______________________
ピコ、と軽い音がして、画面がスタートする。
ソファの上。
肩が触れるほどの距離。
——いや、もう触れてる。
菜乃花「……近くありませんか」
軟「そう?」
まったく気にしてない声。
軟は片膝を立てて、背もたれにだらっと寄りかかっている。
そのせいで、菜乃花は逃げ場を失っていた。
執事は、主に集中させてはいけない……
分かってる。
分かってるのに。
軟「そこ右」
菜乃花「え、あ——」
肩越しに、軟の手が伸びてくる。
指が、コントローラーを持つ菜乃花の手に重なった。
菜乃花「っ……!」
軟「動かすの遅い」
耳元で、低い声。
菜乃花の思考が、一瞬で吹き飛ぶ。
菜乃花「じ、自分でできます……!」
軟「できてないじゃん」
そのまま、手を離さない。
近い。
近すぎる。
呼吸が分かる距離。
これは、執事として——
言い聞かせようとした瞬間。
軟「なあ」
菜乃花「は、はい」
軟「さっきさ」
声が、少しだけ柔らかい。
軟「“付き合え”って言われて、何考えた?」
___________……来た。
菜乃花「……何も」
軟「嘘」
軟は、ゲーム画面から目を離さず言う。
軟「一瞬、固まった」
指先が、きゅっと絡められる。
菜乃花「……っ、軟様」
軟「今も固まってる」
画面では、キャラが棒立ちだ。
菜乃花「……これは、遊びです」
軟「うん」
即答。
軟「でもさ」
少し顔を近づけて、
軟「遊びにしては、顔赤くない?」
限界だった。
菜乃花「——執事は!!」
軟「はい?」
菜乃花「主に、こんな……距離で……!」
言い切れずに、声がしぼむ。
軟は、ようやくこちらを見る。
菜乃花の顔を。
軟「……あー」
理解したように、笑った。
軟「自覚、崩れてるね」
菜乃花「っ……!」
軟は悪びれもせず、さらに距離を詰める。
軟「でもさ」
菜乃花「や、やめ——」
軟「今ここにいるの、執事の“星野菜乃花”?」
一拍。
軟「それとも、俺の暇つぶし相手?」
胸が、ぎゅっと掴まれる。
菜乃花「……卑怯です」
軟「知ってる」
画面で、ゲームオーバーの文字。
軟「ほら、負け」
菜乃花「……」
軟はコントローラーを置いて、満足そうに言う。
軟「集中できなくなった時点で、もう執事失格じゃん」
菜乃花「……言わないでください」
俯いた菜乃花の頭に、ぽん、と手が乗る。
軟「大丈夫」
軽い声なのに。
軟「崩れた自覚、俺が管理してやるから」
心臓が、うるさすぎる。
……この人のそばにいると
執事でいることが、
どんどん難しくなる。
それでも離れられないのが、
一番の問題だった。
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ピコ、と軽い音がして、画面がスタートする。
ソファの上。
肩が触れるほどの距離。
——いや、もう触れてる。
菜乃花「……近くありませんか」
軟「そう?」
まったく気にしてない声。
軟は片膝を立てて、背もたれにだらっと寄りかかっている。
そのせいで、菜乃花は逃げ場を失っていた。
執事は、主に集中させてはいけない……
分かってる。
分かってるのに。
軟「そこ右」
菜乃花「え、あ——」
肩越しに、軟の手が伸びてくる。
指が、コントローラーを持つ菜乃花の手に重なった。
菜乃花「っ……!」
軟「動かすの遅い」
耳元で、低い声。
菜乃花の思考が、一瞬で吹き飛ぶ。
菜乃花「じ、自分でできます……!」
軟「できてないじゃん」
そのまま、手を離さない。
近い。
近すぎる。
呼吸が分かる距離。
これは、執事として——
言い聞かせようとした瞬間。
軟「なあ」
菜乃花「は、はい」
軟「さっきさ」
声が、少しだけ柔らかい。
軟「“付き合え”って言われて、何考えた?」
___________……来た。
菜乃花「……何も」
軟「嘘」
軟は、ゲーム画面から目を離さず言う。
軟「一瞬、固まった」
指先が、きゅっと絡められる。
菜乃花「……っ、軟様」
軟「今も固まってる」
画面では、キャラが棒立ちだ。
菜乃花「……これは、遊びです」
軟「うん」
即答。
軟「でもさ」
少し顔を近づけて、
軟「遊びにしては、顔赤くない?」
限界だった。
菜乃花「——執事は!!」
軟「はい?」
菜乃花「主に、こんな……距離で……!」
言い切れずに、声がしぼむ。
軟は、ようやくこちらを見る。
菜乃花の顔を。
軟「……あー」
理解したように、笑った。
軟「自覚、崩れてるね」
菜乃花「っ……!」
軟は悪びれもせず、さらに距離を詰める。
軟「でもさ」
菜乃花「や、やめ——」
軟「今ここにいるの、執事の“星野菜乃花”?」
一拍。
軟「それとも、俺の暇つぶし相手?」
胸が、ぎゅっと掴まれる。
菜乃花「……卑怯です」
軟「知ってる」
画面で、ゲームオーバーの文字。
軟「ほら、負け」
菜乃花「……」
軟はコントローラーを置いて、満足そうに言う。
軟「集中できなくなった時点で、もう執事失格じゃん」
菜乃花「……言わないでください」
俯いた菜乃花の頭に、ぽん、と手が乗る。
軟「大丈夫」
軽い声なのに。
軟「崩れた自覚、俺が管理してやるから」
心臓が、うるさすぎる。
……この人のそばにいると
執事でいることが、
どんどん難しくなる。
それでも離れられないのが、
一番の問題だった。
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