星降る町に
ある冬の夜のことだった。天乃氷彗(あまのひすい)は眠たい眼を擦り、気だるげに体を起こした。
うだつが上がらない日々を送っていたせいか、体は錆びついて動かない。
「私って、何がしたかったんだっけ」
社会人になって一人暮らしを始め、仕事に翻弄されていたからか、何がしたかったかも忘れてしまった。
そんな意味もない質問をしては、また眠りにつく。そんな自堕落な生活を送っていた。
「おーい!早く起きろよ!次、プールだぞ!」
そんな懐かしいような声で目が覚める。
「…あれ?…?え…?」
「どうしたんだよ?早く行くぞ!」
騒がしい声に眠気は冷め、だんだんと意識がはっきりとしていく。
目の前にいるのは確かに学生時代の友人だ。でも社会人になってから一度もあっていないはず。k
(あれ?プール?)
考える暇もないうちに怒号が飛んでくる。
「天乃さん!天乃さん‼もう一分しかありませんよ!急ぎなさい!」
「は、はいぃぃ!」
体に染み付いた習慣というのは、何年たっても忘れられない。授業にも身が入らず、窓の外をふと見ると空が茜色に染まっていた。
「おーい!あ!やっと気づいたのか!」
「もう放課後だよ~大丈夫なの~?」
「あーはいはいわかったわかった静かにして」
クラスメイトのおしゃべりを躱しながら帰路につく。何気ない日常の一コマのはずだが違和感があった。
(あれ…?何かおかしい気が…)
はっ、と気づく。そうだ、私は昨日まで社会人だった。おかしい。どうして?そんなことをぶつぶつとつぶやく。タイムスリップ?わからないがクラスメイトにバレたらまずい。
バレないように、明るくふるまわなきゃ。氷彗は必死に笑顔を作りながら帰路へ着いた。
ごろり、と布団に寝転がる。夜は蒸し暑く、とても寝る気分ではなくなってしまった。
そもそもなぜ過去に戻ってきたのだろう。考えども考えども答えは見つからない。
永遠と答えの出ない公式を解いているように感じた。その時
ぴかり。
白いキャンパスに線を引いたような閃光が夜の街を照らす。流れ星だ。青くて、心を落ち着かせてくれる光。澄み渡った空気と夜空が、氷彗の部屋に差し込んできた。なんだか、心がふっと軽くなった。
水曜の朝、ぱちりと瞼が開く。目の中に入ってくるうざったい光が眩しくて、世界が濁って見えた。
鳥の鳴き声も、子供の笑い声も、すべてうるさく聞こえた。
「ああ…もう7時か…」
体が気だるく、やる気も出ない。アラームを手癖で止め、静かに身を起こす。
朝は嫌いだ。世界から私だけ取り残されているように感じるから。
学校につき、自分の席に着く。いやでも目に入る教室の黒板の文字。友人と呼べるほど親しくない者たち。氷彗は机に突っ伏して寝たふりをしていた。
授業中、差し込んできた光が窓に反射し、まるで牢獄のように見えた。
つまらない,つまらない。西日が差した公園で一人ブランコを漕いでいた。
「いつまでこれが続くんだろう。つまらない。元の年齢に戻りたい。タイムスリップなんて嫌だ。」
そんな気分でいたとき、あるチラシが足元に落ちてきた。
「初心者大歓迎!天体観測会!」
そんな簡単な文言に目が吸い寄せられる。そうだ、私は星が好きだった。
青い星、赤い星、澄んだ空気と青に身をゆだね、黙々と星を見つめるのが好きだった。いつか、星にかかわれる仕事に就きたいと思っていた。懐かしい思い出に瞼をぱちぱちさせ、チラシを眺めていた。
濁っていた世界に色があふれ、輝き出していた。胸に淡く喜びが通い、心の中がキラキラと輝き始めた。
「ああ、こんな世界でもいいかもしれない」
そう思ったとたん、まばゆい光が目の中に飛び込んできた。
ぱちり、と目を開ける。時刻は午前1時ほどだろうか。ベンチの堅い感覚で目が覚め、冷たい空気が頬に触れる。あれは夢だったのだろうか?ふわふわとした気分で目をこする。わからないが一つ確かなことがある。ああ、今からでも遅くない。夢を、かなえてみよう。思いついたからにはこうしちゃ置けない。足取りは軽い。吐き出した息は白く、夜の街に溶けていった。
冬の冷たい夜空に、砂金のような星がちらちらと光る。人気のない道には少し豪華すぎる飾りが輝いている。青い、青い星空に照らされた街並みが、新しい人生を見送ってくれていた。
うだつが上がらない日々を送っていたせいか、体は錆びついて動かない。
「私って、何がしたかったんだっけ」
社会人になって一人暮らしを始め、仕事に翻弄されていたからか、何がしたかったかも忘れてしまった。
そんな意味もない質問をしては、また眠りにつく。そんな自堕落な生活を送っていた。
「おーい!早く起きろよ!次、プールだぞ!」
そんな懐かしいような声で目が覚める。
「…あれ?…?え…?」
「どうしたんだよ?早く行くぞ!」
騒がしい声に眠気は冷め、だんだんと意識がはっきりとしていく。
目の前にいるのは確かに学生時代の友人だ。でも社会人になってから一度もあっていないはず。k
(あれ?プール?)
考える暇もないうちに怒号が飛んでくる。
「天乃さん!天乃さん‼もう一分しかありませんよ!急ぎなさい!」
「は、はいぃぃ!」
体に染み付いた習慣というのは、何年たっても忘れられない。授業にも身が入らず、窓の外をふと見ると空が茜色に染まっていた。
「おーい!あ!やっと気づいたのか!」
「もう放課後だよ~大丈夫なの~?」
「あーはいはいわかったわかった静かにして」
クラスメイトのおしゃべりを躱しながら帰路につく。何気ない日常の一コマのはずだが違和感があった。
(あれ…?何かおかしい気が…)
はっ、と気づく。そうだ、私は昨日まで社会人だった。おかしい。どうして?そんなことをぶつぶつとつぶやく。タイムスリップ?わからないがクラスメイトにバレたらまずい。
バレないように、明るくふるまわなきゃ。氷彗は必死に笑顔を作りながら帰路へ着いた。
ごろり、と布団に寝転がる。夜は蒸し暑く、とても寝る気分ではなくなってしまった。
そもそもなぜ過去に戻ってきたのだろう。考えども考えども答えは見つからない。
永遠と答えの出ない公式を解いているように感じた。その時
ぴかり。
白いキャンパスに線を引いたような閃光が夜の街を照らす。流れ星だ。青くて、心を落ち着かせてくれる光。澄み渡った空気と夜空が、氷彗の部屋に差し込んできた。なんだか、心がふっと軽くなった。
水曜の朝、ぱちりと瞼が開く。目の中に入ってくるうざったい光が眩しくて、世界が濁って見えた。
鳥の鳴き声も、子供の笑い声も、すべてうるさく聞こえた。
「ああ…もう7時か…」
体が気だるく、やる気も出ない。アラームを手癖で止め、静かに身を起こす。
朝は嫌いだ。世界から私だけ取り残されているように感じるから。
学校につき、自分の席に着く。いやでも目に入る教室の黒板の文字。友人と呼べるほど親しくない者たち。氷彗は机に突っ伏して寝たふりをしていた。
授業中、差し込んできた光が窓に反射し、まるで牢獄のように見えた。
つまらない,つまらない。西日が差した公園で一人ブランコを漕いでいた。
「いつまでこれが続くんだろう。つまらない。元の年齢に戻りたい。タイムスリップなんて嫌だ。」
そんな気分でいたとき、あるチラシが足元に落ちてきた。
「初心者大歓迎!天体観測会!」
そんな簡単な文言に目が吸い寄せられる。そうだ、私は星が好きだった。
青い星、赤い星、澄んだ空気と青に身をゆだね、黙々と星を見つめるのが好きだった。いつか、星にかかわれる仕事に就きたいと思っていた。懐かしい思い出に瞼をぱちぱちさせ、チラシを眺めていた。
濁っていた世界に色があふれ、輝き出していた。胸に淡く喜びが通い、心の中がキラキラと輝き始めた。
「ああ、こんな世界でもいいかもしれない」
そう思ったとたん、まばゆい光が目の中に飛び込んできた。
ぱちり、と目を開ける。時刻は午前1時ほどだろうか。ベンチの堅い感覚で目が覚め、冷たい空気が頬に触れる。あれは夢だったのだろうか?ふわふわとした気分で目をこする。わからないが一つ確かなことがある。ああ、今からでも遅くない。夢を、かなえてみよう。思いついたからにはこうしちゃ置けない。足取りは軽い。吐き出した息は白く、夜の街に溶けていった。
冬の冷たい夜空に、砂金のような星がちらちらと光る。人気のない道には少し豪華すぎる飾りが輝いている。青い、青い星空に照らされた街並みが、新しい人生を見送ってくれていた。
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