[漢字]菖[/漢字][ふりがな]あやめ[/ふりがな]は、今過ごしている家族の“本当の子供”ではありません。菖もそれは知っていて、でも、厳しい親だったことしか覚えていないのでした。
好奇心が抑えられなくなった、14歳のある日。
「姉ちゃんは、知ってたんでしょ?前の家族のこと、教えてよ。」菖は姉に聞いてみることにしました。
「だいぶ前のことだから、あんまり覚えてないんだよね。」彼の姉は困ったように言いながらも、目をつぶって考え始めます。
姉は今、不登校になっていました。それでも、彼にとっては優しく接してくれる存在で、なにより記憶の中で唯一血のつながっているひとでした。
「どう?思い出した?」
菖は一刻も早く知りたくてたまりません。期待を滲ませて姉を急かします。返答は、ありませんでした。
いつの間にか、姉の額には脂汗が浮かんでいました。手が微かに震えているようにも見えます。
「……姉ちゃん、大丈夫?」
菖が心配そうに問いかけると、姉はゆっくりと目を開けました。
「大丈夫。思い出した。……でも、言えない。」
「なんで?」菖には、なぜ話してくれないのか、なぜそこまで動揺しているのか不思議でした。
「どう言っていいかわかんないし、話したくもないから。ごめん。」
彼女は微笑みを浮かべて言いました。しかし、頬を一筋の雫が伝っていました。
「なんで、隠すんだよ……?」
菖は思わず呟きましたが、返事は返ってきません。そのまま姉は静かに自分の部屋へと向かいました。
その日の姉はずっと無口でした。いつも通りの笑顔で、でも、口数が極端に少ないのです。もしかしたら、普段の笑顔も貼り付けた作り笑いだったのかもしれない。菖は時間がたつにつれ、そう思うようになりました。
いつも優しかっただけに、冷たく接されたこと、その原因が菖自身であることが悲しく感じられるのでした。
[打消し] [/打消し]夜。
「姉ちゃん、さっきはごめん。……外、行かない?」
菖は勇気を出して声をかけます。姉は驚いた様子でしたが、すぐに小さく頷きました。
「別に、隠したいわけじゃないんだけど、結構複雑だったっぽくてさ。」
外に出てしばらくすると、姉は自嘲気味に語りだしました。そんな彼女を見るのは菖にとっても初めてで、彼もまた戸惑ってしまいます。
歩きながら、姉は自分と菖の過去をポツリポツリと話します。彼女が隠した[打消し] [/打消し]いや、言えなかったのも納得できるような、菖の想像もつかないような話でした。菖にはそんな痛みの記憶はなく。ただの好奇心でそれを語らせてしまった後悔が、菖の胸を渦巻きます。
その店に出会ったのは、そんな時でした。
「姉ちゃん、あの店入ってみない?」と菖は姉を誘ってみました。姉はもちろん頷くのでした。
その店の名前は「夢映画館」。入口のあたりに、”望む未来、叶えます”というポスターが貼ってあります。菖はこのポスターに惹かれたのでした。夜に光る派手な電球の幻想的な雰囲気が、周囲を美しく染めていました。
ドアを開けると、そこには一人の男が立っていました。彼は菖たちを見て、懐かしさと驚きが混じったような顔をしました。しかしすぐにその表情は消え、もとの無表情に戻りました。
しかし、いらっしゃいませと菖たちを迎える声には、どこか愛情が滲んでいるのでした。
好奇心が抑えられなくなった、14歳のある日。
「姉ちゃんは、知ってたんでしょ?前の家族のこと、教えてよ。」菖は姉に聞いてみることにしました。
「だいぶ前のことだから、あんまり覚えてないんだよね。」彼の姉は困ったように言いながらも、目をつぶって考え始めます。
姉は今、不登校になっていました。それでも、彼にとっては優しく接してくれる存在で、なにより記憶の中で唯一血のつながっているひとでした。
「どう?思い出した?」
菖は一刻も早く知りたくてたまりません。期待を滲ませて姉を急かします。返答は、ありませんでした。
いつの間にか、姉の額には脂汗が浮かんでいました。手が微かに震えているようにも見えます。
「……姉ちゃん、大丈夫?」
菖が心配そうに問いかけると、姉はゆっくりと目を開けました。
「大丈夫。思い出した。……でも、言えない。」
「なんで?」菖には、なぜ話してくれないのか、なぜそこまで動揺しているのか不思議でした。
「どう言っていいかわかんないし、話したくもないから。ごめん。」
彼女は微笑みを浮かべて言いました。しかし、頬を一筋の雫が伝っていました。
「なんで、隠すんだよ……?」
菖は思わず呟きましたが、返事は返ってきません。そのまま姉は静かに自分の部屋へと向かいました。
その日の姉はずっと無口でした。いつも通りの笑顔で、でも、口数が極端に少ないのです。もしかしたら、普段の笑顔も貼り付けた作り笑いだったのかもしれない。菖は時間がたつにつれ、そう思うようになりました。
いつも優しかっただけに、冷たく接されたこと、その原因が菖自身であることが悲しく感じられるのでした。
[打消し] [/打消し]夜。
「姉ちゃん、さっきはごめん。……外、行かない?」
菖は勇気を出して声をかけます。姉は驚いた様子でしたが、すぐに小さく頷きました。
「別に、隠したいわけじゃないんだけど、結構複雑だったっぽくてさ。」
外に出てしばらくすると、姉は自嘲気味に語りだしました。そんな彼女を見るのは菖にとっても初めてで、彼もまた戸惑ってしまいます。
歩きながら、姉は自分と菖の過去をポツリポツリと話します。彼女が隠した[打消し] [/打消し]いや、言えなかったのも納得できるような、菖の想像もつかないような話でした。菖にはそんな痛みの記憶はなく。ただの好奇心でそれを語らせてしまった後悔が、菖の胸を渦巻きます。
その店に出会ったのは、そんな時でした。
「姉ちゃん、あの店入ってみない?」と菖は姉を誘ってみました。姉はもちろん頷くのでした。
その店の名前は「夢映画館」。入口のあたりに、”望む未来、叶えます”というポスターが貼ってあります。菖はこのポスターに惹かれたのでした。夜に光る派手な電球の幻想的な雰囲気が、周囲を美しく染めていました。
ドアを開けると、そこには一人の男が立っていました。彼は菖たちを見て、懐かしさと驚きが混じったような顔をしました。しかしすぐにその表情は消え、もとの無表情に戻りました。
しかし、いらっしゃいませと菖たちを迎える声には、どこか愛情が滲んでいるのでした。