[斜体][大文字]あの人が居なくなってから何年、何日が経ったのかわからない。
それでも生きていくために、今日も俺は盗みを働く。[/大文字][/斜体]
あの人が居なくなってから時が経ち、
屑人は生き抜くために『盗み』を覚えていた。
日の当たらない裏路地から、
日の当たっている表通りに足を踏み入れる。
そこは相変わらず太陽の光が眩しくて、人通りが多く、人々の声が五月蝿い。
しかし人が多いことは決して悪いことではない。
盗みのターゲットも多くなり、人混みが多いということは、
人混みに紛れて財布を頂戴できる……という訳だ。
(昼になると市場には人が集まる。
中には大金を持ってるヤツもいて、金を盗むにはもってこいなんだよな)
薄汚れたボロボロのコートを羽織った屑人は、心の中でそう呟いた。
盗みに対しての罪悪感は全くない。
常に石を投げられてきたし、『正義』『平和』『平等』を謳う政府のヤツらも何もしてくれなかった。
生きていくためだ。
(生きて、あの人にもう一度会って、そんで___)
すると、丁度良さそうなターゲットが目に入った。
水色の髪の男で、財布の中には札が何十枚か入っていて、なかなかに身なりが良さそうだ。
小銭を落としてしまって、周りに「すみません、すみません」と頭を下げている。
(コイツにするか)
心の中でそう言って、コートのフードを被った。
人混みに紛れて、ソイツに近づく。
すぐ側に置かれた財布に手を伸ばす。
「大丈夫だ、バレてない……」
男は人混みに押されながら、小銭を拾っている。
[大文字]今だ![/大文字]
手を勢いよく伸ばして財布を盗る。
その途端、稲妻のような、とんでもないスピードで走っていく。
(気づかれたか?)
人混みを掻き分け、走りながらそんなことを考える。
しばらくして後ろを振り向くと、男は追ってきていなかった。
心の中でガッツポーズをして裏路地へ入る。
「いやぁ〜、やっぱ俺才能あんだな〜」
裏路地に立ち止まりそう言った。
ポーンポーンと、財布を宙に投げては掴んでを繰り返す。
[大文字]「ねぇねぇ、なんの才能〜?」[/大文字]
「………は?」
どこかで聞いたことのあるような声が後ろからして、振り向く。
するとそこには先ほどの男がいて、裏路地の日の当たらない陰の中、にこにこと笑っていた。
「何で…? お前気づいてなかったろ! てか俺に追いつけねぇだろ?! 何で、何でだよ……?」
盗みを働いてきて数年、その度に追いかけられて逃げ切って数年。足の速さには自信があった。
「“何で”って、フツーに気づいたし追いついちゃったよ〜?」
「はぁ?」
声は笑顔で優しいが、瞳はどこか、なんと言うか、……解らない。
が、とてつもない闇があることは、恐怖心を覚えたのは確かだった。
奥底になにか………得体の知れない“ナニカ”がある。
「人の物盗んじゃダメだよ! ほら、その財布返してね〜」
男が屑人に手を伸ばす。
「……だよ」
「へっ?」
「嫌だよ、これがなきゃ駄目なんだ」
財布を強く握りしめる。
「………どうして?」
「近くに親に捨てられた姉弟がいる。ソイツら何か食わねぇと、飢え死ぬ」
「そっかぁ……」
「同情してんのか? ハッ、別に珍しくねぇよ。ここら辺じゃよくあることだよ」
寂しいような、悲しいような、何かを思い出しているような声で屑人はそう言った。
「じゃ! 僕の財布か〜えしてっ?」
「はぁ? 話聞いてたのかよお前?! 今の流れだと財布の中身俺にくれるだろ!?」
「えぇー、嫌だよ! だって最近金欠なんだもん……!」
「いや知らねぇよ」
どうやら、どちらも譲る気はなさそうだ。
「あっ! じゃあこうしよう!」
「んだよ…?」
「僕と戦って、僕が勝ったら財布を返してね。君が勝ったら財布をあげるよ〜!」
「ハッ、ベタだな…」
「シンプル・イズ・ベストでしょ〜!」
鼻で笑ったが、全く勝てる気がしない。
手が微かに震えている。
(いやいや、追いつかれたから何だ? 気づかれたから何だ? 勝てるだろ…!)
「3,2,1でスタートね?」
「おう」
「よしっ、……3,2,1,…スタート!!」
二人が、一斉に相手に向かって踏み込む。
《〜続く〜》
それでも生きていくために、今日も俺は盗みを働く。[/大文字][/斜体]
あの人が居なくなってから時が経ち、
屑人は生き抜くために『盗み』を覚えていた。
日の当たらない裏路地から、
日の当たっている表通りに足を踏み入れる。
そこは相変わらず太陽の光が眩しくて、人通りが多く、人々の声が五月蝿い。
しかし人が多いことは決して悪いことではない。
盗みのターゲットも多くなり、人混みが多いということは、
人混みに紛れて財布を頂戴できる……という訳だ。
(昼になると市場には人が集まる。
中には大金を持ってるヤツもいて、金を盗むにはもってこいなんだよな)
薄汚れたボロボロのコートを羽織った屑人は、心の中でそう呟いた。
盗みに対しての罪悪感は全くない。
常に石を投げられてきたし、『正義』『平和』『平等』を謳う政府のヤツらも何もしてくれなかった。
生きていくためだ。
(生きて、あの人にもう一度会って、そんで___)
すると、丁度良さそうなターゲットが目に入った。
水色の髪の男で、財布の中には札が何十枚か入っていて、なかなかに身なりが良さそうだ。
小銭を落としてしまって、周りに「すみません、すみません」と頭を下げている。
(コイツにするか)
心の中でそう言って、コートのフードを被った。
人混みに紛れて、ソイツに近づく。
すぐ側に置かれた財布に手を伸ばす。
「大丈夫だ、バレてない……」
男は人混みに押されながら、小銭を拾っている。
[大文字]今だ![/大文字]
手を勢いよく伸ばして財布を盗る。
その途端、稲妻のような、とんでもないスピードで走っていく。
(気づかれたか?)
人混みを掻き分け、走りながらそんなことを考える。
しばらくして後ろを振り向くと、男は追ってきていなかった。
心の中でガッツポーズをして裏路地へ入る。
「いやぁ〜、やっぱ俺才能あんだな〜」
裏路地に立ち止まりそう言った。
ポーンポーンと、財布を宙に投げては掴んでを繰り返す。
[大文字]「ねぇねぇ、なんの才能〜?」[/大文字]
「………は?」
どこかで聞いたことのあるような声が後ろからして、振り向く。
するとそこには先ほどの男がいて、裏路地の日の当たらない陰の中、にこにこと笑っていた。
「何で…? お前気づいてなかったろ! てか俺に追いつけねぇだろ?! 何で、何でだよ……?」
盗みを働いてきて数年、その度に追いかけられて逃げ切って数年。足の速さには自信があった。
「“何で”って、フツーに気づいたし追いついちゃったよ〜?」
「はぁ?」
声は笑顔で優しいが、瞳はどこか、なんと言うか、……解らない。
が、とてつもない闇があることは、恐怖心を覚えたのは確かだった。
奥底になにか………得体の知れない“ナニカ”がある。
「人の物盗んじゃダメだよ! ほら、その財布返してね〜」
男が屑人に手を伸ばす。
「……だよ」
「へっ?」
「嫌だよ、これがなきゃ駄目なんだ」
財布を強く握りしめる。
「………どうして?」
「近くに親に捨てられた姉弟がいる。ソイツら何か食わねぇと、飢え死ぬ」
「そっかぁ……」
「同情してんのか? ハッ、別に珍しくねぇよ。ここら辺じゃよくあることだよ」
寂しいような、悲しいような、何かを思い出しているような声で屑人はそう言った。
「じゃ! 僕の財布か〜えしてっ?」
「はぁ? 話聞いてたのかよお前?! 今の流れだと財布の中身俺にくれるだろ!?」
「えぇー、嫌だよ! だって最近金欠なんだもん……!」
「いや知らねぇよ」
どうやら、どちらも譲る気はなさそうだ。
「あっ! じゃあこうしよう!」
「んだよ…?」
「僕と戦って、僕が勝ったら財布を返してね。君が勝ったら財布をあげるよ〜!」
「ハッ、ベタだな…」
「シンプル・イズ・ベストでしょ〜!」
鼻で笑ったが、全く勝てる気がしない。
手が微かに震えている。
(いやいや、追いつかれたから何だ? 気づかれたから何だ? 勝てるだろ…!)
「3,2,1でスタートね?」
「おう」
「よしっ、……3,2,1,…スタート!!」
二人が、一斉に相手に向かって踏み込む。
《〜続く〜》
- 1.恨んで、恨んで。
- 2.柏樹屑人の生き方篇 〚エンカウント〛
- 3.柏樹屑人の生き方篇 〚マフィア〛
- 4.アジトへ!
- 5.初任務篇 〚情報の手がかりを〛
- 6.初任務篇 〚廃墟にて〛
- 7.初任務篇 〚ぶっ飛ばす!〛
- 8.初任務篇 〚陰と呟き〛
- 9.ゲーム室にて
- 10.自己紹介と、雑談と、「またね!」
- 11.潜入調査篇 〚任務、引き受けりゃいいんだろ?!〛
- 12.潜入調査篇 〚謎の影〛
- 13. 潜入調査篇 〚少女〛
- 14.潜入調査篇 〚戦闘準備〛
- 15.潜入調査篇 〚どうして〛
- 16.潜入調査篇 〚フラッシュバック〛
- 17.潜入調査篇 〚予兆〛
- 18.潜入調査篇〈嶐来side〉 〚時間稼ぎ!〛
- 19.潜入調査篇〈嶐来side〉 〚ただいま交戦中 -上-〛
- 20.潜入調査篇〈嶐来side〉 〚ただいま交戦中 -下-〛
- 21.潜入調査篇 〚目を覚ます〛
- 22.潜入調査篇 〚終わりと……始まり!〛
- 23.休暇をプレゼント!