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赤のアオハル

#5

二人だけの帰り道

放課後の教室に、のんびりとした空気が流れていた。

莉音は悩んでいた。
[漢字]柚望[/漢字][ふりがな]ゆの[/ふりがな]は、「水泳あるから先帰るねー!バイバーイ!」と元気に手を振って先に帰ってしまった。
(青端さん、一緒に帰ろってさそってみようかな〜……)
意を決し、教科書をカバンにしまいながらさりげなく[漢字]紅子[/漢字][ふりがな]べす[/ふりがな]に声を掛ける。

「青端さんって、通学路どのルート?駅のほう?」
「ううん、商店街の中を抜けて、民会館のほうに行く道です。」
「えっ、それ私と全く一緒だ〜!!!」紅子が眼鏡の奥の目を驚いたように見開き、「そうなんですか?」と聞き返した。
「ほんとほんと!なんだ〜、もっと早く言えばよかった。一緒に帰ろっ!」
紅子は少し戸惑いながらも、照れたように微笑み「……はい!」と小さく頷いた。

校門を出ると、空はほんのり夕暮れ色に染まりかけていた。
ふたりの靴音が、カツ、コツ、と交互に響く。
ふと莉音が、商店街の一角にある店を指す。
「ねえ、あのクレープ屋さん行ったことある〜?」
「あ……ないんです。いつも前を通るし、甘いものは大好きだから行ってみたいんだけど、中々一人で入る勇気が……。」
「わかる〜。一人じゃ入りにくいよね。じゃあさ、今日行こ!付き合って〜!」
それでもまだちょっと恥ずかしがる紅子の手を、莉音は明るく引いた。
「大丈夫っ!ほら、クレープが私たちを待っている〜!」
二人は連れ立って、クレープ屋「MARION」へと歩いていった。

店の前に立つと、メニューのボードに色とりどりのクレープが並んでいた。
「いちごホイップ」「抹茶あずき」「バナナチョコ」……どれも魅力的で、なかなか選べない。
迷った挙げ句莉音は「キウイホイップ」、紅子は「カスタードブルーベリークリーム」を選んだ。

ふたりで店の外の木製ベンチに並んで腰掛ける。
莉音が早速クレープにかじりつく。
「ん〜っ、美味しい〜!!やっぱキウイは最強!」
「ふふ、花山さんてば、口元にクリームついてるよ。」
「あれっ?あ、本当だ。アハハ!」
二人でひとしきり笑い合う。

「……甘いもの、ずっとひとりで食べてたから。こうして誰かと一緒に食べるの、なんだか新鮮だなぁ。」
「そっか〜。
 じゃあ今日からは、わたしが一緒に食べるよ!」
莉音が明るく言うと、紅子の頬がほんのり赤くなった。

クレープを食べ終わって、また歩き出す帰り道。
莉音がふと思いついたように言う。
「あのさ〜、そろそろ“青端さん”って呼ぶの、やめていい?
 せっかく一緒にクレープ食べた仲だからさ、、“紅子ちゃん”って呼んでもいい?」
紅子は一瞬きょとんとしたあと、すぐに小さく笑ってうなずいた。
「……うん。ありがとう。じゃあ……わたしも、“莉音ちゃん”って呼んで、いい?」
「もちろん!」
ふたりの笑い声が、夕暮れの風に混じって小さく揺れた。

「……どうしよう。莉音ちゃんだけこの呼び方になるのはアレだから、真白さんも柚望ちゃんって呼んでいいかな。とりあえず明日、許可を取って……。」
「柚望なら許可とかいらないよ〜絶対!むしろ向こうから勝手に『紅子』って呼んでくると思う!」
「ほ、本当??」
笑い合いながら、二人は帰り道を歩いていった。

夕陽が落ちる頃、民会館の前で「また明日ね」と手を振るふたり。
今日という日が、ほんのすこしだけ、ふたりを近づけた。

そして翌日。
柚望が「ねえねえ紅子〜!まえ話してくれてたオススメの本読んだんだけどさ……」
と紅子に満面の笑みで話しかけていた。

作者メッセージ

タイトルだけ見たら恋愛ですがこの話は恋愛要素ないです……笑
ぜひ読んでくださいっ!

2025/07/22 14:29

MK
ID:≫ 10fU928R1qIgk
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