「…ちょっと待ってください」
「え?」
千鶴さんを呼びとめる。
「何?」
「千鶴さん、未来は見えないんですか」
「未来?ごめんなさい、わたしはそこに物理的にあるモノしか見えないのよ」
「そうですか…」
「なぜかしら?」
「帰りたくて、」
打ち明ける。怖かった。自分たちの住むところを嫌がるのか、と思ってしまったらどうしよう。
「…わたし、帰りたいんです。記憶が全くなくて。きっと向こうでやり残したこともあるし、千晴みたいにここでやりたいことも何もない。でも、未来が全く見えない。千鶴さん、見えないかって思ったけど、無理ですよね」
「できないこともないわよ」
「え?」
千鶴さんは、にこやかに微笑んでみせた。それは、余裕を感じさせるモノだった。
「だって、わたしの知り合いに未来が見える人がいるもの」
「え」
「ええ。もちろん、彼女が見る未来は変更可能なものよ。絶対じゃない。行動次第で、それはゆらゆらと揺れ動くもの。どう、みてみたい?」
「…はい」
躊躇いがちに言ってみた。帰る未来が見えなくても、帰るよう努めたらいい。それだけのことだ。[水平線]
「ここよ」
千鶴さんが案内したのは、パステルカラーのベールに包まれた館だった。
「ふふ、どうしたのかしら?あら、千鶴も一緒じゃない」
「この子の未来をみてあげてくれないかしら。料金はわたしが支払うわ。この子、ここに迷い込んだ子で、元の世界に帰りたいみたいなの。帰ることのできる未来が見えるか、心配らしいのよ」
「わかったわ。料金なんていらないわ、友達でしょう?さあ、そこにお座りなさいな」
狭い館の中。机を挟んで、向こう側に長い桃色髪の彼女がいる。館と同じ色の上着を着ていた。
「初めまして。貴方の名前は何かしら?」
「…弥生賀史織」
「ふふ、いい名前ね。わたしの名前は[漢字]天野日恵那[/漢字][ふりがな]あまのひえな[/ふりがな]、占い師をやっているのよ。名前から分かる通り、わたしはアマビエなの。知らないかしら、妖怪の」
「…なんとなくは」
世界的に病気が流行った時、なんとなくブームになっていたのは覚えている。
「とにかく、貴方の未来を見るわね。でも、その前に少し喋らないかしら?わたしは未来が見えるから、大抵のことは何も言わなくてもいいの。昔はそうしていた。でも、ある時、不意に『今』を大切にした方がいいと思って。今があるから、未来がある。ちょっと先の『今』は、未来。とにかく、今を大切にしたい、誰かとのひとときを大切にしたくなったのよ。だから、色々と喋らない?」
「はい」
そう言って、質問に答えた。ここの生活は楽しいか、撫子や千晴などとはどうなのか、等々。その後、急に喋り出した。「ふふ、未来が見えたわ」
「見えたんですか」
「ええ。でも、貴方はきっと、教えない方がいいかもしれない。もちろん、プラスの意味よ。貴方に教えないから、ここは素晴らしくなる。そう思うわ。でも、何も言っていないと時間の無駄だと思うでしょう?だから、これだけは言うわ」
「はい」
「ある時、一大事が発生する。事件よ。何者かが意図的に起こしたものよ。貴方はそれを解決して、最後には微笑むわ」
その言葉が何を意味するのか、まるでわからなかった。
「え?」
千鶴さんを呼びとめる。
「何?」
「千鶴さん、未来は見えないんですか」
「未来?ごめんなさい、わたしはそこに物理的にあるモノしか見えないのよ」
「そうですか…」
「なぜかしら?」
「帰りたくて、」
打ち明ける。怖かった。自分たちの住むところを嫌がるのか、と思ってしまったらどうしよう。
「…わたし、帰りたいんです。記憶が全くなくて。きっと向こうでやり残したこともあるし、千晴みたいにここでやりたいことも何もない。でも、未来が全く見えない。千鶴さん、見えないかって思ったけど、無理ですよね」
「できないこともないわよ」
「え?」
千鶴さんは、にこやかに微笑んでみせた。それは、余裕を感じさせるモノだった。
「だって、わたしの知り合いに未来が見える人がいるもの」
「え」
「ええ。もちろん、彼女が見る未来は変更可能なものよ。絶対じゃない。行動次第で、それはゆらゆらと揺れ動くもの。どう、みてみたい?」
「…はい」
躊躇いがちに言ってみた。帰る未来が見えなくても、帰るよう努めたらいい。それだけのことだ。[水平線]
「ここよ」
千鶴さんが案内したのは、パステルカラーのベールに包まれた館だった。
「ふふ、どうしたのかしら?あら、千鶴も一緒じゃない」
「この子の未来をみてあげてくれないかしら。料金はわたしが支払うわ。この子、ここに迷い込んだ子で、元の世界に帰りたいみたいなの。帰ることのできる未来が見えるか、心配らしいのよ」
「わかったわ。料金なんていらないわ、友達でしょう?さあ、そこにお座りなさいな」
狭い館の中。机を挟んで、向こう側に長い桃色髪の彼女がいる。館と同じ色の上着を着ていた。
「初めまして。貴方の名前は何かしら?」
「…弥生賀史織」
「ふふ、いい名前ね。わたしの名前は[漢字]天野日恵那[/漢字][ふりがな]あまのひえな[/ふりがな]、占い師をやっているのよ。名前から分かる通り、わたしはアマビエなの。知らないかしら、妖怪の」
「…なんとなくは」
世界的に病気が流行った時、なんとなくブームになっていたのは覚えている。
「とにかく、貴方の未来を見るわね。でも、その前に少し喋らないかしら?わたしは未来が見えるから、大抵のことは何も言わなくてもいいの。昔はそうしていた。でも、ある時、不意に『今』を大切にした方がいいと思って。今があるから、未来がある。ちょっと先の『今』は、未来。とにかく、今を大切にしたい、誰かとのひとときを大切にしたくなったのよ。だから、色々と喋らない?」
「はい」
そう言って、質問に答えた。ここの生活は楽しいか、撫子や千晴などとはどうなのか、等々。その後、急に喋り出した。「ふふ、未来が見えたわ」
「見えたんですか」
「ええ。でも、貴方はきっと、教えない方がいいかもしれない。もちろん、プラスの意味よ。貴方に教えないから、ここは素晴らしくなる。そう思うわ。でも、何も言っていないと時間の無駄だと思うでしょう?だから、これだけは言うわ」
「はい」
「ある時、一大事が発生する。事件よ。何者かが意図的に起こしたものよ。貴方はそれを解決して、最後には微笑むわ」
その言葉が何を意味するのか、まるでわからなかった。