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僕のふざけた思い出

#17

第一章「火災保険は入っとけ!みんな大ピンチ!?編」 第十七話「“厄雷の翠”」

アカネを倒し、炎都バレリアの広場に静寂が戻った。
しかし、五分の体はボロボロで、全身に痛みが走る。

「五分、本当に大丈夫……?」

さくらが不安そうに声をかける。

「んまあね」

ふらつきながらも、五分は笑顔を作ろうとした。

「それならいいけど……」

さくらの目に、疲労だけではない不安の色が浮かぶ。

三人は炎王の元を目指して歩を進める。
空気は張り詰めているが、足取りはまだ冗談を交わせる余裕があった。

「次の幹部さ……本当頼むから会話で解決できる人がいいな……『あ、もう帰っていいですよ〜』って言ってくれるタイプとか」

「うふふ……だったら私は飴ちゃんくれる優しい幹部がいいな」

クリチーはにこにこと微笑み、柔らかい声で答える。

「いや、もうそれ幹部じゃなくて近所のおばちゃんだから! 勝手に幹部を作るな!!」

「それか……『私の本当の夢はパン屋なんだ』とか言って剣置いてくれる幹部がいい……」

「夢語りしてる間に勝てよ! 敵の人生相談聞いてる場合じゃないよ!?」

笑い声が広がる。
しかし、その和やかな空気は突如として切り裂かれた。

──ズゥゥン

目の前に影が立つ。
背の高い女性、深紅のドレスを纏い、胸元が妖艶に光る。
長い黒髪は夜闇に映え、視線は静かに圧を放つ。

「ふふ……どうやらあなたのようね…侵入者さん♡」

「え、キャバ嬢?」

「偏見で語るなッ!!」

さくらのツッコミも、張り詰めた空気の中では響かない。
女性は近づき、低く、落ち着いた声で自己紹介した。

「私はテルコ、炎王の雇われバイトであり、幹部よ♡」

胸元を強調する仕草に、五分は思わず腰を抜かしたようにしゃがみこむ。

「バイトって言っちゃうんだ!?」

だが、笑顔の裏には確かな殺意が隠されていた。

「残念だけど、あなた達を消さなきゃならないわ、特にそこの“クリチー”ちゃんをね」

「……え?」

不可解な言葉に理解が追いつかないまま、場の空気は重く、緊張で張り詰めた。

「彼女を消せば、あなた達に勝ち目は無い。それに、私の名声も上がるチャンスなの」

テルコの言葉は理不尽そのものだった。意味がわからず、耳を疑う。

「あの、伝説のマキア、“厄雷の翠”と手合わせできるもの♡」

その瞳には薄い笑みが浮かぶ。何を言っているのか、理解が追いつかない。

──その時、五分の前にクリチーが一歩前に出た。
その瞬間、五分の脳裏に衝撃が走る。

「く、クリ───チ……!?」

普段の柔らかく穏やかな笑顔は消え失せ、そこにあるのは鋭く暗く、睨みつけるような眼差しだった。
まるで別人。五分は息を呑むしかなかった。

「ふふ、やっと本気を出してくれるようね」

クリチーの声には冷たく静かな殺意が宿り、普段の愛らしい調子は微塵も残っていない。

「五分、さくらちゃん……今は“別人”だと思って」

──五分とさくらは頷くしかなかった。
クリチーは普段の姿を脱ぎ捨て、“厄雷の翠”として覚醒していたのだ。

テルコは扇子を構え、両手で鋭く握り直す。

「斬刃ノテルコ、今ここにあなたを倒すわッ!!」

扇子が刃となり、空気を切る音だけが聞こえる。
瞬間、クリチーのレインコートは鋭い刃に斬り裂かれた。

刃の速度は人間の目では追えず、スパスパと連続して斬り裂かれる。
だが、動じることなくクリチーは立ったまま──まるで受け止めるかのように。

シャッ、スッ、ジャキンッ──!

刃が肉体を断ち切る衝撃が、空間を震わせる。
五分は思わず後退し、唾を飲むしかなかった。

「う、うそ……!!」

「ふふ、なんて虚しく弱いのでしょう……何が伝説のマキアよ」

テルコは満足げにニヤリと笑い、連撃を止めた。
──決着が着いたように見えた。

しかし次の瞬間、クリチーの姿は消えていた。

「えっ?」

焦るテルコの視線を背に、空間が裂ける。

シュッ……ドドゥゥンッッ!!

巨大な雷光が空を引き裂き、テルコを直撃。
黒焦げになり倒れる彼女の背後に立つのは──クリチー、いや、“厄雷の翠”その人だった。

腕に纏う雷はまばゆく、全身から圧倒的な存在感を放つ。
動かぬ表情は冷徹で、破壊力と速さを視覚だけで理解させる。

空気は静まり返り、雷の残響だけが耳に残る。
五分の身体は硬直し、理解が追いつかないまま目の前の現実を受け入れるしかなかった。

「ふぅ……終わった終わった」

普段通りの、無邪気な笑顔を取り戻したクリチーが、五分の元に歩み寄る。

「な、なんなのあれ……」

五分の唇は震え、胸は圧倒的な力に押し潰されそうになる。
"厄雷の翠"という名が、脳内でこだまする。

「ごめんね〜、今のはマジックショーのアルバイト仲間なんだ〜」

「いや、流石に無理があるわよ!?」

さくらのツッコミも、頭の整理が追いつかず、虚ろに響くだけだった。

「まぁまぁ、また今度話すから〜。早く行こー」

圧倒的な力と深まる謎──
“厄雷の翠”の存在は、一瞬で全てを支配する雷のような恐怖を放っていた。
言葉を失い、圧倒されるしかない。

一行は再び炎王の元へ歩を進める。
背後には残光の雷光が揺らめき、クリチーの覚醒と謎をさらに際立たせる。
まるで、世界そのものが彼女の存在を試すかのように──。
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作者メッセージ

静かに響く、亡き滅雷。
それは決して消えない、「ストーリーテラー」との運命───。
無かった事に、それを信じて

2025/11/28 16:08

めっちゃええ感じ
ID:≫ 03IQsmMFoDW.o
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