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朝日が街を照らしていた。
ホテルを飛び出し、ただひたすら走る五分の背を、さくらが追いかける。
「五分っ、どこへ向かってるの!」
前夜。
気絶していた彼女を拾い、ホテルまで運んだのはさくらだった。
だが、目を覚ました五分は説明もなく外へ走り出していた。
「急がなきゃ……急がなきゃ!」
五分は荒く息を吐きながら走る。
──デグが口にした「浪々広場」。
その言葉だけを頼りに、足が止まらなかった。
だが背後から飛んできた叫びが、五分を立ち止まらせる。
「五分、あんたいい加減にしてっ!」
振り向いた先。
さくらの表情は怒りにも、悲しみにも似ていた。
「ご、ごめん。一旦落ち着くね……ふぅ、説明する。クリチーが攫われた……デグとかいう幹部に」
言葉にした瞬間、さくらは口を押さえ──だが次の瞬間、プハハッと笑い出した。
「……え?さくら?」
異様な光景に五分は眉をひそめる。
その肩にポン、と手が置かれた。
「大丈夫だよ。あの子は頑丈だし、そう簡単にやられないよ」
「なにを言って──!」
胸の奥がざわつく。
目の前で笑い飛ばす彼女の態度が、どうしても許せなかった。
(あぁ……コイツが攫われれば──)
ペチンッ!
頬に痛みが走る。
さくらのビンタだった。
「五分、いい加減にして」
その声は真剣で、目尻には涙が浮かんでいた。
「悲しいのは、あなただけじゃない……!」
震える声。
それでも、その瞳は真っ直ぐだった。
「昨日、全部見てた。あなたが必死に戦ってたのも、クリチーが連れていかれるのも。……そして、何もできずに震えてた自分も」
拳を握り、涙をこらえて言葉を続ける。
「私だって悔しかった。怖かった。情けなくて仕方なかった……。でも、だからこそ今度は一緒に戦いたいの」
一呼吸置いて、彼女は言い切った。
「一人で背負わせたりしない。あなただけに苦しい思いはさせないから!」
その言葉が、五分の胸に刺さった。
胸の奥に開いていた風穴が、じんわりと塞がっていくように。
(……そうか。僕は一人じゃない)
二人は浪々広場を目指し、再び走り出した。
───────────────────────────────────
一時間後──。
ついに辿り着いた広場に、あの姿があった。
「……デグ!」
シルクハットを被った女が振り返る。
その笑みは冷酷で、不気味だった。
「生きていましたか。少し甘く見すぎましたね」
「クリチーはどこだ!」
「……あぁ、あの子なら見たでしょう。あの真っ赤な壁を」
「──ッ!!」
五分の身体に赤い闘気が迸る。
拳を握りしめ、一気にデグへ飛びかかった。
だが、デグは華麗に身を翻し、攻撃は届かない。
「ふっ。当たらなければ意味がありません」
「違うよ。当たらないんじゃない──“当てさせる”んだ!」
五分が横にずれると、そこにはさくらの姿。
彼女が木刀を振り抜く。
──ドズンッ!!
空気を切り裂いた斬撃がデグを捉えた。
「ぐはっ……!!」
デグは苦しみながら挑発する。
「……グッフ、なるほど、素晴らしい連携ですね……しかしその理屈……ちょっと論理が甘いですよ、当たっただけで勝った気になってるのでしょうか?」
「大丈夫。言葉はいらない。拳でわからせるから」
次の瞬間、拳が鳩尾に突き刺さった。
「ぐぉッ……!」
続けざまのラッシュ。
拳が雨のように降り注ぎ、デグの身体を押し潰す。
「オラオラオラァァァァ!!」
その拳はただの暴力ではない。
情けない自分を貫くための拳
すべては、この一瞬のため。
「オラァァァァッ!!!」
最後の一撃が炸裂し、デグの身体が店の壁を突き破り吹き飛ぶ。
完全に沈黙した彼女を見下ろし、五分は一言。
「受け止めて……これが、今の僕だ」
───────────────────────────────────
──浪々広場は、スナックの店ごと崩壊した。
結果。多額の罰金を請求されることになった。悲しい。
ポテトサラダを突きながら落ち込む五分の前に、階段からのんきな声が降ってくる。
「やっほー。いい感じに終わったっぽいねー!」
……クリチーだった。
「……あ、やっほー」
さくらは何事もなかったかのように挨拶。
「いやいやいや!? なんで生きてんのーーッ!?」
「「?」」
二人はきょとん。
「いやさくら! 見てたでしょ!? あの出血量! 頭からドバドバだったじゃん!」
ピンポーン。
さくらがポンと手を打つ。
「あー、五分が気絶した後ね。攫われながら普通に歩いてたよ。『やだー!離せー!』って」
「……え?」
クリチーがカラオケのマイク片手に言う。
「あれ常備してる“my ケチャップ”だから」
「…………MY By tomato」
五分はその場で崩れ落ちた。
ホテルを飛び出し、ただひたすら走る五分の背を、さくらが追いかける。
「五分っ、どこへ向かってるの!」
前夜。
気絶していた彼女を拾い、ホテルまで運んだのはさくらだった。
だが、目を覚ました五分は説明もなく外へ走り出していた。
「急がなきゃ……急がなきゃ!」
五分は荒く息を吐きながら走る。
──デグが口にした「浪々広場」。
その言葉だけを頼りに、足が止まらなかった。
だが背後から飛んできた叫びが、五分を立ち止まらせる。
「五分、あんたいい加減にしてっ!」
振り向いた先。
さくらの表情は怒りにも、悲しみにも似ていた。
「ご、ごめん。一旦落ち着くね……ふぅ、説明する。クリチーが攫われた……デグとかいう幹部に」
言葉にした瞬間、さくらは口を押さえ──だが次の瞬間、プハハッと笑い出した。
「……え?さくら?」
異様な光景に五分は眉をひそめる。
その肩にポン、と手が置かれた。
「大丈夫だよ。あの子は頑丈だし、そう簡単にやられないよ」
「なにを言って──!」
胸の奥がざわつく。
目の前で笑い飛ばす彼女の態度が、どうしても許せなかった。
(あぁ……コイツが攫われれば──)
ペチンッ!
頬に痛みが走る。
さくらのビンタだった。
「五分、いい加減にして」
その声は真剣で、目尻には涙が浮かんでいた。
「悲しいのは、あなただけじゃない……!」
震える声。
それでも、その瞳は真っ直ぐだった。
「昨日、全部見てた。あなたが必死に戦ってたのも、クリチーが連れていかれるのも。……そして、何もできずに震えてた自分も」
拳を握り、涙をこらえて言葉を続ける。
「私だって悔しかった。怖かった。情けなくて仕方なかった……。でも、だからこそ今度は一緒に戦いたいの」
一呼吸置いて、彼女は言い切った。
「一人で背負わせたりしない。あなただけに苦しい思いはさせないから!」
その言葉が、五分の胸に刺さった。
胸の奥に開いていた風穴が、じんわりと塞がっていくように。
(……そうか。僕は一人じゃない)
二人は浪々広場を目指し、再び走り出した。
───────────────────────────────────
一時間後──。
ついに辿り着いた広場に、あの姿があった。
「……デグ!」
シルクハットを被った女が振り返る。
その笑みは冷酷で、不気味だった。
「生きていましたか。少し甘く見すぎましたね」
「クリチーはどこだ!」
「……あぁ、あの子なら見たでしょう。あの真っ赤な壁を」
「──ッ!!」
五分の身体に赤い闘気が迸る。
拳を握りしめ、一気にデグへ飛びかかった。
だが、デグは華麗に身を翻し、攻撃は届かない。
「ふっ。当たらなければ意味がありません」
「違うよ。当たらないんじゃない──“当てさせる”んだ!」
五分が横にずれると、そこにはさくらの姿。
彼女が木刀を振り抜く。
──ドズンッ!!
空気を切り裂いた斬撃がデグを捉えた。
「ぐはっ……!!」
デグは苦しみながら挑発する。
「……グッフ、なるほど、素晴らしい連携ですね……しかしその理屈……ちょっと論理が甘いですよ、当たっただけで勝った気になってるのでしょうか?」
「大丈夫。言葉はいらない。拳でわからせるから」
次の瞬間、拳が鳩尾に突き刺さった。
「ぐぉッ……!」
続けざまのラッシュ。
拳が雨のように降り注ぎ、デグの身体を押し潰す。
「オラオラオラァァァァ!!」
その拳はただの暴力ではない。
情けない自分を貫くための拳
すべては、この一瞬のため。
「オラァァァァッ!!!」
最後の一撃が炸裂し、デグの身体が店の壁を突き破り吹き飛ぶ。
完全に沈黙した彼女を見下ろし、五分は一言。
「受け止めて……これが、今の僕だ」
───────────────────────────────────
──浪々広場は、スナックの店ごと崩壊した。
結果。多額の罰金を請求されることになった。悲しい。
ポテトサラダを突きながら落ち込む五分の前に、階段からのんきな声が降ってくる。
「やっほー。いい感じに終わったっぽいねー!」
……クリチーだった。
「……あ、やっほー」
さくらは何事もなかったかのように挨拶。
「いやいやいや!? なんで生きてんのーーッ!?」
「「?」」
二人はきょとん。
「いやさくら! 見てたでしょ!? あの出血量! 頭からドバドバだったじゃん!」
ピンポーン。
さくらがポンと手を打つ。
「あー、五分が気絶した後ね。攫われながら普通に歩いてたよ。『やだー!離せー!』って」
「……え?」
クリチーがカラオケのマイク片手に言う。
「あれ常備してる“my ケチャップ”だから」
「…………MY By tomato」
五分はその場で崩れ落ちた。
- 1.第一章「火災保険は入っとけ!みんな大ピンチ!?編」 第一話「原点にして底辺」
- 2.第一章「火災保険は入っとけ!みんな大ピンチ!?編」 第二話「ペットの田中さん」
- 3.第一章「火災保険は入っとけ!みんな大ピンチ!?編」 第三話「遂に始動!暑い原因はバナナかも?」
- 4.第一章「火災保険は入っとけ!みんな大ピンチ!?編」 第四話「干物とプリンと決意」
- 5.第一章「火災保険は入っとけ!みんな大ピンチ!?編」 第五話「果てしなき思い出はここから」
- 6.第一章「火災保険は入っとけ!みんな大ピンチ!?編」 第六話「ナルシストと自撮り棒は紙一重」
- 7.第一章「火災保険は入っとけ!みんな大ピンチ!?編」 第七話「誘惑のお姉さん」
- 8. 第一章「火災保険は入っとけ!みんな大ピンチ!?編」 第八話「洞窟遭難 前編」
- 9.第一章「火災保険は入っとけ!みんな大ピンチ!?編」 第九話「洞窟遭難 後編」
- 10.第一章「火災保険は入っとけ!みんな大ピンチ!?編」 第十話「主人公の定義」
- 11.第一章「火災保険は入っとけ!みんな大ピンチ!?編」 第十一話「アニメみたいな設定?明かされた謎」
- 12.第一章「火災保険は入っとけ!みんな大ピンチ!?編」 第十二話「ごめんねクリチー。 前編」
- 13.第一章「火災保険は入っとけ!みんな大ピンチ!?編」 第十三話「ごめんねクリチー。 後編」
- 14.第一章「火災保険は入っとけ!みんな大ピンチ!?編」 第十四話「再来!誘惑お姉さん!驚異的だからみんなで逃げたい」
- 15.第一章「火災保険は入っとけ!みんな大ピンチ!?編」 第十五話「静かな夜の思い出」
- 16.第一章「火災保険は入っとけ!みんな大ピンチ!?編」 第十六話「爆弾はロリロリのねのね、なのね!」
- 17.第一章「火災保険は入っとけ!みんな大ピンチ!?編」 第十七話「“厄雷の翠”」
- 18.第一章「火災保険は入っとけ!みんな大ピンチ!?編」 第十八話「タイトル回収♪」
- 19.第一章「火災保険は入っとけ!みんな大ピンチ!?編」 第十九話「黄金の絆」
- 20.第一章「火災保険は入っとけ!みんな大ピンチ!?編」 第二十話「暖かな時間」
- 21.第二章「伝説の龍は娘に怒ってます!編」 第二十一話「野菜畑の田中さん」
- 22.第二章「伝説の龍は娘に怒ってます!編」 第二十二話「あの恐ろしき角は冒険の予感?」
- 23.第二章「伝説の龍は娘に怒ってます!編」 第二十三話「実にくだらない」
- 24.第二章「伝説の龍は娘に怒ってます!編」 第二十四話「まな板と失われた尊厳」
- 25.第二章「伝説の龍は娘に怒ってます!編」 第二十五話「非情」
- 26.第二章「伝説の龍は娘に怒ってます!編」 第二十六話「パンツの替えが必要だ」
- 27.第二章「伝説の龍は娘に怒ってます!編」 第二十七話「龍華を賭けてババ抜き対決〜°・*:.。.☆ うふーん♡ 前編♡」
- 28.第二章「伝説の龍は娘に怒ってます!編」 第二十八話「龍華を賭けてババ抜き対決〜°・*:.。.☆ うふーん♡ 後編♡」
- 29.第二章「伝説の龍は娘に怒ってます!編」 第二十九話「龍による戦い」
- 30.第二章「伝説の龍は娘に怒ってます!編」 第三十話「Duo Nexus ―交差する絆―」
- 31.第三章「糸はマキマキ、永遠にマキ込むは真気 編」第三十一話「ピンクの嵐は突然に」
- 32.第三章「糸はマキマキ、永遠にマキ込むは真気 編」第三十二話「真美さんは喋りたい」
- 33.第三章「糸はマキマキ、永遠にマキ込むは真気 編」第三十三話「ひまりさんと(仮)ヒロイン」
- 34.第三章「糸はマキマキ、永遠にマキ込むは真気 編」第三十四話「優しい会話」
- 35.第三章「糸はマキマキ、無限に絡むは真気 編」第三十五話「モブは引き立て役じゃないよ、モブは裏の勇士さ 前編」
- 36.第三章「糸はマキマキ、無限に絡むは真気 編」第三十六話「モブは引き立て役じゃないよ、モブは裏の勇士さ 後編」
- 37.第三章「糸はマキマキ、無限に絡むは真気 編」第三十七話「信じているよ、本当に」
- 38.第三章「糸はマキマキ、無限に絡むは真気 編」第三十八話「綺羅ちゃんとしてよろしくね」
- 39.第三章「糸はマキマキ、無限に絡むは真気 編」第三十九話「急なデートは今すぐにも」