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僕のふざけた思い出

#34

第三章「糸はマキマキ、永遠にマキ込むは真気 編」第三十四話「優しい会話」

ひまりとの一件から、数日後──。

五分とさくらは、とあるカフェのテラス席で穏やかな午後を過ごしていた。
柔らかな風がカップを撫で、ガラス越しに差す陽光がテーブルを淡く照らす。
──まるで、嵐のあとに訪れた嘘みたいな静けさ。

「結局、赫紗さんたちを変えた“マキア”は見つからないね」

五分がスプーンを回しながら、苦笑いをこぼす。

「そうね。ていうか、そもそも“マキ”とか“マキア”とか、急にそんな話に巻き込まれるのもおかしいのよ」

「ほんと、最近おかしなことばっかりだね。
 火災保険、龍の親子喧嘩、更にヒトデとカブトガニ……僕たちどんな番組出てるの?」

「全く同意だわ。まるで世界そのものが、どこか別物に変わったみたい」

「ある意味、有り得るかもしれないね」

二人は、ほっと息をつくように微笑み合う。
その笑顔は、ごく当たり前の──けれど、どこか愛おしい日常の象徴。

紅茶の香りがゆるやかに流れ、時間の針が止まったかのような静寂が訪れる。
こんな平穏が、ずっと続けばいいのに。

──そう、永遠に続くと信じていた。

ポーン……。

穏やかなチャイムが鳴った。

その瞬間、店内の空気がわずかにざわつく。
五分は、ふと顔を上げた。

視界に映る光景──
それは、地獄だった。

「……あぁ、なんで……こんなことに」

息を呑む間もなく、空気が変わる。
それまでの温もりが、すっと霧散していく。

平穏な日常など、崩れるときは一瞬だ。
掴んだ幸せは、永遠じゃない。
形あるものは、いずれ失われ──

──そして、“彼女”によって。


「あっ……あ、あなたは──!」

「キュフフ……♡」

その笑い声を聞いた瞬間、五分の血の気が引いた。
カフェで穏やかに過ごしていた空間が、突如として悪夢のステージに変わる。

「ま、真美さん──ッ!!」

ドンッ!

椅子を倒して立ち上がる五分。
その名を叫ぶ声には、恐怖と絶望と“もう嫌な予感しかしない”という三拍子が揃っていた。

『いや、今の前振り何!?』

さくらが素早くツッコミを入れるも、もう遅い。
テーブル越しに、真美が満面の笑みで五分の手をがっちりと掴んだ。

「五分さんっ!またお会いしましたね!!
 今日こそ、私の最新作について熱く語り合いましょう!!」

「え……えぇ……そ、そうだね……」

──静かなる絶望。
そのキラキラした目、その圧倒的なテンション。
人の理性を破壊するには十分すぎる。

「えーとですね、今回は!そうそう、私の作品───!」

止まらない。息継ぎもない。まるで永遠に回り続けるオルゴールのように。
頭の中に動物園でも開園したかのような情報量が流れ込む。

「ご、五分!逃げるわよ!!」

さくらが立ち上がり、五分の手首を引く。
しかし、その逃走ルートを──真美が華麗にブロックした。

「……ま、待ってください!五分っちは今、私と話してるんですっ!」

「いいえ、何言ってるの?元々、私と“イチャイチャ”してたのよ?
 それを邪魔してるのはあなたでしょ?」

(……五分っち? え、イチャイチャ?)

謎は深まるばかりだ。この人たち異様すぎる。

「何言ってるのですか、さくらさん!
 もともとお話の約束をしていたのは私ですよ!」

「そうなの、五分?」

さくらが問い詰めるように見上げてくる。
五分は小声で、極めて慎重に囁いた。

「えーと……したような、してないような……
 なんせ、あの人次元越えて喋ってるから、何言ってるのか逆に分からないんだよね……」

「確かに同意だわ……」

だが、同意したところで地獄は終わらない。
二人の言い合いは、互いに引かず、カフェの時間を数時間単位で吸い込んでいった。

──────────────────────────────────────

「いいえ!五分と話したいのはこの私!彼女も私と過ごしたいって言うはずよ」

「しかし約束したのは私です!順番を守ってください!」

「順番……? 歳下相手に寄ってたかってる大人にルールを語る説得力が無いわ」

「君のような勘のいいガキは嫌いだよ」

──もはや言葉の殴り合い。
猿の会議のほうがまだ理性的に思えるほどだった。

五分はこっそり出口の方向へスライド移動を開始する。
しかし、肩をギュッと掴まれる。

「……五分、ちょっと質問に答えてくれるかな?」

「……は、はい。」

さくらの笑顔は、完璧に“笑っていない”。
その作り笑顔の奥から、五分の背筋を凍らせるような圧がにじみ出ていた。

──五分は悟った。これはもう戦場だ、と。

「な、なんでも答えるよ!」

とは言ったものの──この状況、正直なにをされるか分からない。
どんな恐ろしい質問が飛んでくるのか、五分は心の中で身構えていた。

(ま、まさか……“僕を上下に分けるならどっちがいい?”とかじゃないよね!?
いや、流石に全年齢対象だからないと思う……うん、ないけど……! 妙にさくらなら有り得そうなんだよね!!)

そんな恐怖と焦燥、そして18禁へのギリギリの境界線を感じながら、
その時、二人の声が重なった。

「「五分(っち)…、私たちのどっちと一緒にいたい?//」」

──予想外の質問だった。
上目遣い、ほんのり紅潮した頬、甘えるような声。
二人が両側からぴったりと密着し、胸の柔らかな感触が五分の理性を“そこ”へ置いてきてしまった。

「そ、その……私と来てくれるなら、“楽しいこと”、た〜くさんしてあげるから///」

さくらの言葉が艶っぽく響き、理性のロープはプツリと切れた。
さらに、その上を行くように真美が囁く。

「わ、私となら……そ、その……“漫画みたいなアソビ”……できますよ?///」

真美の痛恨の一撃。
理性のライフはゼロ。
五分は今まさに、理性と煩悩が同時暴走していた。

「「さぁ、どっちなの?///」」

──究極の選択。
これはもはや運命を決める分岐点。
覚悟を決めて答え無ければ、それは終わりの無い終わり。
まさに覚悟とは暗闇の荒野を自分で切り開くものだ。
それに間違えたら、たぶん命がない。

(ど、どっちにしても地獄……!
真美さんを選べばさくらから一生無視されそう………さくらを選べば真美さんが泣きつきながらグチグチ言いそう……!!……うぅ……)

数十秒の葛藤ののち、五分はついに決断する。

「僕は───」

ゴクリ、と唾を飲み込む音だけが響く。

「どちらも魅力的ですが、私の好みではありません!」

「「……」」

……失言。
よりにもよって、この修羅場で“好みのタイプ”を語るという最悪の選択。
言った瞬間、自分でも「あれ、失言だったかな」と悟る。
背筋が冷え、額から汗がつーっと流れ落ちる。

(これ、勘違い野郎のテンプレだよね・・・)

そして──さくらが、静かに一言。

「最低。普通に自画自賛しすぎ、現実見なよ。きもいよ」

その言葉とともに、椅子を引く音が店内に響いた。
彼女は無言で席を立ち、そのまませっせと出口へ。
続けて真美も、無表情のまま小さく折りたたまれた紙を渡す。

紙には、こう記されていた。

《幻滅した。近づかないで、気持ち悪い》

……言葉が出ない。
二人はそれきり、背中を向けて去っていった。

「お客様……そろそろお会計、よろしいでしょうか?」

「……は、はい。」

乾いた声で返事をし、五分は財布を取り出した。
干からびたモグラのような表情で、全員分の会計を済ませる。

そして、また尊厳をいくつも失った。
学習能力は無いようだ。
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作者メッセージ

《真美さんの優雅な時間》
み、みなさん!こんにちは真美です……。
五分っち!許せません!
本当にもうぉ…!

2025/12/20 13:52

めっちゃええ感じ
ID:≫ 03IQsmMFoDW.o
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