「そうだ、忘れちゃダメなのがあった」
人が住むような街に来た時、撫子はあっと言った。何が忘れちゃダメなんだろうか、と思うのも束の間、他のメンバーも思い出したような感じだった。
「この世界は、全員能力を持っている。能力ナシでは生きていけない。だから、今から私が能力を与える」
急展開だった。ぽかんとしている間、彼女は何やら言っていた。真似しようとしても、そんな音出せない。苦戦している間、撫子は手を茶色に光らせ、わたしの手のひらに手を置いた。
ふわっと体中が熱くなる。なんだかエネルギーを与えられている気分だった。その時、ふっと映像がよぎった。撫子がうつっている。伊舎那もいるけど、千晴はいない。
やがて熱気がおさまると、撫子は微笑んだ。
「あんたには『歴史触感』の能力を与えた。ものに触れると、そのものの歴史を感じることができる」
「…そんなの、要らなすぎる」
「いいから、ないよりはマシでしょ。受け取って」
そう言って、わたしは渋々能力を受け取った。拒否権なんて、ないんだろうけど。[水平線]
その後、普通の家をもらい、戸籍の処理をして住むことになった。働き口を見つけなきゃ、と思ったが、すこしはお金がもらえるらしい。それは単に、撫子と伊舎那がわたしのことを気に入ったから、だそうだ。
「良かったですね、史織さん。なかなか気に入ってもらえることはないんですよ」
と、千晴は皮肉っぽく言った。
「将来は陰陽師になりたいんですけどねー、あたしも他の世界から来たんです。そしたら、なんか跡継ぎがいないからって、無理くり伊舎那様の巫女にされちゃって。巫女の跡継ぎが生まれたら、いつでも死ねる長寿の身にして、陰陽師にさせてやるって言うんですよ。絶対そんなことないし、跡継ぎなんていないに等しいんです。あと、あたしの能力知ってます?『神様憑依』ですよ。あたしも、史織さんみたいにもっと使える感じの能力が良かったんですよ、こんな巫女のためのものって」
「いるんじゃない?子供もうまれるだろうし、わたしみたいに来る人もいるだろうし…」
「いいえ。ここでは平均寿命が余裕で長くって、しかも人間はそんないないんです。人間は来るけど、最終的には別な種族になっちゃうんです。子供も生まれないし、あと何年待てばいいのやら…って感じで。しかも史織さんは撫子さんにも気に入られてるから、多分巫女にならないんだろうし」
そんな千晴の愚痴を思い出すと、今更苦笑いが込み上げてきた。
家にすこし触れると、映像がパッと脳内を駆け抜けていった。撫子があっという間に土地をつくり、家をつくる姿が。
「あ…」
「どうしたんですか?」
「これが能力なんだ」
駆け抜けて行った姿と映像は、多分過去だ。歴史だ。
「ああ、これが能力なんだ。今、撫子があっという間に土地をつくって、家をつくる映像が思い浮かんだ」
「へー、あ、あと撫子さん、呼び捨てなんですね」
「あ」
「ま、別にいいじゃないですか。あたしはいつも見張られている感じがするから、そうそう敬語を外せないのが悩みなんですよねぇ…おっと、また飛んできそう」
そう言いながら、千晴の小さな家で、少しずつ緑茶を飲んだ。温かい苦みが、わたしの体を落ち着かせてくれた。
人が住むような街に来た時、撫子はあっと言った。何が忘れちゃダメなんだろうか、と思うのも束の間、他のメンバーも思い出したような感じだった。
「この世界は、全員能力を持っている。能力ナシでは生きていけない。だから、今から私が能力を与える」
急展開だった。ぽかんとしている間、彼女は何やら言っていた。真似しようとしても、そんな音出せない。苦戦している間、撫子は手を茶色に光らせ、わたしの手のひらに手を置いた。
ふわっと体中が熱くなる。なんだかエネルギーを与えられている気分だった。その時、ふっと映像がよぎった。撫子がうつっている。伊舎那もいるけど、千晴はいない。
やがて熱気がおさまると、撫子は微笑んだ。
「あんたには『歴史触感』の能力を与えた。ものに触れると、そのものの歴史を感じることができる」
「…そんなの、要らなすぎる」
「いいから、ないよりはマシでしょ。受け取って」
そう言って、わたしは渋々能力を受け取った。拒否権なんて、ないんだろうけど。[水平線]
その後、普通の家をもらい、戸籍の処理をして住むことになった。働き口を見つけなきゃ、と思ったが、すこしはお金がもらえるらしい。それは単に、撫子と伊舎那がわたしのことを気に入ったから、だそうだ。
「良かったですね、史織さん。なかなか気に入ってもらえることはないんですよ」
と、千晴は皮肉っぽく言った。
「将来は陰陽師になりたいんですけどねー、あたしも他の世界から来たんです。そしたら、なんか跡継ぎがいないからって、無理くり伊舎那様の巫女にされちゃって。巫女の跡継ぎが生まれたら、いつでも死ねる長寿の身にして、陰陽師にさせてやるって言うんですよ。絶対そんなことないし、跡継ぎなんていないに等しいんです。あと、あたしの能力知ってます?『神様憑依』ですよ。あたしも、史織さんみたいにもっと使える感じの能力が良かったんですよ、こんな巫女のためのものって」
「いるんじゃない?子供もうまれるだろうし、わたしみたいに来る人もいるだろうし…」
「いいえ。ここでは平均寿命が余裕で長くって、しかも人間はそんないないんです。人間は来るけど、最終的には別な種族になっちゃうんです。子供も生まれないし、あと何年待てばいいのやら…って感じで。しかも史織さんは撫子さんにも気に入られてるから、多分巫女にならないんだろうし」
そんな千晴の愚痴を思い出すと、今更苦笑いが込み上げてきた。
家にすこし触れると、映像がパッと脳内を駆け抜けていった。撫子があっという間に土地をつくり、家をつくる姿が。
「あ…」
「どうしたんですか?」
「これが能力なんだ」
駆け抜けて行った姿と映像は、多分過去だ。歴史だ。
「ああ、これが能力なんだ。今、撫子があっという間に土地をつくって、家をつくる映像が思い浮かんだ」
「へー、あ、あと撫子さん、呼び捨てなんですね」
「あ」
「ま、別にいいじゃないですか。あたしはいつも見張られている感じがするから、そうそう敬語を外せないのが悩みなんですよねぇ…おっと、また飛んできそう」
そう言いながら、千晴の小さな家で、少しずつ緑茶を飲んだ。温かい苦みが、わたしの体を落ち着かせてくれた。