、唯一の罪滅ぼしであり、生きる理由になった。


回想から覚めた斗真の前に、一輪のバラがハラリと落ちた。


気がつくと、あの黒猫がカウンターの隅で、悲しそうな瞳で斗真を見つめていた。


斗真「……お前、あの時の猫なのか?」


猫は答えず、ただ斗真の手に鼻先を寄せた。


その瞬間、斗真の脳裏に、母が最後に言った言葉が蘇る。


[大文字][太字][明朝体][斜体]『斗真。誰かのために泣ける、優しい子になりなさい』[/斜体][/明朝体][/太字][/大文字]


斗真の瞳から、一筋の涙がこぼれた。


長年、痛みに耐えるために凍らせていた心が、バラの香りに包まれてゆっくりと溶け出していく。


斗真「俺は、ただ……誰かを救いたかっただけなんだ……」


夜の店内で、斗真は初めて声を上げて泣いた。


黒猫は、そんな彼のそばから離れようとはしなかった。
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作者メッセージ

悲しい思い出が、今も残っているなら、この黒猫が、記憶と共に包み込んでくれますように。

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この小説につけられたタグ

暴力表現ファンタジー黒猫花言葉バラ

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