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僕のふざけた思い出

#33

第三章「糸はマキマキ、永遠にマキ込むは真気 編」第三十三話「ひまりさんと(仮)ヒロイン」

───彼女の名は、虹陽さくら。
桜じゃない、間違えるな。

おそらくこの物語で一番まともで、唯一の常識人ツッコミ枠。
そして──ヒロイン(仮)。

今日も彼女は、道場で竹刀を振っていた。
汗が床に落ち、夕陽が木の床を染める。
まさに健全の極み。剣道ガールである。

「はぁーい、注目ーっ! 今日は特別な先生に来てもらいましたー!」

顧問の先生の声が響く。
どうやら“達人”と呼ばれる人物が特別講師に来るらしい。

バタンッ!!

勢いよく開いたドアから現れたのは──

ツーサイドアップに、淡い藍色の髪と瞳。
白い肌に、ピンと立った狐の耳。
まるで春風のような笑顔を浮かべる、美しい女性だった。

「うふふ。こんにちは、皆さん。」

「こ、こんにちはっ……!」

一瞬で空気が変わる。
まるで場が華やぐようなオーラ。
さくらは思わず息を呑んだ。

「うふふ、どうしたの? 何か付いてるかしら?」

「い、いえっ……その……あまりにも美しくて……つい……!」

「ふふっ、ありがとう。そんな風に言われるの、嬉しいわ。」

その柔らかな笑みに、さくらは自然と肩の力が抜けた。
見ただけでわかる。──この人、悪い人じゃない。

「私の名前は虹野陽葵(にじの・ひまり)。ひまり姉さん、って呼んでちょうだい。」

「は、はーい!」

その日、稽古は熱気に包まれた。
ひまり姉さんの指導は厳しくも的確で、
一本一本の動作に心を込めるような教えだった。

「そう、それでいいわ。剣は力でなく、心で振るうの。」

「は、はいっ!」

どこか懐かしく、優しい時間が流れていく──。

────────────────────────────

稽古が終わり、生徒たちが帰っていく中、
さくらだけが荷物の整理で遅れていた。

静まり返った道場に、二人きり。
そこにひまり姉さんが静かに歩み寄る。

「うふふ。さくらちゃん、今日の稽古、とても良かったわよ。」

「そ、そんな……! ひまり先生のご指導が素晴らしかったんです!」

さくらが笑顔を向けると、ひまりもふわりと微笑んだ。
──だが、その次の瞬間。

「ねぇ、さくらちゃん。」
その声音が、わずかに低くなった。

「あなた、“マキア”って知ってるかしら?
 それと……“五分”ちゃんのことも。」

「……!?」

空気が、一瞬で凍る。
さくらの瞳が細くなり、呼吸が鋭くなる。

この名前を知る人間──普通ではない。
そして、彼女の表情から漂う、ただならぬ“何か”。

「……あなた、まさか……“マキア”なの……?」

「あらぁ、やっぱり知ってたのね。
 なら、話が早いわね。──教えてもらおうかしら。」

「えいッ!! 斬ッ!!」

躊躇なく木刀が閃く。
斬撃が走り、空気を裂く──が、

「おっと。」

ひまりの身体が、風のように揺れた。
木刀は空を切り、着物の裾がふわりと揺れる。

(避けた……!? 一歩も動かずに……!?)

ひまりは軽やかに立ち、指先で髪を払う。
次の瞬間、空気が変わった。

「──《青火ノ斬撃》。」

抜刀一閃。
青い炎が軌跡を描き、空を裂いた。
その斬撃は美しく、そして……圧倒的だった。

「なっ──!?」

爆ぜる音と共に、炎が弾ける。
さくらの身体が後方へ弾き飛ばされ、床に転がった。

「うわぁぁぁッ!!」

燃え広がる道場。青い炎が幻想的に踊る。
ひまりはその中心で、静かに剣を構えていた。

「私の“マキ”は、青き炎を生み、操る力──《蒼炎ノ狐》。
 そしてこの刀、《青火ノ狐》とは最高の相性なの。」

「……っ……!」

「言っとくけど、お嬢ちゃんじゃ私には勝てないわ。」

さくらは苦しげに息を吐き、
燃える床を踏みしめながら立ち上がる。

「……そんなこと、やってみなきゃわからないでしょ!!」

木刀を構え、再び斬撃を放つ。
しかし──

「ふふっ、無駄よ。」

ひまりの周囲を、青い火が舞った。
その一閃は、まるで狐が夜空を走るように、幻想的だった。

そして炎が弾けるたびに、
二人の距離は縮まり──運命の歯車が、静かに噛み合い始めた。

さくらは咳き込みながらも立ち上がった。
焦げた道場の空気が肺を刺す。それでも──木刀を握る手を離さない。

「……っ、まだ終わってないわ!」

再び放たれる斬撃。空気を切り裂き、青炎の残光を弾き飛ばす。

「ふふ……そんな攻撃、私には通じないわよ?」

余裕の笑み。
ひまりの狐耳がゆらりと揺れ、青い炎が尾のように舞った。

その瞬間、さくらは隙を突いて横へ跳ぶ。
壁際に転がっていた水バケツを掴み取ると──

「ほい、ずぶ濡れタイムです!」

ジャバーン!!

おかん丸の頭上から、水と雑巾の雨あられが降り注ぐ。

「ふふっ……可愛いわね。でもね、さくらちゃん。現実は甘くないわよ」

ひまりが指を鳴らす。
青い炎が一気に広がり、天井を焦がした。
熱気が吹き抜け、さくらの髪が揺れる。

「くっ……!」

さくらはその中を、ひたすら避け続けていた。
軌跡を読むように、炎と炎の間を縫う。

「逃げてばかりじゃ意味ないわ!──トドメッ!」

「ぎゃああぁぁ!!!」

斬撃が直撃し、木片が爆ぜた。
煙が舞い上がり、視界がゆらぐ。

「ふふ……もう無理よ。言ったでしょ?あなたは私には敵わない。
そろそろ──気づきなさい?」

静寂。
焦げた空気の中で、ひまりの足音だけが響く。

だが──

さくらはスッと顔を上げた。
その瞳には、確信の光。

「気づくのはあなたの方よ、ひまり……“周りを見なさい!”」

「……何を──?」

ひまりが眉をひそめる。
ふと見渡せば、そこは青い炎に囲まれた円。まるで──自らが張った結界の中。

「私がただ逃げてたとでも?いいえ、違うわ。
私はわざと、あなたの青い炎を周囲に撒き散らさせたの」

「……っ!」

「あなたの炎で、視界をごちゃごちゃにするためにね」

「だけど、甘いわね……! その理屈じゃ、あなたの視界からも見えないでしょ?」

さくらが小さく笑う。
その笑みは挑発ではなく、確信に満ちていた。

「最初に投げたでしょ? 水バケツ。あなたの周囲、全部濡れてるわ。
雑巾、水しぶき──濡れた場所は簡単には燃え広がらない。
つまり、“そこだけ炎も煙も起きない”の」

「……ッ!」

「あなたの位置、バレバレってことよ!
“甘いのはそっちだわ、ひまり。まるでケーキのように!”」

「ぐっ……!」

さくらは木刀を握り直す。
体勢を低くし、地を蹴った。

「──いけぇぇぇ!!」

連続の斬撃が、空気を切り裂く。
青い炎が巻き上がり、風を伴ってひまりを襲う!

──ドンッ!!!

爆風が吹き荒れ、床板が弾け飛ぶ。
ひまりの姿が、炎と煙の中に飲まれていった。

「やった……なんとか、勝った……」

さくらは木刀を杖のように突き立て、肩で息をしていた。
周囲には燃え尽きた木片と、わずかに残る青い炎の名残。

──これで、終わった。

そう思った、その瞬間。

「いいえ、まだだわ……私がこの程度で倒れると思ったかしら?」

ぞくり、と背筋が凍る。
振り返ると、そこには無傷で立つひまりの姿。
周囲に漂っていた青い炎が、すべて彼女の身体へと吸い込まれていく。

「この炎は私の一部。操ることも、戻すことも簡単なのよ」
ひまりは涼しい顔で指先を弾く。炎が螺旋を描き、彼女の周囲に再び燃え広がった。
「あなたの作戦、悪くなかったけど──私の刃には、まだ届いてなかったみたいね」

「そ……そんな……!」

さくらの顔から血の気が引く。
──この人、今まで戦った誰よりも……強い。

「さぁ、終わりよ」

その一言と同時に、視界が閃光で塗りつぶされた。
青炎が咆哮のように爆ぜ、さくらの身体を包み込む。

「──っ……!!」

瞬間、激しい衝撃とともに、すべてが暗転した。

──────────────────────────────

まぶしい光。
柔らかな布の感触。
──そして、どこか聞き慣れた声。

「お姉ちゃん、こっち見て!寝顔、面白っ!」

「五分、起きたらどうするの〜!」

……なにこれ。

「……え? いや、ちょっと待って、現実? 夢? 記憶飛んでんの?」

混乱する頭を押さえながら、さくらは身を起こす。
視界には、いつもの天井。そして、五分の部屋。

(……なんで私、ここに?)

「起きた?」

不意に視界へぬっと割り込んできたのは──

「ひまりさん!?」

目の前には、さっき自分を燃やした本人。
しかも、笑顔で覗き込んでくる余裕っぷり。

「あ、え?」

さくらは思わず自分の身体を見下ろす。
火傷も、傷も、どこにもない。
むしろ、肌はつやつや。温泉上がりの美肌効果レベルだ。

「ふふ、驚いたかしら? あたしの炎、再生能力もあるのよ。
軽いケガなら治せるの」

(……いや、軽く燃やしてきた人が言うセリフじゃないよね!?)
(しかも“軽い”の基準、地球で採用されてないから!!)

心の中で全力ツッコミを入れるさくら。

すると今度は、五分がスキップでもしそうな勢いで駆け寄ってくる。

「さくら〜!おはよう!ひまりさんと戦ったらしいけど、大丈夫?」

「え、まぁ……一応?」

「さくら、この人ね、ひまりさんって言って、お姉ちゃんの友達なんだって。
それで今回の事件も、一緒に手伝ってくれるとか!」

「えぇえええっ!?」

驚きすぎて変な声が出るさくら。

「え、じゃあ仲間なの?」

「ええ、そうよ。紛らわしい言い方で勘違いさせちゃってごめんなさいね。
桃恵ちゃんの居場所が分からなくて、つい手荒になっちゃったの」

「そ、そっかぁ……」

肩の力が抜け、さくらはぐったりとため息をつく。
まったく、ややこしいにもほどがある。

──そして、どたばた劇の末に。

「よし、これで一件落着!」

五分が満面の笑みで親指を立てる。

「……綺麗に終わろうとしてるけど、中々ゴリ押しプレイだよ?!」

「たぶん、大丈夫!」

「“たぶん”て言った!!」

部屋にツッコミと笑い声が響く。
どんな戦いの後でも、結局このチームはいつもこうだ。

──こうして、またひとつ。
彼女らの“ふざけた思い出”が増えていくのだった。

完。
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作者メッセージ

《真美さんの優雅な時間》
み、みなさん!こんにちは真美です……。
私の作……いえ「僕のふざけた思い出」を今回も見ていただきありがとうございます。
キュフフ……今回は…………なんというか………、
頼ましい仲間?が登場しましたね……、さくらさんの活躍は少ない……というかこれが初めてなので、今後も五分っち以外の方達も活躍できたら嬉しいです……、
なので今章も最後までみ、見て欲しいです!
…………え、えーと前回の優雅な時間と原文そのままかって?
あー………………、
キュッフッフッフ……、
時には甘えるのも大事ですよ、まるでケーキのように!

2025/12/20 13:52

めっちゃええ感じ
ID:≫ 03IQsmMFoDW.o
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