「⋯どういうことでしょうか」
琴の声は震えていた。笑顔をつくろうとして引きつり、額には汗が浮かんでいる。
[漢字]真衣[/漢字][ふりがな]まい[/ふりがな]はその様子を愉しむでもなく、ただじっくりと観察し、ゆっくりと言った。
「あら、本当に分かっていなかったんですね。あなた方はずぅーっと騙されていたんですよ。わたしたちの『演技』に」
琴の顔から血の気が引くのを確認してから、真衣は物語をほどくように語り始める。
5ヶ月前のこと。
「それで、折り入ってお話とは何でございましょうか。殿」
功助が笑顔で問いかけたのは、御年20歳となられたばかりであったミカゲの殿、
久城[漢字]晴信[/漢字][ふりがな]はるのぶ[/ふりがな]であった。
呼び出されたのは6名、功助、天音、大河、平八郎、流唯、そして真衣。
晴信は一人ひとりの名前を丁寧に呼び、短い沈黙の後、ふっと微笑んで言った。
「私は、これから死のうと思う」
「は、?」
と、大河・平八郎・流唯の声が重なった。声、というより最早漏れ出た驚きと戸惑いであった。
「オイ殿そういうのは冗談でも言うんじゃ⋯⋯がっ」
「待ちなさい天音。殿、続きを」
天音が説教を始めようと口を開いた瞬間、横から飛んできた功助の[漢字]裏拳[/漢字][ふりがな]うらけん[/ふりがな]が彼の[漢字]鼻面[/漢字][ふりがな]はなづら[/ふりがな]を正確に撃ち抜いた。彼の裏拳は家臣団では軽いコミュニケーションで通っているが、威力は軽くない。鼻を手で押さえ悶絶する天音を少し困ったように見やってから、晴信はこう告げた。
「きっとお主らも気づいておろう。父上が亡くなってから、この国には『ミカゲを我が物にせん』とする危険因子が溢れておる」
そこで一度言葉を切ると、ふと目を伏せ独り言のように、それは私の[漢字]不甲斐[/漢字][ふりがな]ふがい[/ふりがな]なさが一番の原因であろうがな⋯と呟く。それが聞こえたのか、真衣が堪えきれず声を上げた。彼女は演技派だが、これは心からの訴えだ。演技ではない。本気である。
「そんなことは決してございません!!むしろ私どもが出しゃばっておるだけで⋯」
良いのだ、真衣、と晴信は穏やかな口調で遮った。
そして、少し遠くを見るようにして言う。
「きっと『こういうこと』には、私より景虎の方が向いておる。あやつには国の主導者に求められる強い責任感と倫理観、決断力、行動力、そして洞察力までもある。だから、誰にも文句を言わせぬ方法で景虎を次の殿とする」
冷静に死ぬ作戦会議を進める晴信。流唯は思わず感心していた。
(なるほど、[漢字]世襲[/漢字][ふりがな]せしゅう[/ふりがな]っつーことか。殿が自ら死ぬことで、後継の正統性が絶対のものになる)
生前の譲位ならば異を唱えられる。具体的に言うと、晴信が位を譲った⋯となるとそれに対してこじつける者だって現れるだろう。しかし、晴信が『急死』した場合は、次男である景虎がそれを継ぐのは自然の流れ。それに対して異論を唱え他の者を殿に推薦するなどというのは謀反に等しい。
しかし、大河は納得がいかないらしかった。
「せやけど殿が死なはらなあかん理由は他にはあるんどすか」
晴信はそれを聞いて柔らかく微笑んだ後、すぐ眼光を鋭くした。
「先程言った危険因子たち⋯⋯それは私が死んだ後動き出す。奴らは寺にいる景虎、そして愛にまでも手をかけようとするだろう」
その瞬間、空気が凍った。
「正当な継承者がいなくなる⋯⋯だから、好き勝手できる、と⋯⋯」
平八郎が親指の爪を噛みながら呟く。その顔は嫌悪に染まっていた。
他の家臣たちも、ずっと柔らかな微笑みを絶やさない功助を除き、険しい表情を浮かべていた。天音に関しては既に怒気で姿が見えない。
そんな重々しい雰囲気を破ったのは、晴信自身であった。
「そうだ。だがそれは謀反人どもを一掃する絶好の好機にもなる。私の死を利用し、この国の毒を消し去れ。そうすれば、ミカゲには新しく殿となったものに従い、共にこの国をより良くしていける者たちだけが残るだろう。
⋯お主らに私からの最後の命令だ」
「そこで殿が俺達にした命令は、自分の死を隠すこと。おめーらみたいな奴らの企みがハッキリしたときその死を公表すること」
天音が淡々と語る。
琴は可哀想なほど顔を真っ青にして、歯をカスタネットのようにカタカタと鳴らしていた。
「そして謀反人どもが動き出したら、一気に叩くこと」
本当助かったぜ、中々尻尾を見せねぇもんだから。自分からペラペラ計画を話してくれるなんざ、有難えこった⋯⋯と、天音が影の濃い笑顔で言う。
普段は無愛想なだけに、これはなかなか怖いなと真衣は思った。
「という訳やから、おまはんの役目はこれで終いどす」
「いちばんの功労者かもな」
琴が後ろを振り向くと、そこには彼女の首元に小刀を構え満面の笑みを浮かべている大河と、肩に手をかけさり気なく逃げ場のないようにしている平八郎がいた。
琴の瞳が絶望色に染まる。
ザシュッ⋯⋯という頸動脈を切る、鋭い音がした。
「功労者がこいつ?いーや。そりゃ殿だな」
天音が死体となったそれを見下ろしながら、冷え切った声で言い放った。
それから10分。死体の処理を終えた4人は、殿の部屋の前に再び戻ってきていた。いくら掃除したとはいえど、染み付いた血の匂いはなかなか消えない。
真衣が口元を抑えながら漏らした。
「あのぉ。何も殺すこたなかったんじゃあないですか?一応女子ですよ?」
「真衣さん、最近の流行りは男女平等らしいぞ。叔父上が言ってた」
平八郎が即座に乗る。こいつは常識人ヅラをしているがそんなことはまったくない、と真衣は思っている。
「天音様が言わはったなら間違いありまへんね!!」
「平八郎、あなたが言うと危険思想に聞こえます。てか前々から思ってはいたけれど、大河って実は女子供にも情けをかけませんよね」
真衣は呆れ顔を向けた。大河は自覚がなさそうで、はて?という顔をしている。サイコパスの無自覚ほど怖いものはない。
天音が浮かない表情のまま呟いた。
「今回はアレで良かったろ。あんな奴らの所為で殿はー⋯⋯」
それを聞き、平八郎が独り言のように言った。
「⋯⋯後は『殿の死』を広めたらほぼ終いだな」
続けて、彼の叔父に問いかけた。「どうする、もう広め始めますか?」
天音が答える。
「いやまだ早ェ。[漢字]愛姫[/漢字][ふりがな]めごひめ[/ふりがな]様のところには[漢字]流唯[/漢字][ふりがな]るい[/ふりがな]が行ったはずだが。功助さんからの連絡がまだだ。寺につき次第鳩をとばしてくださるみてェだが。」
彼が少し待つか、と言うと同時に、はぁ〜⋯⋯と大きなため息をつく声が聞こえた。
「つっっかれたあ〜」真衣がへなへなと崩れ落ちる。
大河が同意する。
「五ヶ月も『殿に不満しかない家臣』を演じきりやったしなぁ。真衣はん、あの殿の作り話よかったどす!」
この殿の作り話とは、とわの妊娠どーたらの話である。
ちなみにとわという侍女は存在しない。真衣の変装であった。
「何言ってんですか?あんなの全然ダメですよ本当に。ロジックどうなってんだって話で。支離滅裂でした。よく嘘だと分からなかったなともうあの侍女に感心しちゃいますよ」
大河が苦笑いする。
「ならなんであんな話にしたんだよ。リアリティが足りなかったと思うぜ」
天音がジト目で睨む。平八郎は叔父がそう言うのを聞いてなるほど、本格派俳優なんだなこの人は、だから儂と大河に全力で拳骨を(第一章のアレ)⋯⋯と思った。
「そんなの大河とあなたで劇風にしたときに面白いからに決まってるじゃあないですか」
真衣が胸を張る。
「よーしそこに直れ、その性根叩き直してやる」
「ちょっ⋯⋯嫌だ天音様!セクハラで訴えますよ!?」
「るせーな、俺だって精神的ダメージ受けたっつーの!!」
騒ぐ二人をよそに、大河はおっとりと笑っていた。
自分もその劇の被害者であることなど忘れたように。
(こいつにとっては基本的に全部喜劇なのか?)
平八郎は思った。
ちなみにその頃、城の一室には、謀反人たちに狙われる危険のある愛姫と、その護衛を任された流唯が潜んでいた。愛姫からはどんよりしたオーラがでている。
「いいの、いいのよ流唯さん。別に功さんが護衛じゃあなくてなーんだがっかり⋯とか思ったりなんて全然していないから。気にしないでね?ごめんね?いつもありがとう」
「スンマセン⋯⋯」
メンタルが水の流唯は、既に涙目になっていた。
手から足に手紙をくくりつけた鳩が飛び立つ。賢い子だから、小半時(15分)もせずに城へは着くだろう。あとは天音たちが何とかしてくれるはずだ。
「頼んだよ」
功助は、鳩の背中を見送ると、くるりとからだの向きを変え、眼の前に建つ門を見据えて、言った。
「さて、じゃあ私は寺に到着したことだし、自分の仕事を全うするとしようか」
時は神無月。ミカゲの、いや、ヒノトの歴史が再び動き出す。
琴の声は震えていた。笑顔をつくろうとして引きつり、額には汗が浮かんでいる。
[漢字]真衣[/漢字][ふりがな]まい[/ふりがな]はその様子を愉しむでもなく、ただじっくりと観察し、ゆっくりと言った。
「あら、本当に分かっていなかったんですね。あなた方はずぅーっと騙されていたんですよ。わたしたちの『演技』に」
琴の顔から血の気が引くのを確認してから、真衣は物語をほどくように語り始める。
5ヶ月前のこと。
「それで、折り入ってお話とは何でございましょうか。殿」
功助が笑顔で問いかけたのは、御年20歳となられたばかりであったミカゲの殿、
久城[漢字]晴信[/漢字][ふりがな]はるのぶ[/ふりがな]であった。
呼び出されたのは6名、功助、天音、大河、平八郎、流唯、そして真衣。
晴信は一人ひとりの名前を丁寧に呼び、短い沈黙の後、ふっと微笑んで言った。
「私は、これから死のうと思う」
「は、?」
と、大河・平八郎・流唯の声が重なった。声、というより最早漏れ出た驚きと戸惑いであった。
「オイ殿そういうのは冗談でも言うんじゃ⋯⋯がっ」
「待ちなさい天音。殿、続きを」
天音が説教を始めようと口を開いた瞬間、横から飛んできた功助の[漢字]裏拳[/漢字][ふりがな]うらけん[/ふりがな]が彼の[漢字]鼻面[/漢字][ふりがな]はなづら[/ふりがな]を正確に撃ち抜いた。彼の裏拳は家臣団では軽いコミュニケーションで通っているが、威力は軽くない。鼻を手で押さえ悶絶する天音を少し困ったように見やってから、晴信はこう告げた。
「きっとお主らも気づいておろう。父上が亡くなってから、この国には『ミカゲを我が物にせん』とする危険因子が溢れておる」
そこで一度言葉を切ると、ふと目を伏せ独り言のように、それは私の[漢字]不甲斐[/漢字][ふりがな]ふがい[/ふりがな]なさが一番の原因であろうがな⋯と呟く。それが聞こえたのか、真衣が堪えきれず声を上げた。彼女は演技派だが、これは心からの訴えだ。演技ではない。本気である。
「そんなことは決してございません!!むしろ私どもが出しゃばっておるだけで⋯」
良いのだ、真衣、と晴信は穏やかな口調で遮った。
そして、少し遠くを見るようにして言う。
「きっと『こういうこと』には、私より景虎の方が向いておる。あやつには国の主導者に求められる強い責任感と倫理観、決断力、行動力、そして洞察力までもある。だから、誰にも文句を言わせぬ方法で景虎を次の殿とする」
冷静に死ぬ作戦会議を進める晴信。流唯は思わず感心していた。
(なるほど、[漢字]世襲[/漢字][ふりがな]せしゅう[/ふりがな]っつーことか。殿が自ら死ぬことで、後継の正統性が絶対のものになる)
生前の譲位ならば異を唱えられる。具体的に言うと、晴信が位を譲った⋯となるとそれに対してこじつける者だって現れるだろう。しかし、晴信が『急死』した場合は、次男である景虎がそれを継ぐのは自然の流れ。それに対して異論を唱え他の者を殿に推薦するなどというのは謀反に等しい。
しかし、大河は納得がいかないらしかった。
「せやけど殿が死なはらなあかん理由は他にはあるんどすか」
晴信はそれを聞いて柔らかく微笑んだ後、すぐ眼光を鋭くした。
「先程言った危険因子たち⋯⋯それは私が死んだ後動き出す。奴らは寺にいる景虎、そして愛にまでも手をかけようとするだろう」
その瞬間、空気が凍った。
「正当な継承者がいなくなる⋯⋯だから、好き勝手できる、と⋯⋯」
平八郎が親指の爪を噛みながら呟く。その顔は嫌悪に染まっていた。
他の家臣たちも、ずっと柔らかな微笑みを絶やさない功助を除き、険しい表情を浮かべていた。天音に関しては既に怒気で姿が見えない。
そんな重々しい雰囲気を破ったのは、晴信自身であった。
「そうだ。だがそれは謀反人どもを一掃する絶好の好機にもなる。私の死を利用し、この国の毒を消し去れ。そうすれば、ミカゲには新しく殿となったものに従い、共にこの国をより良くしていける者たちだけが残るだろう。
⋯お主らに私からの最後の命令だ」
「そこで殿が俺達にした命令は、自分の死を隠すこと。おめーらみたいな奴らの企みがハッキリしたときその死を公表すること」
天音が淡々と語る。
琴は可哀想なほど顔を真っ青にして、歯をカスタネットのようにカタカタと鳴らしていた。
「そして謀反人どもが動き出したら、一気に叩くこと」
本当助かったぜ、中々尻尾を見せねぇもんだから。自分からペラペラ計画を話してくれるなんざ、有難えこった⋯⋯と、天音が影の濃い笑顔で言う。
普段は無愛想なだけに、これはなかなか怖いなと真衣は思った。
「という訳やから、おまはんの役目はこれで終いどす」
「いちばんの功労者かもな」
琴が後ろを振り向くと、そこには彼女の首元に小刀を構え満面の笑みを浮かべている大河と、肩に手をかけさり気なく逃げ場のないようにしている平八郎がいた。
琴の瞳が絶望色に染まる。
ザシュッ⋯⋯という頸動脈を切る、鋭い音がした。
「功労者がこいつ?いーや。そりゃ殿だな」
天音が死体となったそれを見下ろしながら、冷え切った声で言い放った。
それから10分。死体の処理を終えた4人は、殿の部屋の前に再び戻ってきていた。いくら掃除したとはいえど、染み付いた血の匂いはなかなか消えない。
真衣が口元を抑えながら漏らした。
「あのぉ。何も殺すこたなかったんじゃあないですか?一応女子ですよ?」
「真衣さん、最近の流行りは男女平等らしいぞ。叔父上が言ってた」
平八郎が即座に乗る。こいつは常識人ヅラをしているがそんなことはまったくない、と真衣は思っている。
「天音様が言わはったなら間違いありまへんね!!」
「平八郎、あなたが言うと危険思想に聞こえます。てか前々から思ってはいたけれど、大河って実は女子供にも情けをかけませんよね」
真衣は呆れ顔を向けた。大河は自覚がなさそうで、はて?という顔をしている。サイコパスの無自覚ほど怖いものはない。
天音が浮かない表情のまま呟いた。
「今回はアレで良かったろ。あんな奴らの所為で殿はー⋯⋯」
それを聞き、平八郎が独り言のように言った。
「⋯⋯後は『殿の死』を広めたらほぼ終いだな」
続けて、彼の叔父に問いかけた。「どうする、もう広め始めますか?」
天音が答える。
「いやまだ早ェ。[漢字]愛姫[/漢字][ふりがな]めごひめ[/ふりがな]様のところには[漢字]流唯[/漢字][ふりがな]るい[/ふりがな]が行ったはずだが。功助さんからの連絡がまだだ。寺につき次第鳩をとばしてくださるみてェだが。」
彼が少し待つか、と言うと同時に、はぁ〜⋯⋯と大きなため息をつく声が聞こえた。
「つっっかれたあ〜」真衣がへなへなと崩れ落ちる。
大河が同意する。
「五ヶ月も『殿に不満しかない家臣』を演じきりやったしなぁ。真衣はん、あの殿の作り話よかったどす!」
この殿の作り話とは、とわの妊娠どーたらの話である。
ちなみにとわという侍女は存在しない。真衣の変装であった。
「何言ってんですか?あんなの全然ダメですよ本当に。ロジックどうなってんだって話で。支離滅裂でした。よく嘘だと分からなかったなともうあの侍女に感心しちゃいますよ」
大河が苦笑いする。
「ならなんであんな話にしたんだよ。リアリティが足りなかったと思うぜ」
天音がジト目で睨む。平八郎は叔父がそう言うのを聞いてなるほど、本格派俳優なんだなこの人は、だから儂と大河に全力で拳骨を(第一章のアレ)⋯⋯と思った。
「そんなの大河とあなたで劇風にしたときに面白いからに決まってるじゃあないですか」
真衣が胸を張る。
「よーしそこに直れ、その性根叩き直してやる」
「ちょっ⋯⋯嫌だ天音様!セクハラで訴えますよ!?」
「るせーな、俺だって精神的ダメージ受けたっつーの!!」
騒ぐ二人をよそに、大河はおっとりと笑っていた。
自分もその劇の被害者であることなど忘れたように。
(こいつにとっては基本的に全部喜劇なのか?)
平八郎は思った。
ちなみにその頃、城の一室には、謀反人たちに狙われる危険のある愛姫と、その護衛を任された流唯が潜んでいた。愛姫からはどんよりしたオーラがでている。
「いいの、いいのよ流唯さん。別に功さんが護衛じゃあなくてなーんだがっかり⋯とか思ったりなんて全然していないから。気にしないでね?ごめんね?いつもありがとう」
「スンマセン⋯⋯」
メンタルが水の流唯は、既に涙目になっていた。
手から足に手紙をくくりつけた鳩が飛び立つ。賢い子だから、小半時(15分)もせずに城へは着くだろう。あとは天音たちが何とかしてくれるはずだ。
「頼んだよ」
功助は、鳩の背中を見送ると、くるりとからだの向きを変え、眼の前に建つ門を見据えて、言った。
「さて、じゃあ私は寺に到着したことだし、自分の仕事を全うするとしようか」
時は神無月。ミカゲの、いや、ヒノトの歴史が再び動き出す。