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夢の話。

#1

第零夢 最初の悪夢

飛び起きると、そこは地獄だった。
まわりには人間がいた。私を散々言ってきたやつらと、私を擁護するふりをしてきたやつらと。それから、私をこんな姿に産み、挙句の果てに怪物だと言って私を捨てた親とが。
彼らは私を始末したいようだ。手には今まで私と同じような子供たちを何人も殺してきた火あぶり用の松明が何本も掲げられていた。
まだ重い瞼を上げ、細い目に当たるその光に苛つきながら、私は口の中でつぶやいた。
所詮はみんな、化け物じゃないか。
私よりも、あの子よりも、どこかにいる仲間たちよりも。お前らの方が化け物という言葉が良く似合う。
しかしそう思ったとたんに、自分が『人間』から生まれた『怪物』だという事に気が付いた。
つまりは、自分は人間でも怪物でもないのだという事に。仲間たちは私を受け入れてくれるだろうか。かつてしてくれたように、私を歓迎してくれるだろうか。あんな目にあわされても、まだなお私を仲間と認めてくれるだろうか?
不安になる。
もうすぐここは私の居場所ではなくなる。
向こうもダメだったら、私はどうしようか。
しかし、「でもまあ」と思った。
どうせ私は怪物なのだから。怪物は怪物なりに孤独に生きても誰の迷惑にもならないだろう。
どっちにしろ、もう『あの子たち』に『彼ら』が危害を加えることはなくなるだろう。
彼らは私にさらに近づいて、私の座っているトランクごと私を燃やそうとしている。
怪物だ、怪物だと私をののしる声。いい加減うんざりしてたのよね、と本音をさらす声。
ああ、もう、どうでもいいや。
私はそれをトランクの隙間から取り出した。
彼らには隠しながら、何でもないような顔をして。どうぞ殺してくださいと言わんばかりの顔をして。
じりじりと近づいてくる彼らの先頭、私の肉親が無防備に首をさらしている。
今だ。
一瞬だった。
私の握る「それ」が肉親の首を掻っ切った。
それでも体は止まることなく周囲の『人間』を切り続けている。
掻いて掻いて、血まみれになって。
最後の一人を切った時には、もうそこには生きた人間はいなかった。
いるのは、右手にナイフを赤く光らせてたたずむ怪物一人。
そこはもうすでに、悪夢の通り過ぎた後だった。
あふれる血で染まった舗道を見て、どうしても笑いがこらえられなかった。
「はは…ははははっ」
サイコパス、とはちょっと違うと思う。
でも、こんな様になっている彼らを見ていると、ざまぁ、と考えてしまう。
本当ならいつまでもこの死体の上で彼らをあざ笑っていたいところだが、そういうわけにもいかない。
早くあの子たちのところへ行かなくては。
おそらく隣町の警官も動き始めているだろう。捕まるのも時間の問題だ。
「おやすみなさい」
私はそう呟いて、その街を後にした。

作者メッセージ

第零話、という事で、まだ本編は始まってません。
本当は完結させてから零話を書こうかなと思ってたんですけど、自分の中で時系列とか世界がごっちゃになりそうだったのでちゃんと順を追って書くことにしました。
今回の話は、主人公が『仲間たち』のところへ行く前の、人間と過ごした最後の時間のお話です。
感動的な言葉を意味深にするの大好きです。

2024/06/02 00:21

雨詠
ID:≫ 6elPWdXK3Jr.6
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