世界は、朝から晩までずっと灰色だ。
[太字]アリス[/太字]の瞳に映る空は、絵の具を混ぜ合わせたような濁った色をしていて、
太陽の光さえも、使い古された電球のようにぼんやりと霞んでいる。
アリスは窓辺の椅子に座り、静かに外を眺めていた。
膝の上には、一度も開かれたことのない、真っ白な表紙のノート。
カチ、コチ、と部屋に響く時計の音だけが、彼女の残された時間を正確に削り取っていく。
「……また、少しだけ色が消えた」
アリスが小さくこぼした言葉は、誰に届くこともなく、冷たい空気の中に溶けていった。
彼女は知っている。自分の命が少しずつ、夜空に浮かぶ「お星様」へと変わる準備を始めていることを。
お医者様も、お母さんも、みんな悲しそうな顔をするけれど、アリスだけは不思議と冷静だった。
この灰色の世界から消えて、あの雲の向こう側にあると言われる
「キラキラしたもの」になれるのなら、それはきっと、そんなに悪いことじゃない。
アリスは細い指で、窓ガラスに触れた。
ガラスの向こう側にある世界は遠い。
その時、灰色の視界の隅で、何かが小さく揺れた。