視界の隅で揺れていたのは、一艘の紙飛行機だった。
灰色の風に煽られ、力なく旋回していたそれは、
アリスが座る窓のすぐ下の生垣に、音もなく突き刺さった。
アリスはじっとそれを見つめる。
真っ白なはずの紙も、アリスの瞳にはくすんだ灰色にしか映らない。
けれど、その紙飛行機の翼には、幼い筆跡で何か文字が書かれているようだった。
「……おとしもの」
アリスはゆっくりと立ち上がった。
重たい体を動かすのは少し億劫だったけれど、なぜかその
「灰色の四角い塊」を放っておくことができなかった。
部屋の外に出るには、何枚ものドアを通らなければならない。
消毒液の匂いが鼻をつく廊下を、パタパタとスリッパの音を立てて進む。
看護師さんに見つかったら叱られるかもしれないけれど、今は誰もいない。
ようやく辿り着いた中庭で、アリスは生垣から紙飛行機を抜き取った。
指先に触れた紙の感触は、カサカサと乾いていて、まるで自分の肌のようだとアリスは思った。
翼を広げてみると、そこにはひどく不格好な星の絵と、ひとつの願い事が書かれていた。
[太字][中央寄せ][明朝体][斜体][大文字]『おほしさまに、なれますように』[/大文字][/斜体][/明朝体][/中央寄せ][/太字]
アリスは息を止めた。
[太字]それは、彼女が毎日祈っていることと同じだったから。[/太字]
「アリスちゃん! こんなところで何してるの?」
背後から鋭い声がした。
振り返ると、若い看護師の[太字]サキ[/太字]が血相を変えて駆け寄ってくるところだった。
アリスは慌てて、その紙飛行機を背中の後ろに隠した。
アリスの心臓が、いつもより少しだけ速く、[太字]トクン[/太字]と跳ねた。
灰色の風に煽られ、力なく旋回していたそれは、
アリスが座る窓のすぐ下の生垣に、音もなく突き刺さった。
アリスはじっとそれを見つめる。
真っ白なはずの紙も、アリスの瞳にはくすんだ灰色にしか映らない。
けれど、その紙飛行機の翼には、幼い筆跡で何か文字が書かれているようだった。
「……おとしもの」
アリスはゆっくりと立ち上がった。
重たい体を動かすのは少し億劫だったけれど、なぜかその
「灰色の四角い塊」を放っておくことができなかった。
部屋の外に出るには、何枚ものドアを通らなければならない。
消毒液の匂いが鼻をつく廊下を、パタパタとスリッパの音を立てて進む。
看護師さんに見つかったら叱られるかもしれないけれど、今は誰もいない。
ようやく辿り着いた中庭で、アリスは生垣から紙飛行機を抜き取った。
指先に触れた紙の感触は、カサカサと乾いていて、まるで自分の肌のようだとアリスは思った。
翼を広げてみると、そこにはひどく不格好な星の絵と、ひとつの願い事が書かれていた。
[太字][中央寄せ][明朝体][斜体][大文字]『おほしさまに、なれますように』[/大文字][/斜体][/明朝体][/中央寄せ][/太字]
アリスは息を止めた。
[太字]それは、彼女が毎日祈っていることと同じだったから。[/太字]
「アリスちゃん! こんなところで何してるの?」
背後から鋭い声がした。
振り返ると、若い看護師の[太字]サキ[/太字]が血相を変えて駆け寄ってくるところだった。
アリスは慌てて、その紙飛行機を背中の後ろに隠した。
アリスの心臓が、いつもより少しだけ速く、[太字]トクン[/太字]と跳ねた。