その後も気分が晴れないまま、荷物をパッキングしながら出発前日の11月30日を迎えてしまう。するとそまりはあることを言い出した。
そまり「セントレアに行きたい」
さあや「どうして?」
そまり「なんとなく」
さあや「……行こうか」
あのそまりがセントレアに行きたいと言い出す、これも過去にはなかったことだ。自身にとって飛行機と無縁だったそまりがそんなことを言い出すとはさあやにとっても思わなかったはずである。なお、この時点でそまりの荷詰めはほとんど完了していたのであった。
そして2人で家を出て新幹線と名鉄電車を乗り継いで空港に出た。
セントレアのスカイデッキにて。夕暮れの中、強い風がずっと吹きっぱなしで寒いが、2人はベンチに座っていた。
さあや「やっぱり……嫌かな?」
そまり「そうね」
すると聞くはずのない声を2人は聞いてしまう。
??「おやおや、こちらにいらっしゃいましたか高橋さん」
そまり「葉月先輩……?」
さあや「いつもうちの高橋がお世話になってます、鈴木です」
恋「鈴木さんもごきげんよう」
そまり「それで、なぜ葉月先輩がいるのですか?」
恋「本日、愛知スカイエキスポの方でスクールアイドル博の運営の仕事がありまして、そのついでに高橋さんの様子が怪しいと情報を仕入れた為こちらに伺わせていただきました」
なんと、恋がこちらまで出向いていたのだ。
恋「そして高橋さん、まだお覚悟ができていらっしゃらないとのことですが?」
そまり「はい……」
すると恋は離陸していく飛行機を指さす。
恋「……あの離陸して車輪を格納する飛行機をご覧なさい。不格好な足を隠し、空の抵抗を受け入れる。それが『飛ぶ』ための最初の儀式です。あなたも今、その瞬間にいるのではありませんか?」
さあや「葉月先輩、それを言ったらうちのそまりちゃんが……それにベルギーだなんて……」
恋「では鈴木さん、あなたは部長としてご存じのはずです。ベルギーは欧州大陸で最初に鉄道を走らせた国。その精密な運行管理と歴史は、日本の鉄道精神の遠い源流の一つとも言える……そうではありませんか?」
さあや「うっ……」
恋は続ける。
恋「鈴木さん、あなたは高橋さんの最大の理解者であり、鉄道の専門家でもあります。……ではお聞きしますが、ベルギーとドイツが隣り合わせであるということは、鉄道技術において何を意味すると思いますか?」
さあや「……え?隣り合わせ……あ、ベルギーの高速列車って……」
恋「ええ。その心臓部を担っているのは、どこのメーカーの技術でしょう?」
さあや「……シーメンス。ユーロスターに限らず、まさかあのICE3もやってくる!?」
恋「その通りです。高橋さん、あなたが愛してやまない『シーメンスの音』は、ベルギーの地でも、あなたのすぐそばで響いているはずですよ」
するとそまりはスイッチが入った。
そまり「……ベルギーでも、ドレミファでなくとも、あの音が聴けるの……?」
恋「ええ。それだけではありません。あなたがその地でシーメンスの鼓動を聴き、それをあなたのピアノで表現したとき……それは日本の鉄道を愛するあなたにしか奏でられない、新しい音楽になるはずです」
そしてそまりは風に吹かれながら、滑走路から飛び立つ飛行機のライトを見つめ、ゆっくりと、しかし力強く顔を上げた。
そまり「シーメンス……決めたわ。私、ベルギーで音を響かせてみせる。日本の鉄道を愛する私が、向こうでどんな音を見つけられるか、試してみたい」
さあや「そまりちゃん……!!」
恋「……その言葉を待っていました。高橋さん、いいえ、結ヶ丘の誇る音楽家として、行ってらっしゃい」
こうして3人で笑い飛ばしたところで帰路につくのであった。
そまり「セントレアに行きたい」
さあや「どうして?」
そまり「なんとなく」
さあや「……行こうか」
あのそまりがセントレアに行きたいと言い出す、これも過去にはなかったことだ。自身にとって飛行機と無縁だったそまりがそんなことを言い出すとはさあやにとっても思わなかったはずである。なお、この時点でそまりの荷詰めはほとんど完了していたのであった。
そして2人で家を出て新幹線と名鉄電車を乗り継いで空港に出た。
セントレアのスカイデッキにて。夕暮れの中、強い風がずっと吹きっぱなしで寒いが、2人はベンチに座っていた。
さあや「やっぱり……嫌かな?」
そまり「そうね」
すると聞くはずのない声を2人は聞いてしまう。
??「おやおや、こちらにいらっしゃいましたか高橋さん」
そまり「葉月先輩……?」
さあや「いつもうちの高橋がお世話になってます、鈴木です」
恋「鈴木さんもごきげんよう」
そまり「それで、なぜ葉月先輩がいるのですか?」
恋「本日、愛知スカイエキスポの方でスクールアイドル博の運営の仕事がありまして、そのついでに高橋さんの様子が怪しいと情報を仕入れた為こちらに伺わせていただきました」
なんと、恋がこちらまで出向いていたのだ。
恋「そして高橋さん、まだお覚悟ができていらっしゃらないとのことですが?」
そまり「はい……」
すると恋は離陸していく飛行機を指さす。
恋「……あの離陸して車輪を格納する飛行機をご覧なさい。不格好な足を隠し、空の抵抗を受け入れる。それが『飛ぶ』ための最初の儀式です。あなたも今、その瞬間にいるのではありませんか?」
さあや「葉月先輩、それを言ったらうちのそまりちゃんが……それにベルギーだなんて……」
恋「では鈴木さん、あなたは部長としてご存じのはずです。ベルギーは欧州大陸で最初に鉄道を走らせた国。その精密な運行管理と歴史は、日本の鉄道精神の遠い源流の一つとも言える……そうではありませんか?」
さあや「うっ……」
恋は続ける。
恋「鈴木さん、あなたは高橋さんの最大の理解者であり、鉄道の専門家でもあります。……ではお聞きしますが、ベルギーとドイツが隣り合わせであるということは、鉄道技術において何を意味すると思いますか?」
さあや「……え?隣り合わせ……あ、ベルギーの高速列車って……」
恋「ええ。その心臓部を担っているのは、どこのメーカーの技術でしょう?」
さあや「……シーメンス。ユーロスターに限らず、まさかあのICE3もやってくる!?」
恋「その通りです。高橋さん、あなたが愛してやまない『シーメンスの音』は、ベルギーの地でも、あなたのすぐそばで響いているはずですよ」
するとそまりはスイッチが入った。
そまり「……ベルギーでも、ドレミファでなくとも、あの音が聴けるの……?」
恋「ええ。それだけではありません。あなたがその地でシーメンスの鼓動を聴き、それをあなたのピアノで表現したとき……それは日本の鉄道を愛するあなたにしか奏でられない、新しい音楽になるはずです」
そしてそまりは風に吹かれながら、滑走路から飛び立つ飛行機のライトを見つめ、ゆっくりと、しかし力強く顔を上げた。
そまり「シーメンス……決めたわ。私、ベルギーで音を響かせてみせる。日本の鉄道を愛する私が、向こうでどんな音を見つけられるか、試してみたい」
さあや「そまりちゃん……!!」
恋「……その言葉を待っていました。高橋さん、いいえ、結ヶ丘の誇る音楽家として、行ってらっしゃい」
こうして3人で笑い飛ばしたところで帰路につくのであった。