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綺羅にデートに誘われた五分は、その場の雰囲気に押し切られる形で、断れずについ頷いてしまった。 すごく優しい人だとは思う。けれど、出会ったばかりの相手といきなりのデート……。五分の心境は、困惑と緊張がぐちゃぐちゃに混ざり合っていた。
「お待たせ~!」
「あ、うん。やっほー」
待ち合わせ場所に現れた彼女は、一段とお洒落な私服姿で、元気いっぱいに駆けてきた。
「どうかな? 今日はかなり気合入れてきたんだけど……」
「う、うん。すごく似合ってる。……とっても、素敵だよ」
緊張のあまり、思わず出まかせでそんな言葉を口にしていた。 慣れない空気に当てられ、思考がうまくまとまらない。「どうやってこの場をやり過ごそう」という、不快感に近い焦りさえ感じていた。
「……五分っち、行こうか?」
「あ、うん!」
二人は並んで、賑やかな街へと歩き出した。
───────────────────────────────────
「えっ、スケジュール決めてないの?」
「うん……綺羅ちゃんが考えてくれてると思ってて。本当にごめん……!」
焦りで冷や汗が流れる。デートにおいて絶対犯してはいけないミスを、五分はやらかしてしまった。 嫌われただろうか。それ以上に、せっかくの雰囲気を台無しにした自分の情けなさに胸が痛む。
「あ、大丈夫大丈夫~! 私もてっきり五分っちが考えてると思ってたし。なんだ、お相子じゃん♪」
「そう言ってもらえると、すごく助かるよ……」
「でもね、ありがとう」
予想外の言葉が返ってきた。
「えっ?」
「だって、相手にスケジュールを丸投げしちゃうくらい、私を信用してるって証拠じゃん! 私ら、相性抜群だよ~♪」
かなり極端なポジティブ理論。だが、五分はその言葉に救われた気がした。 理屈じゃない。時に無茶苦茶な理論ほど、人の心を軽くするものだ。五分は思わず微笑み返した。
「綺羅ちゃん、行き当たりばったりで行こっか!」
「もちもちろ~ん!」
そうして二人がやってきたのは、テーマパークだった。
「デートニ~ランド名物、じゃじゃじゃジェットコースター! いってらっしゃーい!」
従業員の威勢のいい声とともに、コースターが発進する。
ガタン……カランカラン!!
「う、うあああああああああ!」
「ちょっと、五分っちフライングだって! まだ落ちてないから!」
「じゃあ、ヤッホーかバカヤロー!? どっちがいい!?」
「それ違くない!?」
「じゃあじゃあ、号泣しながら記者会見開く感じで!?」
「それもう用途がちが……ぎゃあああああああ!!」
猛烈な勢いで落下し、急旋回し、トンネルをくぐり抜ける。果てには突如バックで急発進するという、コンプライアンス無視のアウトギリギリ攻め。流石に二人とも、命の危険を感じずにはいられなかった。
―――――――
「あはは! さすがにあのコースターはやばかったべ」
「そうだね。でも楽しかった。綺羅ちゃんと一緒だったから」
「……っ// そ、そう? 嬉しいな。まあ、五分っち途中で白目剥いて失神してたけどね」
「あ、うん……海外でバズってた『あの動画』の人の気持ちがよく分かったよ」
「ガクガクしながら起きたり寝たりするやつね……」
その後も、二人はテーマパークを満喫した。 楽しい時間。綺羅との距離が、少しずつ縮まっていく感覚。 けれど、心の片隅では……未だに龍華の死を、どこか引きずっていた。 こんなに楽しい時に、考えてはいけない。分かっているのに、脳内は天邪鬼だ。願う自分とは裏腹に、暗い影がよぎってしまう。
午後3時。とあるカフェで一息ついていると、綺羅がポツリと呟いた。
「いや~、本当に楽しかったね! 五分っちと来れて良かった!」
「本当だね、ありがとう。綺羅ちゃん」
ミルクティーの甘い香りが漂う。 ふとした沈黙の中、お互いに少しだけ頬を染め、視線を泳がせる。
「綺羅ちゃん……本当に、ありがとうね」
「全然いいよ~。でも、どうしたの改まって?」
「……僕のこと、“気にかけて”くれてたんでしょ?」
綺羅の目が見開かれた。 五分のまっすぐな言葉に、彼女はドギマギと動揺する。
「えっ、えっ? // そ、そうだよ。そうだけど……なんで分かったの?」
「スケジュール、最初から決めてなかったでしょ。それに突然のデート。ちょっとだけ違和感があって……」
問いかけると、綺羅は少しトーンを落として話し始めた。
「ごめんね……バレてたんだ。私、悲しんでる人を放っておけなくてさ。何でもいいから元気にしてあげたい、一緒にいたいって思っちゃって……。こういうの、不愉快かな? 迷惑だった?」
「ううん、そんなことないよ。それは綺羅ちゃんの優しさなんだから、大切にしてほしい。僕はすごく嬉しかったんだ。今日、綺羅ちゃんと過ごして、話していたら……少し楽になれた。君の言葉に、僕は救われたんだよ」
綺羅は驚いたように目を見開いた。 そして、堪えきれなくなったように、ふっと涙を零した。
「えへっ……五分っち、ありがとう……っ!!」
話しているうちに、五分自身も彼女の思いに救われた気がしていた。 ただ「一緒にいたい」。その真っ直ぐな気持ちだけで、冷えていた胸の奥が温かくなる。
夕日が差し込み、街がロマンチックな色に染まる頃。彼女はいたずらっぽく囁いた。
「五分っち、ずっと緊張してたでしょ?」
「えっ……バレてたの……!?」
「最初の方なんて、顔に『緊張』って書いてあったよ」
「そっか。これもお相子だね」
「でも、五分っち……いえ、五分。次はちゃんと、君の方から“告白”してね」
「!?」
温かな時間。そうして二人のデートは幕を閉じた。 意外な言葉や極端な理論に、案外救われることもある。五分は、そんなことをぼんやりと考えていた。
「お待たせ~!」
「あ、うん。やっほー」
待ち合わせ場所に現れた彼女は、一段とお洒落な私服姿で、元気いっぱいに駆けてきた。
「どうかな? 今日はかなり気合入れてきたんだけど……」
「う、うん。すごく似合ってる。……とっても、素敵だよ」
緊張のあまり、思わず出まかせでそんな言葉を口にしていた。 慣れない空気に当てられ、思考がうまくまとまらない。「どうやってこの場をやり過ごそう」という、不快感に近い焦りさえ感じていた。
「……五分っち、行こうか?」
「あ、うん!」
二人は並んで、賑やかな街へと歩き出した。
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「えっ、スケジュール決めてないの?」
「うん……綺羅ちゃんが考えてくれてると思ってて。本当にごめん……!」
焦りで冷や汗が流れる。デートにおいて絶対犯してはいけないミスを、五分はやらかしてしまった。 嫌われただろうか。それ以上に、せっかくの雰囲気を台無しにした自分の情けなさに胸が痛む。
「あ、大丈夫大丈夫~! 私もてっきり五分っちが考えてると思ってたし。なんだ、お相子じゃん♪」
「そう言ってもらえると、すごく助かるよ……」
「でもね、ありがとう」
予想外の言葉が返ってきた。
「えっ?」
「だって、相手にスケジュールを丸投げしちゃうくらい、私を信用してるって証拠じゃん! 私ら、相性抜群だよ~♪」
かなり極端なポジティブ理論。だが、五分はその言葉に救われた気がした。 理屈じゃない。時に無茶苦茶な理論ほど、人の心を軽くするものだ。五分は思わず微笑み返した。
「綺羅ちゃん、行き当たりばったりで行こっか!」
「もちもちろ~ん!」
そうして二人がやってきたのは、テーマパークだった。
「デートニ~ランド名物、じゃじゃじゃジェットコースター! いってらっしゃーい!」
従業員の威勢のいい声とともに、コースターが発進する。
ガタン……カランカラン!!
「う、うあああああああああ!」
「ちょっと、五分っちフライングだって! まだ落ちてないから!」
「じゃあ、ヤッホーかバカヤロー!? どっちがいい!?」
「それ違くない!?」
「じゃあじゃあ、号泣しながら記者会見開く感じで!?」
「それもう用途がちが……ぎゃあああああああ!!」
猛烈な勢いで落下し、急旋回し、トンネルをくぐり抜ける。果てには突如バックで急発進するという、コンプライアンス無視のアウトギリギリ攻め。流石に二人とも、命の危険を感じずにはいられなかった。
―――――――
「あはは! さすがにあのコースターはやばかったべ」
「そうだね。でも楽しかった。綺羅ちゃんと一緒だったから」
「……っ// そ、そう? 嬉しいな。まあ、五分っち途中で白目剥いて失神してたけどね」
「あ、うん……海外でバズってた『あの動画』の人の気持ちがよく分かったよ」
「ガクガクしながら起きたり寝たりするやつね……」
その後も、二人はテーマパークを満喫した。 楽しい時間。綺羅との距離が、少しずつ縮まっていく感覚。 けれど、心の片隅では……未だに龍華の死を、どこか引きずっていた。 こんなに楽しい時に、考えてはいけない。分かっているのに、脳内は天邪鬼だ。願う自分とは裏腹に、暗い影がよぎってしまう。
午後3時。とあるカフェで一息ついていると、綺羅がポツリと呟いた。
「いや~、本当に楽しかったね! 五分っちと来れて良かった!」
「本当だね、ありがとう。綺羅ちゃん」
ミルクティーの甘い香りが漂う。 ふとした沈黙の中、お互いに少しだけ頬を染め、視線を泳がせる。
「綺羅ちゃん……本当に、ありがとうね」
「全然いいよ~。でも、どうしたの改まって?」
「……僕のこと、“気にかけて”くれてたんでしょ?」
綺羅の目が見開かれた。 五分のまっすぐな言葉に、彼女はドギマギと動揺する。
「えっ、えっ? // そ、そうだよ。そうだけど……なんで分かったの?」
「スケジュール、最初から決めてなかったでしょ。それに突然のデート。ちょっとだけ違和感があって……」
問いかけると、綺羅は少しトーンを落として話し始めた。
「ごめんね……バレてたんだ。私、悲しんでる人を放っておけなくてさ。何でもいいから元気にしてあげたい、一緒にいたいって思っちゃって……。こういうの、不愉快かな? 迷惑だった?」
「ううん、そんなことないよ。それは綺羅ちゃんの優しさなんだから、大切にしてほしい。僕はすごく嬉しかったんだ。今日、綺羅ちゃんと過ごして、話していたら……少し楽になれた。君の言葉に、僕は救われたんだよ」
綺羅は驚いたように目を見開いた。 そして、堪えきれなくなったように、ふっと涙を零した。
「えへっ……五分っち、ありがとう……っ!!」
話しているうちに、五分自身も彼女の思いに救われた気がしていた。 ただ「一緒にいたい」。その真っ直ぐな気持ちだけで、冷えていた胸の奥が温かくなる。
夕日が差し込み、街がロマンチックな色に染まる頃。彼女はいたずらっぽく囁いた。
「五分っち、ずっと緊張してたでしょ?」
「えっ……バレてたの……!?」
「最初の方なんて、顔に『緊張』って書いてあったよ」
「そっか。これもお相子だね」
「でも、五分っち……いえ、五分。次はちゃんと、君の方から“告白”してね」
「!?」
温かな時間。そうして二人のデートは幕を閉じた。 意外な言葉や極端な理論に、案外救われることもある。五分は、そんなことをぼんやりと考えていた。
- 1.第一章「火災保険は入っとけ!みんな大ピンチ!?編」 第一話「原点にして底辺」
- 2.第一章「火災保険は入っとけ!みんな大ピンチ!?編」 第二話「ペットの田中さん」
- 3.第一章「火災保険は入っとけ!みんな大ピンチ!?編」 第三話「遂に始動!暑い原因はバナナかも?」
- 4.第一章「火災保険は入っとけ!みんな大ピンチ!?編」 第四話「干物とプリンと決意」
- 5.第一章「火災保険は入っとけ!みんな大ピンチ!?編」 第五話「果てしなき思い出はここから」
- 6.第一章「火災保険は入っとけ!みんな大ピンチ!?編」 第六話「ナルシストと自撮り棒は紙一重」
- 7.第一章「火災保険は入っとけ!みんな大ピンチ!?編」 第七話「誘惑のお姉さん」
- 8. 第一章「火災保険は入っとけ!みんな大ピンチ!?編」 第八話「洞窟遭難 前編」
- 9.第一章「火災保険は入っとけ!みんな大ピンチ!?編」 第九話「洞窟遭難 後編」
- 10.第一章「火災保険は入っとけ!みんな大ピンチ!?編」 第十話「主人公の定義」
- 11.第一章「火災保険は入っとけ!みんな大ピンチ!?編」 第十一話「アニメみたいな設定?明かされた謎」
- 12.第一章「火災保険は入っとけ!みんな大ピンチ!?編」 第十二話「ごめんねクリチー。 前編」
- 13.第一章「火災保険は入っとけ!みんな大ピンチ!?編」 第十三話「ごめんねクリチー。 後編」
- 14.第一章「火災保険は入っとけ!みんな大ピンチ!?編」 第十四話「再来!誘惑お姉さん!驚異的だからみんなで逃げたい」
- 15.第一章「火災保険は入っとけ!みんな大ピンチ!?編」 第十五話「静かな夜の思い出」
- 16.第一章「火災保険は入っとけ!みんな大ピンチ!?編」 第十六話「爆弾はロリロリのねのね、なのね!」
- 17.第一章「火災保険は入っとけ!みんな大ピンチ!?編」 第十七話「“厄雷の翠”」
- 18.第一章「火災保険は入っとけ!みんな大ピンチ!?編」 第十八話「タイトル回収♪」
- 19.第一章「火災保険は入っとけ!みんな大ピンチ!?編」 第十九話「黄金の絆」
- 20.第一章「火災保険は入っとけ!みんな大ピンチ!?編」 第二十話「暖かな時間」
- 21.第二章「伝説の龍は娘に怒ってます!編」 第二十一話「野菜畑の田中さん」
- 22.第二章「伝説の龍は娘に怒ってます!編」 第二十二話「あの恐ろしき角は冒険の予感?」
- 23.第二章「伝説の龍は娘に怒ってます!編」 第二十三話「実にくだらない」
- 24.第二章「伝説の龍は娘に怒ってます!編」 第二十四話「まな板と失われた尊厳」
- 25.第二章「伝説の龍は娘に怒ってます!編」 第二十五話「非情」
- 26.第二章「伝説の龍は娘に怒ってます!編」 第二十六話「パンツの替えが必要だ」
- 27.第二章「伝説の龍は娘に怒ってます!編」 第二十七話「龍華を賭けてババ抜き対決〜°・*:.。.☆ うふーん♡ 前編♡」
- 28.第二章「伝説の龍は娘に怒ってます!編」 第二十八話「龍華を賭けてババ抜き対決〜°・*:.。.☆ うふーん♡ 後編♡」
- 29.第二章「伝説の龍は娘に怒ってます!編」 第二十九話「龍による戦い」
- 30.第二章「伝説の龍は娘に怒ってます!編」 第三十話「Duo Nexus ―交差する絆―」
- 31.第三章「糸はマキマキ、永遠にマキ込むは真気 編」第三十一話「ピンクの嵐は突然に」
- 32.第三章「糸はマキマキ、永遠にマキ込むは真気 編」第三十二話「真美さんは喋りたい」
- 33.第三章「糸はマキマキ、永遠にマキ込むは真気 編」第三十三話「ひまりさんと(仮)ヒロイン」
- 34.第三章「糸はマキマキ、永遠にマキ込むは真気 編」第三十四話「優しい会話」
- 35.第三章「糸はマキマキ、無限に絡むは真気 編」第三十五話「モブは引き立て役じゃないよ、モブは裏の勇士さ 前編」
- 36.第三章「糸はマキマキ、無限に絡むは真気 編」第三十六話「モブは引き立て役じゃないよ、モブは裏の勇士さ 後編」
- 37.第三章「糸はマキマキ、無限に絡むは真気 編」第三十七話「信じているよ、本当に」
- 38.第三章「糸はマキマキ、無限に絡むは真気 編」第三十八話「綺羅ちゃんとしてよろしくね」
- 39.第三章「糸はマキマキ、無限に絡むは真気 編」第三十九話「急なデートは今すぐにも」