[太字][大文字]♡婚約破棄された公爵令嬢は、人狼の王の「運命のつがい」として狂愛される[/大文字][/太字]
シャンデリアの眩い光が、王城の大夜会会場を黄金色に照らしていた。
溢れんばかりの貴族たちが集まるその中心で、私の世界は一瞬にして崩壊した。
「シルヴィア・フォン・ローゼンバーグ! 貴様のような嫉妬に狂った悪女との婚約を、今この瞬間を以て破棄する!」
大音量で響き渡ったのは、私の婚約者である第一王子・レナードの声だった。
彼の隣には、儚げな表情で涙を浮かべ、男の庇護欲をそそるような仕草で行列の男爵令嬢・ミーナが寄り添っている。
「レナード殿下……公の場でそのような大声を出すのは、王族としての品格を疑われますわよ」
私は背筋をピンと伸ばし、扇を優雅に構えたまま、冷徹に言い返した。
私、シルヴィアはローゼンバーグ公爵家の長女であり、次期王妃としての厳しい教育をすべて完璧に修めてきた。レナードの荒んだ女性関係の尻拭いも、すべて私が裏で処理してきたのだ。
「うるさい! 往生際の悪い女だ! お前がミーナのドレスにワインを浴びせ、階段から突き落とそうとした証拠はすべて挙がっている! 貴様のような醜悪な女は、我が国の王妃に相応しくない! 国外追放だ!」
レナードの言葉に、周囲の貴族たちから一斉に嘲笑と蔑みの視線が突き刺さる。
「さすが悪役令嬢、やることが陰湿ね」
「王子の愛を得られなくて狂ったのよ」
「公爵家もこれで終わりだな」
ミーナはレナードの腕にすがりつきながら、私に向けて、勝ち誇ったような、醜悪な歪んだ笑みを浮かべた。
(フフ、お姉様の地位はすべて私のものよ)と、その瞳が語っていた。
すべては、ミーナが仕組んだ自作自演の冤罪。そして、私の優秀さを妬んでいたレナードが、私を合法的に追い出すために乗っかった茶番劇だった。
「……そうですか。私の言葉を何一つ信じず、その程度の泥女の言葉に踊らされるような殿下なら、こちらから願い下げですわ」
私は身につけていた王家からの婚約指輪を外し、大理石の床へと容赦なく投げ捨てた。
カラン、と高い音が響き渡る。
「ローゼンバーグ公爵家の名は、本日を以て王家への協力をすべて打ち切らせていただきます。皆様、どうぞその無能な『新しい王妃』と共に出る幕をお楽しみになって」
私は一歩も振り返ることなく、ドレスの裾を翻して夜会会場の扉へと歩き出した。
背後からレナードの「不敬だぞ! 捕らえろ!」という怒号が聞こえたが、私の実家の私兵たちが一瞬で王宮の騎士たちを圧倒し、私を遮る者は誰もいなかった。
しかし、外へ出ると、夜の闇は深く、冷たい雨が降り始めていた。
馬車に乗り込み、一人になった瞬間、張り詰めていた糸が切れ、涙がポロポロと溢れ出した。
「私は……ただ真っ直ぐに、国のために努力してきただけですのに……」
どれだけ尽くしても、誰も私を本当の意味で愛してはくれなかった。私の心は、冷たい雨のように凍りついていくようだった。
国外追放の命を受け、私は必要最低限の荷物だけを持って、隣国との国境にある「幻獣の霧森」の近くの別荘へと移動していた。
ここは人間の立ち入りが禁じられた、強力な亜人種や魔獣が棲むとされる危険な領域。
ある月夜の晩。
気晴らしに別荘のバルコニーに出て、大きな満月を見上げていた時だった。
突如として、森の奥から地響きのような遠吠えが響き渡り、凄まじい風が吹き抜けた。
ガサリ、とバルコニーのすぐ目の前の木々が大きく揺れる。
そこに現れたのは、息を呑むほど巨大で美しい、純白の毛並みを持つ狼だった。その瞳は、燃え盛るような鮮やかな琥珀色。神話に登場する、すべての獣を統べる伝説の『神狼』の姿そのものだった。
「ひっ……」
声が詰まる。その圧倒的な強者のオーラに、指一本動かすことができない。
死を覚悟したその瞬間、白い狼は眩い光に包まれ、一人の男へと姿を変えた。
夜の闇に映える銀髪、切れ上がった野性的な琥珀色の瞳。仕立ての良い黒い革の衣服を纏った彼は、人間のどんな貴族よりも気高く、圧倒的な美貌と、男らしい体躯を持っていた。
彼はバルコニーの柵を容易く飛び越え、私の目の前に着地した。
そして、私をじっと見つめた瞬間――彼の瞳の色が、深い深紅へと変化した。
「……見つけた。俺の、生涯の『つがい』だ」
「え……?」
男は突如、私の前に片膝をつき、私の泥に汚れた手をそっと取り、自分の大きな温かい手で包み込んだ。
彼の肌に触れた瞬間、私の身体の奥底から、これまでに感じたことのないような熱い衝撃が駆け巡った。ドクン、ドクンと、心臓が彼のリズムと同調していくのが分かる。
「我が名はガルク・フォン・ヴォルフ。この森の向こうにある、獣人族を統べる『人狼の王』だ。お前から漂うこの極上の香りは、我が魂が求めていた唯一無二のつがいの証……!」
ガルクは私の手を、まるで壊れ物を扱うかのように愛おしそうに引き寄せ、その甲に熱いキスを落とした。
「人間の国でお前が理不尽に傷つけられ、追放されたと聞いて、俺の嗅覚がお前を追いかけてここまで来た。……シャルロット、もう誰も、お前を侮辱することは許さない」
「どうして……私の名前を……? 私は人間に捨てられた、悪役令嬢ですのよ?」
「関係ない。人間どもの見る目が腐っているだけだ」
ガルクは立ち上がり、私の細い腰を力強く、けれど優しく抱き寄せ、自分の胸へと引き寄せた。
「お前がどれだけ傷つき、心を凍らせていたとしても、俺のすべてを懸けてお前を溶かしてやる。俺の国へ来い、シャルロット。お前を、俺の唯一の王妃として、世界で一番甘やかしてやる」
彼の腕の中は、驚くほど温かく、そして絶対的な安心感に満ちていた。
レナードに触れられた時は不快感しかなかったのに、ガルクの放つ色気と包容力に、私の心は一瞬で奪われてしまった。
「はい……私を、貴方のつがいにしてください、ガルク……っ」
私が応えた瞬間、ガルクは歓喜に咆哮を上げ、私の唇に、熱く、甘く、独占欲に満ちた誓いの口づけを交わした。
それから一年後。
人狼族の都にある、壮麗な王宮。私は今、ガルクの隣で「獣人国の王妃」として、信じられないほどの溺愛生活を送っていた。
「シャルロット、朝だ。今日も世界で一番可愛いな、俺のつがい」
「ん……ガルク、まだ眠いですわ……」
ベッドの中で、ガルクは私の身体を後ろから抱きしめ、首筋や耳元に何度も何度も、犬のように甘えたキスを落としてくる。
人間の国では「冷酷無比な人狼の王」と恐れられている彼は、私の前ではただの「過保護で甘えん坊な旦那様」だった。
食事の時間になれば「シャルロットの手を疲れさせたくない」と、美味しい肉料理を口まで運んで食べさせてくれ、少しでも私が寒そうにすれば、すぐに大きな人狼の姿に戻って、その極上のふかふかな毛並みで私を包み込んで温めてくれる。
獣人族の臣下たちも、最初は人間の私を警戒するかと思いきや、私の卓越した内政の知識や、領地経営のアドバイスによって国が劇的に豊かになったことで、
「シャルロット様は我が国の至宝だ!」
「人間にあんな素晴らしい令嬢を扱えるはずがなかったのだ!」
と、実の実家以上に私を敬い、熱狂的に慕ってくれた。
一方、私を追い出したレナードたちの王国は、完全に自業自得の破滅を迎えていた。
私のローゼンバーグ公爵家がすべての経済的・軍事的協力を引き揚げたことで、国内の流通は麻痺し、魔獣の襲撃に対処できなくなった。さらに、新しい王妃となったミーナは、毎日贅沢三昧をして国庫を空っぽにし、不倫を繰り返していたことが発覚。
激怒した国王によってレナードは王位継承権を剥奪され、ミーナと共に地下牢へと幽閉されたという。
ある日、我が国の全権大使として、没落した王国の使者が、ガルクと私の元へ命乞いにやってきた。
現れたのは、奴隷のように身窶れたレナードとミーナだった。
「シャ、シャルロット……! 頼む、戻ってきてくれ! 僕が悪かった! お前がいないと、あの国はもう維持できないんだ! もう一度、僕の正妃にしてやるから!」
レナードが床に這いつくばりながら、涙ながらに訴える。ミーナも「シャルロット様、助けて……」とボロボロの姿で震えていた。
しかし、私が声を出す前に、隣に座るガルクの全身から、空間がひび割れんばかりの凄まじい覇気が放たれた。
「――我が最愛のつがいに、気安くその汚い声をかけるな、羽虫ども」
ガルクの琥珀色の瞳が深紅に染まり、レナードたちは恐怖のあまりその場で失禁しかけながら、激しく床に頭を打ち付けた。
「シャルロットはお前たちの国を救う道具ではない。我が命、我が魂、我が国のすべてを捧げた、唯一無二の女王だ。お前たちが彼女を傷つけた罪、本来なら国ごと消し去るところだが……シャルロットの慈悲によって、命だけは繋いでやっている。その分不相応な命、残りの人生すべてをかけて絶望の中で貪り食うがいい」
ガルクが冷酷に手を振ると、衛兵たちによって二人はゴミのように引き摺り出されていった。彼らの絶望の悲鳴が遠ざかるのを、私はただ、冷ややかな目で見送った。
「もう何も、気にする必要はない。お前には、俺がいる」
ガルクは私をそっと抱き寄せ、愛おしそうに髪を撫でた。
「ええ、ガルク。私には貴方がいれば、それだけで世界で一番幸せですわ」
私が満面の笑みで答えると、ガルクは愛おしさが爆発したように、私を軽々と抱き上げて玉座の間を後にした。そのまま寝室へと運ばれ、これでもかと深い愛を注ぎ込まれる甘い夜が、また始まるのだ。
かつて「悪役令嬢」としてすべてを失った少女は、今、世界で最も強くて優しい獣の王の腕の中で、永遠の極上ハッピーエンドを掴み取ったのだった。
シャンデリアの眩い光が、王城の大夜会会場を黄金色に照らしていた。
溢れんばかりの貴族たちが集まるその中心で、私の世界は一瞬にして崩壊した。
「シルヴィア・フォン・ローゼンバーグ! 貴様のような嫉妬に狂った悪女との婚約を、今この瞬間を以て破棄する!」
大音量で響き渡ったのは、私の婚約者である第一王子・レナードの声だった。
彼の隣には、儚げな表情で涙を浮かべ、男の庇護欲をそそるような仕草で行列の男爵令嬢・ミーナが寄り添っている。
「レナード殿下……公の場でそのような大声を出すのは、王族としての品格を疑われますわよ」
私は背筋をピンと伸ばし、扇を優雅に構えたまま、冷徹に言い返した。
私、シルヴィアはローゼンバーグ公爵家の長女であり、次期王妃としての厳しい教育をすべて完璧に修めてきた。レナードの荒んだ女性関係の尻拭いも、すべて私が裏で処理してきたのだ。
「うるさい! 往生際の悪い女だ! お前がミーナのドレスにワインを浴びせ、階段から突き落とそうとした証拠はすべて挙がっている! 貴様のような醜悪な女は、我が国の王妃に相応しくない! 国外追放だ!」
レナードの言葉に、周囲の貴族たちから一斉に嘲笑と蔑みの視線が突き刺さる。
「さすが悪役令嬢、やることが陰湿ね」
「王子の愛を得られなくて狂ったのよ」
「公爵家もこれで終わりだな」
ミーナはレナードの腕にすがりつきながら、私に向けて、勝ち誇ったような、醜悪な歪んだ笑みを浮かべた。
(フフ、お姉様の地位はすべて私のものよ)と、その瞳が語っていた。
すべては、ミーナが仕組んだ自作自演の冤罪。そして、私の優秀さを妬んでいたレナードが、私を合法的に追い出すために乗っかった茶番劇だった。
「……そうですか。私の言葉を何一つ信じず、その程度の泥女の言葉に踊らされるような殿下なら、こちらから願い下げですわ」
私は身につけていた王家からの婚約指輪を外し、大理石の床へと容赦なく投げ捨てた。
カラン、と高い音が響き渡る。
「ローゼンバーグ公爵家の名は、本日を以て王家への協力をすべて打ち切らせていただきます。皆様、どうぞその無能な『新しい王妃』と共に出る幕をお楽しみになって」
私は一歩も振り返ることなく、ドレスの裾を翻して夜会会場の扉へと歩き出した。
背後からレナードの「不敬だぞ! 捕らえろ!」という怒号が聞こえたが、私の実家の私兵たちが一瞬で王宮の騎士たちを圧倒し、私を遮る者は誰もいなかった。
しかし、外へ出ると、夜の闇は深く、冷たい雨が降り始めていた。
馬車に乗り込み、一人になった瞬間、張り詰めていた糸が切れ、涙がポロポロと溢れ出した。
「私は……ただ真っ直ぐに、国のために努力してきただけですのに……」
どれだけ尽くしても、誰も私を本当の意味で愛してはくれなかった。私の心は、冷たい雨のように凍りついていくようだった。
国外追放の命を受け、私は必要最低限の荷物だけを持って、隣国との国境にある「幻獣の霧森」の近くの別荘へと移動していた。
ここは人間の立ち入りが禁じられた、強力な亜人種や魔獣が棲むとされる危険な領域。
ある月夜の晩。
気晴らしに別荘のバルコニーに出て、大きな満月を見上げていた時だった。
突如として、森の奥から地響きのような遠吠えが響き渡り、凄まじい風が吹き抜けた。
ガサリ、とバルコニーのすぐ目の前の木々が大きく揺れる。
そこに現れたのは、息を呑むほど巨大で美しい、純白の毛並みを持つ狼だった。その瞳は、燃え盛るような鮮やかな琥珀色。神話に登場する、すべての獣を統べる伝説の『神狼』の姿そのものだった。
「ひっ……」
声が詰まる。その圧倒的な強者のオーラに、指一本動かすことができない。
死を覚悟したその瞬間、白い狼は眩い光に包まれ、一人の男へと姿を変えた。
夜の闇に映える銀髪、切れ上がった野性的な琥珀色の瞳。仕立ての良い黒い革の衣服を纏った彼は、人間のどんな貴族よりも気高く、圧倒的な美貌と、男らしい体躯を持っていた。
彼はバルコニーの柵を容易く飛び越え、私の目の前に着地した。
そして、私をじっと見つめた瞬間――彼の瞳の色が、深い深紅へと変化した。
「……見つけた。俺の、生涯の『つがい』だ」
「え……?」
男は突如、私の前に片膝をつき、私の泥に汚れた手をそっと取り、自分の大きな温かい手で包み込んだ。
彼の肌に触れた瞬間、私の身体の奥底から、これまでに感じたことのないような熱い衝撃が駆け巡った。ドクン、ドクンと、心臓が彼のリズムと同調していくのが分かる。
「我が名はガルク・フォン・ヴォルフ。この森の向こうにある、獣人族を統べる『人狼の王』だ。お前から漂うこの極上の香りは、我が魂が求めていた唯一無二のつがいの証……!」
ガルクは私の手を、まるで壊れ物を扱うかのように愛おしそうに引き寄せ、その甲に熱いキスを落とした。
「人間の国でお前が理不尽に傷つけられ、追放されたと聞いて、俺の嗅覚がお前を追いかけてここまで来た。……シャルロット、もう誰も、お前を侮辱することは許さない」
「どうして……私の名前を……? 私は人間に捨てられた、悪役令嬢ですのよ?」
「関係ない。人間どもの見る目が腐っているだけだ」
ガルクは立ち上がり、私の細い腰を力強く、けれど優しく抱き寄せ、自分の胸へと引き寄せた。
「お前がどれだけ傷つき、心を凍らせていたとしても、俺のすべてを懸けてお前を溶かしてやる。俺の国へ来い、シャルロット。お前を、俺の唯一の王妃として、世界で一番甘やかしてやる」
彼の腕の中は、驚くほど温かく、そして絶対的な安心感に満ちていた。
レナードに触れられた時は不快感しかなかったのに、ガルクの放つ色気と包容力に、私の心は一瞬で奪われてしまった。
「はい……私を、貴方のつがいにしてください、ガルク……っ」
私が応えた瞬間、ガルクは歓喜に咆哮を上げ、私の唇に、熱く、甘く、独占欲に満ちた誓いの口づけを交わした。
それから一年後。
人狼族の都にある、壮麗な王宮。私は今、ガルクの隣で「獣人国の王妃」として、信じられないほどの溺愛生活を送っていた。
「シャルロット、朝だ。今日も世界で一番可愛いな、俺のつがい」
「ん……ガルク、まだ眠いですわ……」
ベッドの中で、ガルクは私の身体を後ろから抱きしめ、首筋や耳元に何度も何度も、犬のように甘えたキスを落としてくる。
人間の国では「冷酷無比な人狼の王」と恐れられている彼は、私の前ではただの「過保護で甘えん坊な旦那様」だった。
食事の時間になれば「シャルロットの手を疲れさせたくない」と、美味しい肉料理を口まで運んで食べさせてくれ、少しでも私が寒そうにすれば、すぐに大きな人狼の姿に戻って、その極上のふかふかな毛並みで私を包み込んで温めてくれる。
獣人族の臣下たちも、最初は人間の私を警戒するかと思いきや、私の卓越した内政の知識や、領地経営のアドバイスによって国が劇的に豊かになったことで、
「シャルロット様は我が国の至宝だ!」
「人間にあんな素晴らしい令嬢を扱えるはずがなかったのだ!」
と、実の実家以上に私を敬い、熱狂的に慕ってくれた。
一方、私を追い出したレナードたちの王国は、完全に自業自得の破滅を迎えていた。
私のローゼンバーグ公爵家がすべての経済的・軍事的協力を引き揚げたことで、国内の流通は麻痺し、魔獣の襲撃に対処できなくなった。さらに、新しい王妃となったミーナは、毎日贅沢三昧をして国庫を空っぽにし、不倫を繰り返していたことが発覚。
激怒した国王によってレナードは王位継承権を剥奪され、ミーナと共に地下牢へと幽閉されたという。
ある日、我が国の全権大使として、没落した王国の使者が、ガルクと私の元へ命乞いにやってきた。
現れたのは、奴隷のように身窶れたレナードとミーナだった。
「シャ、シャルロット……! 頼む、戻ってきてくれ! 僕が悪かった! お前がいないと、あの国はもう維持できないんだ! もう一度、僕の正妃にしてやるから!」
レナードが床に這いつくばりながら、涙ながらに訴える。ミーナも「シャルロット様、助けて……」とボロボロの姿で震えていた。
しかし、私が声を出す前に、隣に座るガルクの全身から、空間がひび割れんばかりの凄まじい覇気が放たれた。
「――我が最愛のつがいに、気安くその汚い声をかけるな、羽虫ども」
ガルクの琥珀色の瞳が深紅に染まり、レナードたちは恐怖のあまりその場で失禁しかけながら、激しく床に頭を打ち付けた。
「シャルロットはお前たちの国を救う道具ではない。我が命、我が魂、我が国のすべてを捧げた、唯一無二の女王だ。お前たちが彼女を傷つけた罪、本来なら国ごと消し去るところだが……シャルロットの慈悲によって、命だけは繋いでやっている。その分不相応な命、残りの人生すべてをかけて絶望の中で貪り食うがいい」
ガルクが冷酷に手を振ると、衛兵たちによって二人はゴミのように引き摺り出されていった。彼らの絶望の悲鳴が遠ざかるのを、私はただ、冷ややかな目で見送った。
「もう何も、気にする必要はない。お前には、俺がいる」
ガルクは私をそっと抱き寄せ、愛おしそうに髪を撫でた。
「ええ、ガルク。私には貴方がいれば、それだけで世界で一番幸せですわ」
私が満面の笑みで答えると、ガルクは愛おしさが爆発したように、私を軽々と抱き上げて玉座の間を後にした。そのまま寝室へと運ばれ、これでもかと深い愛を注ぎ込まれる甘い夜が、また始まるのだ。
かつて「悪役令嬢」としてすべてを失った少女は、今、世界で最も強くて優しい獣の王の腕の中で、永遠の極上ハッピーエンドを掴み取ったのだった。