______________________
その日は、特に変わったことのない一日だった。
朝は掃除。
昼は洗濯。
夕方は紅茶の準備。
屋敷の廊下を静かに歩きながら、菜乃花は完璧に“執事”をこなしていた。
……平和ですね
——その油断がいけなかった。
軟「なあ、菜乃花」
ソファに寝転がったまま、間延びした声。
菜乃花「はい、軟様。何かご用でしょうか」
軟は天井を見たまま、だるそうに言う。
軟「暇」
菜乃花「……存じております」
毎日見てる。
軟「だからさ」
菜乃花「?」
軟「[太字][太字]付き合え[/太字][/太字]」
その一言で。
菜乃花の動きが、ぴたりと止まった。
……付き合、う……?
一瞬だけ。
本当に一瞬だけ。
[大文字]“恋人として?”[/大文字]
そんなありえない言葉が、頭をよぎってしまった。
胸が、きゅっと縮む。
菜乃花「……ど、どういう意味でしょうか」
声が、ほんの少しだけ揺れた。
軟はようやく体を起こし、菜乃花を見る。
軟「ん?」
___________一拍。
軟「遊ぶ方だけど?」
[大文字]ズドン。[/大文字]
菜乃花の中で、何かが盛大に崩れた。
菜乃花「……っ」
軟「その顔なに?」
軟は不思議そうに首を傾げる。
菜乃花「い、いえ。失礼しました。勘違いを——」
軟「勘違い?」
軟はニヤリと笑う。
軟「今、ちょっと期待した?」
菜乃花「してません!!」
即答。
う
顔は真っ赤。
軟「へー」
立ち上がって、距離を詰めてくる。
軟「じゃあなんで耳まで赤いんですか、執事さん」
菜乃花「……からかわないでください」
軟は満足そうに鼻で笑った。
軟「いいじゃん。暇つぶし相手に選ばれるの、光栄だろ?」
菜乃花「選び方が雑すぎます」
軟「俺は本気だよ?」
そう言って、ゲーム機を
押し付けてくる。
軟「対戦な。負けた方、言うこと聞く」
菜乃花「……執事の仕事が」
軟「今は俺の相手が仕事」
ずるい。
菜乃花はため息をつきつつ、コントローラーを受け取る。
菜乃花「……本当に、自己中心的です」
軟「今さら?」
画面がスタートする。
並んで座る距離が、やけに近い。
さっきまでの勘違いが、胸の奥でくすぶったまま。
……遊ぶ方、ですか
なのに。
軟「なあ」
菜乃花「はい」
軟は画面を見たまま、さらっと言う。
軟「こうやって一緒に暇つぶせるの、お前だけだから」
心臓が、またうるさくなる。
菜乃花「……それ、言う必要ありますか」
軟「ある」
ニヤッ。
軟「勘違いされるかもだし?」
菜乃花「っ……!」
完全に、遊ばれている。
でも——
嫌じゃないのが、いちばん厄介だった。
その日は、特に変わったことのない一日だった。
朝は掃除。
昼は洗濯。
夕方は紅茶の準備。
屋敷の廊下を静かに歩きながら、菜乃花は完璧に“執事”をこなしていた。
……平和ですね
——その油断がいけなかった。
軟「なあ、菜乃花」
ソファに寝転がったまま、間延びした声。
菜乃花「はい、軟様。何かご用でしょうか」
軟は天井を見たまま、だるそうに言う。
軟「暇」
菜乃花「……存じております」
毎日見てる。
軟「だからさ」
菜乃花「?」
軟「[太字][太字]付き合え[/太字][/太字]」
その一言で。
菜乃花の動きが、ぴたりと止まった。
……付き合、う……?
一瞬だけ。
本当に一瞬だけ。
[大文字]“恋人として?”[/大文字]
そんなありえない言葉が、頭をよぎってしまった。
胸が、きゅっと縮む。
菜乃花「……ど、どういう意味でしょうか」
声が、ほんの少しだけ揺れた。
軟はようやく体を起こし、菜乃花を見る。
軟「ん?」
___________一拍。
軟「遊ぶ方だけど?」
[大文字]ズドン。[/大文字]
菜乃花の中で、何かが盛大に崩れた。
菜乃花「……っ」
軟「その顔なに?」
軟は不思議そうに首を傾げる。
菜乃花「い、いえ。失礼しました。勘違いを——」
軟「勘違い?」
軟はニヤリと笑う。
軟「今、ちょっと期待した?」
菜乃花「してません!!」
即答。
う
顔は真っ赤。
軟「へー」
立ち上がって、距離を詰めてくる。
軟「じゃあなんで耳まで赤いんですか、執事さん」
菜乃花「……からかわないでください」
軟は満足そうに鼻で笑った。
軟「いいじゃん。暇つぶし相手に選ばれるの、光栄だろ?」
菜乃花「選び方が雑すぎます」
軟「俺は本気だよ?」
そう言って、ゲーム機を
押し付けてくる。
軟「対戦な。負けた方、言うこと聞く」
菜乃花「……執事の仕事が」
軟「今は俺の相手が仕事」
ずるい。
菜乃花はため息をつきつつ、コントローラーを受け取る。
菜乃花「……本当に、自己中心的です」
軟「今さら?」
画面がスタートする。
並んで座る距離が、やけに近い。
さっきまでの勘違いが、胸の奥でくすぶったまま。
……遊ぶ方、ですか
なのに。
軟「なあ」
菜乃花「はい」
軟は画面を見たまま、さらっと言う。
軟「こうやって一緒に暇つぶせるの、お前だけだから」
心臓が、またうるさくなる。
菜乃花「……それ、言う必要ありますか」
軟「ある」
ニヤッ。
軟「勘違いされるかもだし?」
菜乃花「っ……!」
完全に、遊ばれている。
でも——
嫌じゃないのが、いちばん厄介だった。