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僕のふざけた思い出

#38

第三章「糸はマキマキ、無限に絡むは真気 編」第三十八話「綺羅ちゃんとしてよろしくね」

病院のベッドの上。 歯を磨いていた五分は、ふと目に飛び込んできたテレビのニュースに絶句した。
あまりの衝撃に、指から力が抜ける。 ポトリ、と落ちた歯ブラシ。 真っ白な歯磨き粉が布団を汚したが、そんなことを気にする余裕はなかった。
目の前の光景が、夢であるならどれほどいいか。 鼓膜が破れたかのようにキーンと耳鳴りが響き、同時に――“あの子”の声が聞こえた気がした。

『今日午後六時頃、都内にて龍華さんの遺体が発見されました。集団による性暴行を受けた末、死亡したとのことです。犯行現場には――』

「……は?」

音が消えた。 気づけば、五分は手元のリモコンを叩きつけていた。 画面が砕け、沈黙するテレビ。 ひどい耳鳴りと頭痛の中、もうどこにもいない彼女の声が、頭の中で何度も木霊する。

(はぁ、はぁ……っ、嘘だ、嘘だ嘘だ……! なんで、どうして……っ!?)

ぽたぽたと、シーツに汗と涙が滴り、小さな水たまりを作る。 その光景が、ニュースから連想される凄惨な現場と重なり、吐き気がするほど不快だった。

───────────────────────────────────

気づけば、朝になっていた。 昨夜の出来事を思い出すたびに、全身が強張り、息が詰まる。

五分は、ただ唖然としていた。 ここ最近の奇妙な出来事。そして「集団」というキーワード。 犯人は“エタナ・ギヴォズ”ではないか――そう結論づけようとしていた。 そうでもしなければ心が壊れてしまう。なにか「理由」がなければ、到底受け入れられる現実ではなかった。

――バタン!!

勢いよくドアが開く。 そこに立っていたのは、息を切らしたさくらだった。 五分の姿を見た途端、彼女はしがみつくように抱きつき、泣き叫んだ。

「ご、五分……! こんなのって、あんまりだよ……っ! あんまりだよぉ……!!」

「さ、さくら……僕……っ。う、うあ、あああああああん!!」

突然すぎる別れ。耐え難い現実。 もし、本当に運命に補正をかけられるなら、今すぐこの瞬間にかけてほしい。 五分の願いは、しかしどこにも届かない。 持て余したこの能力が、あまりに皮肉で、自分をさらに苦しめた。

数時間後。二人はぼんやりと窓の外を眺めていた。 もう何も感じない。悲しむことさえ、疲れ果ててしまった。 言葉はなく、ただ静寂だけが二人を包む。それが今の彼らにとってのベストだった。

「……クリチー、今頃何してるんだろうね」

「…………」

さくらが立ち上がり、重い足取りで荷物をまとめる。

「ごめんね……もう、帰るね」

五分が力なく頷くと、彼女は去っていった。 再び訪れる静寂。耳を澄ませば、止まない雑音と耳鳴り。 思い出せば出すほど、龍華との記憶が鋭い痛みとなって胸を刺す。 泣いて笑って、共に歩んできた旅の物語。 視界が滲み、またベッドに雫が落ちた。

――その静寂を切り裂くように、明るい声が届く。

「ねぇねぇ……おーい、ねぇねぇってば」

「……え?」

顔を上げると、そこには見知らぬ女性が立っていた。 白髪を綺麗に整えた、お洒落で大人びた女性。少しだけギャルっぽい、独特の雰囲気を漂わせている。

「なんで泣いてるの? よかったら、話聞こうか?」

服装を見る限り、患者でも関係者でもない。 あまりに図々しい態度に、五分は戸惑いを隠せなかった。

「……質問を返すようですけど、誰……ですか? なんでここに?」

「あー、ごめんごめん! 私、綺羅ちゃんっていうの。なんだか泣き声が聞こえた気がしてさ、ついつい来ちゃった」

「……綺羅ちゃん。僕は……五分です」

「そっか、じゃあ五分っちだね!」

既視感のある笑みと声。一瞬だけ誰かと見間違えそうになるが、身長も雰囲気も別人だ。

「んで、なんで泣いてたの? ……あー、聞いちゃダメな感じ?」

「……ううん。もしよければ、聞いてほしいな」

「おっけー、お任せあれ!」

五分は、胸に閉じ込めていた重く苦しい想いを、必死に吐き出した。 綺羅はそれを躊躇うことなく、すべて受け止めてくれた。 なぜだろう。初めて会ったばかりなのに、どこか他人には思えなかった。 誰でもいいから聞いてほしかった自分の感情を、すべて彼女に託した。

「……ごめん。こんなこと、いきなり話しちゃって」

「いいよいいよ~。私から聞きに来たんだし。それに、辛いこと思い出させちゃって、こっちこそごめんね」

「……うん。本当に、突然現れるからびっくりしたよ。でも……話せてよかった。ありがとう」

「えへへ。ねえ、私たち友達にならない? 五分っちとは相性がいい気がするんだよね。なんだか、ここに来たのも“運命”を感じちゃうよ」

「……もちろん。綺羅ちゃん、よろしくね」

他愛のない雑談を交わすうちに、冷え切っていた心がほんの少しだけ温まった。

「ねぇねぇ、五分っち!」

「どうしたの?」

「明日、“デート”しない?」

「……えっ?」

突然の誘い。 五分の物語は、ここからまた、予想もしない歪んだ方向へと動き出そうとしていた。
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作者メッセージ

《真美さんの優雅な時間》
あれっ……既視感

2026/01/06 12:59

めっちゃええ感じ
ID:≫ 03IQsmMFoDW.o
コメント

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