哲学的ゾンビ
薄暗く人気のない路地で、一人の若い男性が右手を強く握ったまま死んでいた。
辺りには異臭が立ち込め、鼠や蚊が集まってきていた。
やがて、その男性の手が微かに動いた。
薄暗く光が差し込まない室内に二人の男性が長机を挟んで向かい合って座っている。
「だから、僕はやってないんですって!彼は哲学的ゾンビで、今ものうのうと生きてるんです!」
そう言いきり、机を叩く一人の若い男性。
その男性の向こうにいる中年の男性は無表情でこう言った。
「その、哲学的ゾンビってなんだよ?どうせそれもお前の言い訳だろう?」
「違います!哲学的ゾンビは、クオリアを持たない怪物なんです!」
「クオリア?」
「外面的には普通の人みたいだけど、内面は何の感情も持たないことです。
刑事さん、分からないんですか?」
「ああ、知らん。変な人間の垂れごとなんて聞かないのが警察だからな」
「酷い!」
本気で悲しそうな若い男性をよそ見に中年の男性はある薄い資料を見る。
資料には、左手を強く握った若い男性の死体が映っていた。それが何枚も違う男性の資料があった。
「それで?やっぱりお前が殺したんだろ?」
「殺してません!生きてるんです!彼は、なんて言ったって哲学的ゾンビなんですから!」
「哲学的ゾンビっていったって...それを証明するものがないだろ。
そもそも、哲学的ゾンビだろうと殺してんだから殺人だぞ」
「法律に哲学的ゾンビを人と見なして、殺害しても罪に問われる法律があるんですか!?」
「...ない。でも、外見は人なんだろ?なら、ダメだ」
「外見は人でも、中身は怪物です!」
「だとしたって...」
「良いですか、刑事さん!僕は正しいことをしたんです!!
哲学的ゾンビは近年になって、増殖してきているんです!会社や学校、様々な公共の場所でその数を増してきている!十人の中、七人が哲学的ゾンビなんです!
哲学的ゾンビは一見すると普通ですが、内面は規則的で何も思っていないし、殺しても生き返るんです!
しかも、哲学的ゾンビは変わった感染方法で、哲学的ゾンビに殺されると感染する新手の感染方法なんです!」
「ふぅん...それだけ聞くと、人をやめる代わりに不死になるってわけだけど?」
「いいえ!殺されると自分のクオリアが死んでしまうんです!
つまり、生きているけど死んでいて、死んでいるけど、生きているんです!」
「...分かったよ。その哲学的ゾンビの見分け方法は?」
中年の男性が抑揚のない声で若い男性に問いかけた。その問いに若い男性は少し考えて、こう言った。
「ありません!」
「...何故?」
「哲学的ゾンビは、物理的、行動的には人間と全く同一でクオリアを持たない存在なので外見や行動からは、通常の人間と全く区別がつかないからです!」
「それは、さっき聞いた」
「クオリアがない哲学的ゾンビは...」
「つまり、お前は今...哲学的ゾンビがどこにいるか分からないわけだ」
「...へ?」
銃声が室内で響いた。
室内が赤く、赤く染まった。
それを見ても何も感じなかった。
「...確かにクオリアは持たないな。お前を殺したって、何にも思わない」
中年の男性が血の飛び散った室内で一人の若い男性を見下ろしながら呟く。
薄く白い煙の立ち上る銃をスーツのポケットにしまい、若い男性の身体を担ぎ、部屋の扉の外の薄暗く人気のない路地へ運び、寝かせる。
そして、寝かせた若い男性の左手を強く握らせようとして、
「...やっぱり、クオリアを元々、持っていた人間だから...」
そう呟いて、右手を強く握らせた。
辺りには異臭が立ち込め、鼠や蚊が集まってきていた。
やがて、その男性の手が微かに動いた。
薄暗く光が差し込まない室内に二人の男性が長机を挟んで向かい合って座っている。
「だから、僕はやってないんですって!彼は哲学的ゾンビで、今ものうのうと生きてるんです!」
そう言いきり、机を叩く一人の若い男性。
その男性の向こうにいる中年の男性は無表情でこう言った。
「その、哲学的ゾンビってなんだよ?どうせそれもお前の言い訳だろう?」
「違います!哲学的ゾンビは、クオリアを持たない怪物なんです!」
「クオリア?」
「外面的には普通の人みたいだけど、内面は何の感情も持たないことです。
刑事さん、分からないんですか?」
「ああ、知らん。変な人間の垂れごとなんて聞かないのが警察だからな」
「酷い!」
本気で悲しそうな若い男性をよそ見に中年の男性はある薄い資料を見る。
資料には、左手を強く握った若い男性の死体が映っていた。それが何枚も違う男性の資料があった。
「それで?やっぱりお前が殺したんだろ?」
「殺してません!生きてるんです!彼は、なんて言ったって哲学的ゾンビなんですから!」
「哲学的ゾンビっていったって...それを証明するものがないだろ。
そもそも、哲学的ゾンビだろうと殺してんだから殺人だぞ」
「法律に哲学的ゾンビを人と見なして、殺害しても罪に問われる法律があるんですか!?」
「...ない。でも、外見は人なんだろ?なら、ダメだ」
「外見は人でも、中身は怪物です!」
「だとしたって...」
「良いですか、刑事さん!僕は正しいことをしたんです!!
哲学的ゾンビは近年になって、増殖してきているんです!会社や学校、様々な公共の場所でその数を増してきている!十人の中、七人が哲学的ゾンビなんです!
哲学的ゾンビは一見すると普通ですが、内面は規則的で何も思っていないし、殺しても生き返るんです!
しかも、哲学的ゾンビは変わった感染方法で、哲学的ゾンビに殺されると感染する新手の感染方法なんです!」
「ふぅん...それだけ聞くと、人をやめる代わりに不死になるってわけだけど?」
「いいえ!殺されると自分のクオリアが死んでしまうんです!
つまり、生きているけど死んでいて、死んでいるけど、生きているんです!」
「...分かったよ。その哲学的ゾンビの見分け方法は?」
中年の男性が抑揚のない声で若い男性に問いかけた。その問いに若い男性は少し考えて、こう言った。
「ありません!」
「...何故?」
「哲学的ゾンビは、物理的、行動的には人間と全く同一でクオリアを持たない存在なので外見や行動からは、通常の人間と全く区別がつかないからです!」
「それは、さっき聞いた」
「クオリアがない哲学的ゾンビは...」
「つまり、お前は今...哲学的ゾンビがどこにいるか分からないわけだ」
「...へ?」
銃声が室内で響いた。
室内が赤く、赤く染まった。
それを見ても何も感じなかった。
「...確かにクオリアは持たないな。お前を殺したって、何にも思わない」
中年の男性が血の飛び散った室内で一人の若い男性を見下ろしながら呟く。
薄く白い煙の立ち上る銃をスーツのポケットにしまい、若い男性の身体を担ぎ、部屋の扉の外の薄暗く人気のない路地へ運び、寝かせる。
そして、寝かせた若い男性の左手を強く握らせようとして、
「...やっぱり、クオリアを元々、持っていた人間だから...」
そう呟いて、右手を強く握らせた。
クリップボードにコピーしました