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僕のふざけた思い出

#36

第三章「糸はマキマキ、無限に絡むは真気 編」第三十六話「モブは引き立て役じゃないよ、モブは裏の勇士さ 後編」

「あ、がぁあ……ッ!!」

右肩を、熱い衝撃が貫いた。 今まで経験したことのない、経験しなくてよかったはずの激痛。 五分は絶叫し、視界が白むほどに目を見開いた。

「ぁ、あぁああ……ッ、ぁぁ……!」

耳元で嫌な雑音が響き、意識が遠のきかける。 震える手で肩を抑えると、指先に伝わるドロリとした感触。それが自分の血なのだと思うと、吐き気がするほど気持ち悪かった。

(はぁ、はぁ……っ。まさか、上から来るなんて……。痛い、痛いよ……っ。なんで、なんでこんな……!)

本能的に物陰に隠れるが、痛みと混乱で思考が回らない。 冷静にならなければと思えば思うほど、心臓の鼓動が激痛を煽る。

(とにかく、身を隠さなきゃ……っ)

必死に壁を伝い、もたれかかった背中に硬い何かが触れた。

(これ……鏡?)

その瞬間――。

「姉貴を欺けたとしても、私までは無理だよ。油断したね」

屋根から軽やかに降りてきたのは、先ほどの「下っ端」だった。 鋭い目つきのまま、その銃口は冷酷に五分を捉えている。

「はぁ、はぁ……。油断大敵、ってことだね」

「そう。まあ正直、姉貴相手に油断するのは無理もない。あいつはかなり抜けてるからね。本当にアホらしいよ」

「……仲、悪いの?」

下っ端は、深くため息をついて語り始めた。

「あいつはさ、やる気だけはある癖に、どうしようもないお人好しなんだよ。人を殺すなんて言いつつ、結局は手を汚せない。いつも尻拭いをするのは私。……だけど、そんな姉貴が私は好きなんだ。優しすぎるあいつの代わりに、私が手を汚す。それだけだよ」

「なるほどね……。事情は深掘りしないよ。君なりの理由があるんだろうし」

「……いい奴だね、あんた。でも、ストーリーテラーは殺す。それが任務だから」

下っ端が引き金に指をかけた。

「さようなら」

乾いた発砲音が路地裏に響く。

パリン――!

しかし、響いたのは肉を貫く音ではなく、鏡が砕け散る硬質な音だった。 撃ち抜いた先に、血の一滴すら残っていない。

「まさか、反射……!?」

「“油断”したのは、そっちじゃない?」

背後から迫る気配に、下っ端が戦慄して振り向く。 だが、それよりも五分の拳の方が速かった。

「オラァッ!!」

ドォッ!!

闘気を纏った一撃が顔面を捉え、同時にハンドガンを弾き飛ばす。 下っ端の体は無残に後方へと吹き飛んだ。

「ガハッ……!」

「油断大敵、でしょ? ……さて、話せることは全部話してもらうよ。その後で、君たちをぶっ潰す」

その時だった。

「おい! 大丈夫か、下っ端……!」

「姉貴……!? 来るんじゃない!」

「うおおおおお!」

姉貴が正面から猛然と突っ込んでくる。 だが、冷静さを欠いた突進など、今の五分の敵ではなかった。

ゴッ!!

五分が放った痛恨の一撃が、姉貴の鳩尾に突き刺さる。 彼女は苦悶の表情を浮かべ、膝から崩れ落ちた。

「姉貴……! だから防弾プレートはしとけって言ったのに……!」

「……っ、はぁ、はぁ……!」

苦しみながらも、姉貴は再び立ち上がった。その鋭い眼光だけは、決して五分を離さない。

「待って。なんでそこまでして、僕に固執するの? 何を貫きたいっていうのさ……!」

姉貴は深く、深く息を吸い込み、声を絞り出した。

「私はダメダメでさ……。いつも妹に頼り切りなんだ。昔からヒーローに憧れて、誰かの役に立ちたかった。でも現実は、炎王の件みたいに悪い奴に騙されてばかり。そんな自分を、変えたかったんだ」

彼女の言葉には、悲痛なほどの決意が混じっていた。

「だけど、今の組織は違った。『世界を救うため』に私を必要としてくれた。情けない私を、初めて褒めてくれたんだ! だからやり直すために……『厄災の運命』であるお前を、殺すんだよ!!」

「……わかった。でも最後に一つ。もし僕がストーリーテラーじゃなかったら、君は人を殺すの?」

「確信があるんだ……絶対的なね。ストーリーテラーは運命に補正をかける。奇妙な幸運でピンチを脱し、それが更なる災いを呼ぶ。……お嬢ちゃん、肩を撃ち抜かれてるのに、普通に動けてるでしょ? 一般人には到底不可能なことだ。その常識外の在り方こそ、物語の主人公である証拠なんだよ!」

姉貴は、銃のない右手を五分に向けた。 指を銃の形にし、己の覚悟をそこに込める。

「“この覚悟を、貫く!!”」

いつの間にか、彼女の拳には黄金色の闘気が渦巻いていた。 それは闘争心――己の生を賭けた覚悟を具現化した力。

「勝負だ!!」

「待って姉貴……! あんたに人なんて殺せ――」

下っ端が制止しようとしたが、姉貴の眼差しを見て言葉を飲んだ。 これは、誰にも邪魔できない戦いだ。

姉貴の拳が五分を襲う。 凄まじい風圧とともに、顔面、急所、あらゆる隙を的確に突いてくる。

「ウッ……グ、はぁっ!!」

五分は吐血しながらも、その視線は一度も逸らさなかった。 お互いにボロボロになりながら、魂を削り合うような殴り合い。 打撃音が鈍く、重くなっていく中、下っ端がたまらず叫び声を上げた。

「姉貴……! 頑張れ! 負けるな!!」

その声に応えるように、姉貴の拳に一層の力が宿る。

「限界、上等ぉぉぉ!!!」

放たれる、渾身の一撃。

だが――。

「オッッラァァァ!!!」

僅かな差で五分の拳が先に届いた。 空気を切り裂く衝撃が、姉貴の体を大きく吹き飛ばす。

「ガ……ハッ……!」

姉貴はそのまま地面に叩きつけられ、眠るように意識を失った。

「はぁ……はぁ、はぁ……」

静寂の中、立ち尽くす五分。 自分を貫き、勝利を掴み取った。 肩で息をしながら立ち尽くしていると、下っ端が駆け寄り、一言だけ呟いた。

「……ありがとう」

彼女は倒れた姉を優しく抱きかかえると、夜の闇へと消えていった。

「――ッ!? ア、ガァァァァ!!」

緊張が解けた途端、右肩に焼けるような激痛がぶり返した。 五分はその場に崩れ落ちる。 意識が急速に白濁し、周囲の音が聞こえなくなっていく。

指先から力が抜け、重たくなった瞼を閉じる。 不思議と、心地よささえ感じていた。

(ありがとう、か……)

沈みゆく意識の淵で、五分はそんなことを思った。 日が沈み、暗闇が広がる街で、その後、懸命な五分の捜索が始まった。
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作者メッセージ

《真美さんの優雅な時間》
皆さんは銃弾で肉を貫かれたことはありますか?

私はないです。

痛いですよね。

2025/12/31 12:59

めっちゃええ感じ
ID:≫ 03IQsmMFoDW.o
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