剣道部長の誤爆LINE
放課後の教室は、ゆっくり夕陽が伸びてきてオレンジ色に染まっていた。
私は[漢字]三月[/漢字][ふりがな]みつき[/ふりがな]ゆず。アニオタである。
今日どこかに落としてしまった推しのキーホルダーを探して教室中をうろついていると、思いきり椅子の脚に[太字]「ガンッ!」[/太字]と足をぶつけた。
「いったぁ!!」
上履きを履いているとはいえそこそこ痛い。ガーン。「ガンッ」だけに。......あっ、すいません。
今は冬だというのに更に寒くなるようなしょうもないことを考えながらも、痛みに悶える私のカバンの中で、スマホから不意に[太字]ピコン[/太字]と音が出た。
なんだろ......と思って画面を見ると。
『やっと決心ついた。今日、好きって言うわ俺』
......え?
送り主は、剣道部の部長、[漢字]黒瀬[/漢字][ふりがな]くろせ[/ふりがな]くん。
頭の中が花火みたいに爆発して、いろいろな思考が脳内を駆け巡る。
(は?好きって言うって......いや誰に!?ていうかなんで私に送ったの!?え、え、え!?)
あまりの動揺でスマホは手から滑り落ち、よろめいた拍子に机の角に腰をぶつけ、ついでに腕で教卓に置いてあった先生のペン立てを吹き飛ばし、見事にドジのフルコンボを決めた。
廊下を偶然歩いていた数人の友達が一斉にこっちに駆け寄ってくる。
「ゆず!?なにその顔!?どした!?」
「ん、スマホ落ちてるよ......って、何かメッセージでも来たの?......え!何これ、こんなん告白じゃん!しかも送り主はあの黒瀬!!?」
「ち、ちが......違うっていうか......えっ、どういうことなのこれ......」
「んも~!落ち着いてゆず~!とりあえず、明日あたりに絶対黒瀬と話しなよ!?さ、もう下校時間だし、早く家帰って一緒に考えよーう!」
腕を掴まれ学校の外へと連行されていき、延々と励まされ続けて私は更に混乱した。
[水平線]
翌日は、授業中もずっと上の空だった。
前の席の黒瀬くんがプリントを渡すためにくるっと振り向いて目が合った瞬間、私は思わず条件反射でびくっと跳ねた。
それに気づいた黒瀬くんが眉をひそめる。
「......三月お前、今日動き変じゃね?」
(いやー、いっつもオタク友達とはしゃいでるから変じゃない日の方が少ないと思うけど)
そう思いつつも何も言えないので視線を逸らすと、黒瀬くんは不思議そうにしながらもプリントを渡して前を向いた。
そして放課後。
いつものように友達とアニメを語りながら帰ろうとした瞬間、背後から聞き覚えのある低い声が飛んできた。
「おい、三月。ちょっと来い。話あんだよ」
びっくりして振り返るとそこには黒瀬くん。
竹刀ケースを肩にかけていて、いつもよりどこか緊張した雰囲気のある表情をしている。
(なななな、なに!あのメッセージのこと!?もしかして告白!?え!?)
助けを求めるように友達の方を見ると、友達は既に目の前からいなくなっていて、遠くで全力で手を振っているのが見えた。
心臓が、もう破裂するんじゃないかと心配になるくらいの大きい音を立てて動いているのを感じて冷や汗をかきながら、私は黒瀬くんについていく。
ついたのは、体育館の裏の静かなスペース。
風が吹いて、少し冷たい夕方の空気が頬を撫でる。
黒瀬くんがこちらを見て口を開く。
「......お前、昨日スマホ見ただろ」
(見た!!めちゃくちゃ見た!!なんなら凝視した!!)
私は口をパクパクさせる金魚状態。
「......なんか悪いけどさ、あれ......ただの誤爆な。本当は、相談に乗ってくれた親友に送るつもりだった」
さっきまで破裂しかけていた心臓がしぼむ音が聞こえた気がした。
(まあ、流石にあれは誤爆だよね......うん......)
風が当たって、背中がじんわり冷たくなる。
だけどその時。
黒瀬くんの竹刀ケースのファスナーの隙間から、[太字]ゆずが落として無くした推しのキーホルダー[/太字]がころん、と転がり地面に落ちた。
「えっ、それ......!」
黒瀬くんが落ちたキーホルダーを見て一瞬固まり、そして耳まで真っ赤に染まる。
「......お前のだよ。落ちてたから、俺が拾った。......返すタイミング逃して......」
「なんで......?」
黒瀬くんは[漢字]俯[/漢字][ふりがな]うつむ[/ふりがな]いたまま、小さくぼそっと。
「好きな子の落とし物とか、拾ってすぐ話しかけて返すなんて無理だろ」
空気が止まった。
夕焼けが黒瀬くんの横顔を赤く染める。
剣道で鍛えられた手が、わずかに震えている。
「LINEも......本当は誤爆じゃねぇよ。送ったあとビビって......それの言い訳だ」
(え?)
ぽかんとしていると、黒瀬くんは照れ隠しなのか急に毒舌気味になる。
「お前、アニメの話になると早口になるし、すぐ転ぶし、ドジだし。」
「......でも、見てて飽きねぇんだよ。......好きだ。付き合ってくれ」
落ち着いていたはずなのに、やっぱり心臓は破裂した。
「え、え、えっと!で、ぜひ、いや違う、よろしく!違う、お願いします!!」
日本語は崩壊したけど、不思議と後悔は無かった。
その前で、黒瀬くんは堪えきれず吹き出している。
「ははっ、落ち着けって。ほんとゆずって面白いやつ。」
笑われたのは悔しいけど、ちょっとだけ嬉しかった。ほんとにちょっとだけ。うん。
[水平線]
帰り道。
二人で並んで歩いていると、黒瀬くんが不意にこちらを見ながら言った。
「......まあつまり、あのメッセージはわざとってことだ」
「はぁー!?」
「動かなきゃ、いつまでも言えねぇだろ。......[太字]きっかけ作っただけだよ[/太字]」
夕焼け空を背にして、私は顔から湯気が出そうなくらい真っ赤になっていた。
今日、誤爆(?)によって本格的に始まった恋は、思っていたよりもずっと真っ直ぐで、ずっと暖かかった。
私は[漢字]三月[/漢字][ふりがな]みつき[/ふりがな]ゆず。アニオタである。
今日どこかに落としてしまった推しのキーホルダーを探して教室中をうろついていると、思いきり椅子の脚に[太字]「ガンッ!」[/太字]と足をぶつけた。
「いったぁ!!」
上履きを履いているとはいえそこそこ痛い。ガーン。「ガンッ」だけに。......あっ、すいません。
今は冬だというのに更に寒くなるようなしょうもないことを考えながらも、痛みに悶える私のカバンの中で、スマホから不意に[太字]ピコン[/太字]と音が出た。
なんだろ......と思って画面を見ると。
『やっと決心ついた。今日、好きって言うわ俺』
......え?
送り主は、剣道部の部長、[漢字]黒瀬[/漢字][ふりがな]くろせ[/ふりがな]くん。
頭の中が花火みたいに爆発して、いろいろな思考が脳内を駆け巡る。
(は?好きって言うって......いや誰に!?ていうかなんで私に送ったの!?え、え、え!?)
あまりの動揺でスマホは手から滑り落ち、よろめいた拍子に机の角に腰をぶつけ、ついでに腕で教卓に置いてあった先生のペン立てを吹き飛ばし、見事にドジのフルコンボを決めた。
廊下を偶然歩いていた数人の友達が一斉にこっちに駆け寄ってくる。
「ゆず!?なにその顔!?どした!?」
「ん、スマホ落ちてるよ......って、何かメッセージでも来たの?......え!何これ、こんなん告白じゃん!しかも送り主はあの黒瀬!!?」
「ち、ちが......違うっていうか......えっ、どういうことなのこれ......」
「んも~!落ち着いてゆず~!とりあえず、明日あたりに絶対黒瀬と話しなよ!?さ、もう下校時間だし、早く家帰って一緒に考えよーう!」
腕を掴まれ学校の外へと連行されていき、延々と励まされ続けて私は更に混乱した。
[水平線]
翌日は、授業中もずっと上の空だった。
前の席の黒瀬くんがプリントを渡すためにくるっと振り向いて目が合った瞬間、私は思わず条件反射でびくっと跳ねた。
それに気づいた黒瀬くんが眉をひそめる。
「......三月お前、今日動き変じゃね?」
(いやー、いっつもオタク友達とはしゃいでるから変じゃない日の方が少ないと思うけど)
そう思いつつも何も言えないので視線を逸らすと、黒瀬くんは不思議そうにしながらもプリントを渡して前を向いた。
そして放課後。
いつものように友達とアニメを語りながら帰ろうとした瞬間、背後から聞き覚えのある低い声が飛んできた。
「おい、三月。ちょっと来い。話あんだよ」
びっくりして振り返るとそこには黒瀬くん。
竹刀ケースを肩にかけていて、いつもよりどこか緊張した雰囲気のある表情をしている。
(なななな、なに!あのメッセージのこと!?もしかして告白!?え!?)
助けを求めるように友達の方を見ると、友達は既に目の前からいなくなっていて、遠くで全力で手を振っているのが見えた。
心臓が、もう破裂するんじゃないかと心配になるくらいの大きい音を立てて動いているのを感じて冷や汗をかきながら、私は黒瀬くんについていく。
ついたのは、体育館の裏の静かなスペース。
風が吹いて、少し冷たい夕方の空気が頬を撫でる。
黒瀬くんがこちらを見て口を開く。
「......お前、昨日スマホ見ただろ」
(見た!!めちゃくちゃ見た!!なんなら凝視した!!)
私は口をパクパクさせる金魚状態。
「......なんか悪いけどさ、あれ......ただの誤爆な。本当は、相談に乗ってくれた親友に送るつもりだった」
さっきまで破裂しかけていた心臓がしぼむ音が聞こえた気がした。
(まあ、流石にあれは誤爆だよね......うん......)
風が当たって、背中がじんわり冷たくなる。
だけどその時。
黒瀬くんの竹刀ケースのファスナーの隙間から、[太字]ゆずが落として無くした推しのキーホルダー[/太字]がころん、と転がり地面に落ちた。
「えっ、それ......!」
黒瀬くんが落ちたキーホルダーを見て一瞬固まり、そして耳まで真っ赤に染まる。
「......お前のだよ。落ちてたから、俺が拾った。......返すタイミング逃して......」
「なんで......?」
黒瀬くんは[漢字]俯[/漢字][ふりがな]うつむ[/ふりがな]いたまま、小さくぼそっと。
「好きな子の落とし物とか、拾ってすぐ話しかけて返すなんて無理だろ」
空気が止まった。
夕焼けが黒瀬くんの横顔を赤く染める。
剣道で鍛えられた手が、わずかに震えている。
「LINEも......本当は誤爆じゃねぇよ。送ったあとビビって......それの言い訳だ」
(え?)
ぽかんとしていると、黒瀬くんは照れ隠しなのか急に毒舌気味になる。
「お前、アニメの話になると早口になるし、すぐ転ぶし、ドジだし。」
「......でも、見てて飽きねぇんだよ。......好きだ。付き合ってくれ」
落ち着いていたはずなのに、やっぱり心臓は破裂した。
「え、え、えっと!で、ぜひ、いや違う、よろしく!違う、お願いします!!」
日本語は崩壊したけど、不思議と後悔は無かった。
その前で、黒瀬くんは堪えきれず吹き出している。
「ははっ、落ち着けって。ほんとゆずって面白いやつ。」
笑われたのは悔しいけど、ちょっとだけ嬉しかった。ほんとにちょっとだけ。うん。
[水平線]
帰り道。
二人で並んで歩いていると、黒瀬くんが不意にこちらを見ながら言った。
「......まあつまり、あのメッセージはわざとってことだ」
「はぁー!?」
「動かなきゃ、いつまでも言えねぇだろ。......[太字]きっかけ作っただけだよ[/太字]」
夕焼け空を背にして、私は顔から湯気が出そうなくらい真っ赤になっていた。
今日、誤爆(?)によって本格的に始まった恋は、思っていたよりもずっと真っ直ぐで、ずっと暖かかった。
クリップボードにコピーしました