《参加型》闇に堕ちる時、黒く染まる
#1
I.堕天達の会話
天界の片隅。
白一色の規律に塗り潰された「聖域」から、忘れ去られたように切り離された廃庭園がある。
そこは、清廉な天使たちが決して足を踏み入れない、毒々しくも美しい「澱み」の空間だった。
「ねぇねぇ[漢字]如月[/漢字][ふりがな]きさらぎ[/ふりがな]くーん! さっきね、上の階の天使の輪っか、
ちょーっと小突いたら泣いちゃった! あはは、うけるー!」
重力など存在しないかのように、[太字][漢字]神谷[/漢字][ふりがな]かみたに[/ふりがな]ゆめ[/太字]がプカプカと宙を泳ぎながら笑う。
水色のセミロングを跳ねさせ、ダボっとしたズボンの裾を揺らすその姿は、
一見すれば無邪気な少女だ。
しかし、その背に生えた羽は小さく、その輪っかは不吉な灰色に濁っている。
「おやおや、ゆめさん。それは……『とっても良いこと』をしましたね」
[太字]如月[/太字]が、空中に固定された嘘のテーブルで優雅にカップを傾けた。
彼の赤い瞳が細められ、詐欺師特有の柔らかな微笑みが浮かぶ。
「天使の涙は、この濁った空気によく映えますよ。あ、これ、とっても美味しい紅茶です。……嘘ですけどね」
彼が差し出したカップの中身は、ドロドロとした泥水のようだった。
「チッ……ゆめ、先輩の邪魔をすんな。おい如月先輩、その泥水……じゃなかった、
紅茶。俺が全部飲みます。一滴も残さず、俺の胃袋に流し込みますッ!」
如月の足元で、狂ったように刀を研いでいた[太字][漢字]宇宙[/漢字][ふりがな]うちゅう[/ふりがな][/太字]が、
鋭い青髪のウルフヘアを揺らして食いついた。
冷酷非情なはずの彼の瞳は、如月の前でだけは、主人を仰ぐ忠犬のように潤んでいる。
宇宙がまとう羽と輪っかは、星々が渦巻く深淵なコスモスで編まれていた。
「……うるさい。宇宙の声、響く。あーしの耳、腐りそう……」
ガゼボの柱にもたれかかり、ゴスロリの裾を弄っているのは[太字][漢字]堕神 舞花[/漢字][ふりがな]だしん まいか[/ふりがな][/太字]だ。
姫カットの奥にある瞳には、深い絶望が宿っている。
彼女が抱える熊のぬいぐるみが、冥暗の力に触れて周囲の光をじわじわと吸い取っていく。
「あーあ、血が出るお菓子、ないかな……。しう、なんか持ってない?」
「あるよー! はい、これ『絶望味のチョコレイト』」
[太字]しう[/太字]が、灰色のハーフツインを揺らして、真っ黒な包み紙を差し出した。
「さっき、下っ端天使の初恋の記憶と交換して作ったんだぁ。食べると、胸が締め付けられるように苦くなるよ♥」
しうの持つ、ドロドロと溶けた黒い鎌が、廃庭園の床を腐食させていく。
彼女は「[漢字]幸逆転[/漢字][ふりがな]チェンジ[/ふりがな])」の力で、誰かの幸せを奪い、
不幸に叩き落とす瞬間が何よりも好きだった。
舞花がそのチョコを口に放り込む。
「……ん。……おいしい。……あは、あははは! 苦い! 最高! もっと誰か、どん底に落ちればいいのに!」
如月は、満足げに笑う少女たちを見渡し、さらに毒を含んだ微笑を深めた。
「ふふ、皆さん楽しそうですね。……あ、そうだ。ボク、いいことを思いつきました。
最近、あっちの清掃区域に、羽が片方しかない『とっても綺麗な』天使の女の子がいるって噂ですよ」
その言葉に、廃庭園の空気が一変した。
「えー! 遊ぶならうちが先! 浮かせて落として、羽が全部真っ黒になるまで振り回してあげよっか?」
ゆめが、短剣を指先でくるくると回しながら目を輝かせる。
「あはっ、面白そう! その子の『綺麗で真っ白な心』、私の鎌でドロドロに溶かして、特大のケーキにしちゃおうかなぁ」
しうが不気味に舌を出す。
「……ふふ、楽しみですねぇ」
如月は、嘘でできた黒い羽をゆっくりと広げた。
「ボクの嘘がどこまで通じるか。……あ、ちなみに今の話、全部嘘かもしれませんよ? ……なんてね」
堕天使たちの笑い声が、静かな天界の影に溶けていく。
まだ自分たちの運命を知らない「白い天使」の元へ、暗い影が伸びようとしていた。
白一色の規律に塗り潰された「聖域」から、忘れ去られたように切り離された廃庭園がある。
そこは、清廉な天使たちが決して足を踏み入れない、毒々しくも美しい「澱み」の空間だった。
「ねぇねぇ[漢字]如月[/漢字][ふりがな]きさらぎ[/ふりがな]くーん! さっきね、上の階の天使の輪っか、
ちょーっと小突いたら泣いちゃった! あはは、うけるー!」
重力など存在しないかのように、[太字][漢字]神谷[/漢字][ふりがな]かみたに[/ふりがな]ゆめ[/太字]がプカプカと宙を泳ぎながら笑う。
水色のセミロングを跳ねさせ、ダボっとしたズボンの裾を揺らすその姿は、
一見すれば無邪気な少女だ。
しかし、その背に生えた羽は小さく、その輪っかは不吉な灰色に濁っている。
「おやおや、ゆめさん。それは……『とっても良いこと』をしましたね」
[太字]如月[/太字]が、空中に固定された嘘のテーブルで優雅にカップを傾けた。
彼の赤い瞳が細められ、詐欺師特有の柔らかな微笑みが浮かぶ。
「天使の涙は、この濁った空気によく映えますよ。あ、これ、とっても美味しい紅茶です。……嘘ですけどね」
彼が差し出したカップの中身は、ドロドロとした泥水のようだった。
「チッ……ゆめ、先輩の邪魔をすんな。おい如月先輩、その泥水……じゃなかった、
紅茶。俺が全部飲みます。一滴も残さず、俺の胃袋に流し込みますッ!」
如月の足元で、狂ったように刀を研いでいた[太字][漢字]宇宙[/漢字][ふりがな]うちゅう[/ふりがな][/太字]が、
鋭い青髪のウルフヘアを揺らして食いついた。
冷酷非情なはずの彼の瞳は、如月の前でだけは、主人を仰ぐ忠犬のように潤んでいる。
宇宙がまとう羽と輪っかは、星々が渦巻く深淵なコスモスで編まれていた。
「……うるさい。宇宙の声、響く。あーしの耳、腐りそう……」
ガゼボの柱にもたれかかり、ゴスロリの裾を弄っているのは[太字][漢字]堕神 舞花[/漢字][ふりがな]だしん まいか[/ふりがな][/太字]だ。
姫カットの奥にある瞳には、深い絶望が宿っている。
彼女が抱える熊のぬいぐるみが、冥暗の力に触れて周囲の光をじわじわと吸い取っていく。
「あーあ、血が出るお菓子、ないかな……。しう、なんか持ってない?」
「あるよー! はい、これ『絶望味のチョコレイト』」
[太字]しう[/太字]が、灰色のハーフツインを揺らして、真っ黒な包み紙を差し出した。
「さっき、下っ端天使の初恋の記憶と交換して作ったんだぁ。食べると、胸が締め付けられるように苦くなるよ♥」
しうの持つ、ドロドロと溶けた黒い鎌が、廃庭園の床を腐食させていく。
彼女は「[漢字]幸逆転[/漢字][ふりがな]チェンジ[/ふりがな])」の力で、誰かの幸せを奪い、
不幸に叩き落とす瞬間が何よりも好きだった。
舞花がそのチョコを口に放り込む。
「……ん。……おいしい。……あは、あははは! 苦い! 最高! もっと誰か、どん底に落ちればいいのに!」
如月は、満足げに笑う少女たちを見渡し、さらに毒を含んだ微笑を深めた。
「ふふ、皆さん楽しそうですね。……あ、そうだ。ボク、いいことを思いつきました。
最近、あっちの清掃区域に、羽が片方しかない『とっても綺麗な』天使の女の子がいるって噂ですよ」
その言葉に、廃庭園の空気が一変した。
「えー! 遊ぶならうちが先! 浮かせて落として、羽が全部真っ黒になるまで振り回してあげよっか?」
ゆめが、短剣を指先でくるくると回しながら目を輝かせる。
「あはっ、面白そう! その子の『綺麗で真っ白な心』、私の鎌でドロドロに溶かして、特大のケーキにしちゃおうかなぁ」
しうが不気味に舌を出す。
「……ふふ、楽しみですねぇ」
如月は、嘘でできた黒い羽をゆっくりと広げた。
「ボクの嘘がどこまで通じるか。……あ、ちなみに今の話、全部嘘かもしれませんよ? ……なんてね」
堕天使たちの笑い声が、静かな天界の影に溶けていく。
まだ自分たちの運命を知らない「白い天使」の元へ、暗い影が伸びようとしていた。