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境界線のクロノス

#2

第2話:「青き雷光とスカウト」

[太字][大文字]⚔ スカウト[/大文字][/太字]




「おい、そこらの一般人! 動けるなら今すぐ下がってろ!」
窓ガラスを砕いて現れた青いマントの少年――特務部隊の戦士は、背中越しにトウマへ向かって鋭く言い放った。
その手にある巨大な大剣からは、バチバチと激しい青い火花が散り、教室の床を焦がしている。
「特務部隊……本当に来たのか……」
トウマは荒い息を吐きながら、辛うじてそれだけを呟いた。
能力の連続使用による頭痛で視界がぐにゃりと歪む。しかし、トウマの目は、目の前の凄まじい光景から片時も離れることができなかった。
「グルゥゥァァァァッ!!」
蜘蛛型の巨大獣が、新たな乱入者に対して明確な敵意を見せ、咆哮をあげる。
先ほどトウマを絶体絶命に追い込んだ、あの鋼鉄のように鋭い三本の爪。それが今度は、青いマントの少年をハエ叩きのように押しつぶさんと、凄まじい風圧を伴って振り下ろされた。
トウマの脳裏に、自分が貫かれた「あの感覚」が蘇る。避けるのは不可能に近い――そう思った瞬間だった。
「遅ぇよ、木偶の坊が」
少年は不敵に笑うと、大剣を構えたまま一歩も動かなかった。
ドンッ! と空気が爆発するような音が響く。
少年がその場から「消えた」のだ。いや、あまりの超高速の移動に、トウマの目が追いつかなかっただけだった。
次の瞬間、怪物の爪が虚しく空を切り、教室の床を深く抉り取る。
「どこを狙ってやがる。俺はこっちだ」
声がしたのは、怪物の真上――天井のすぐ近く、空中だった。
驚異的な跳躍力で宙を舞った少年は、大剣を両手で逆手に握り直し、全身に青い電撃を爆発させた。
「『雷鳴一閃(ライトニング・ドライブ)』!!」
閃光が教室中を真っ白に染め上げた。
少年が放った一撃は、まるで本物の落雷のようだった。激しい雷光をまとった大剣が、蜘蛛型の怪物の脳天へと容赦なく突き刺さる。
「ギ、ギャァァァァァァッ!?」
怪物が悲鳴ともつかない絶叫をあげた。
鋼鉄のようだった皮膚は一瞬で焼き焦げ、肉体の奥深くまで青い電流が駆け巡る。バチバチと細胞が崩壊していく音が響き、ビルほどもあった巨体が、大質量と共にガラガラと床へ崩れ落ちていく。
地響きを立てて横たわった怪物は、やがて光の粒子となって空気中に溶け、消えていった。
次元の裂け目から現れる獣は、核を破壊されるとこの世界に存在を維持できなくなる。それが、この世界の常識だった。
「ふぅ……。今回のは大したことなかったな」
少年は巨大な大剣を軽々と振り回し、背中の鞘へと滑らかに収めた。
青いマントを翻し、着地した彼の姿は、まさにテレビで見る『世界の守護者』そのものだった。
トウマは呆然とそれを見つめていた。
これが、選ばれた能力者たちの戦い。自分が持っている「たった3秒を巻き戻すだけ」の泥臭い能力とは、あまりにも次元が違いすぎる。
「おい、大丈夫か?」
少年がトウマの元へと歩み寄ってきた。近くで見ると、トウマより二、三歳年上に見える。整った顔立ちだが、その瞳には戦士特有の鋭い光が宿っていた。
「あ、ああ……。なんとか、生きてる」
「そうか。お前、さっきの蜘蛛の攻撃を二回も避けたらしいな。避難したクラスメイトの女子が下で泣きながら話してたぞ。『トウマくんが怪物に刺される前に私を助けてくれた』ってな」
少年の目が、じっとトウマの顔を覗き込む。
「……それがどうしたんだよ。ただの偶然だ」
トウマは視線を逸らし、鼻から流れた血を袖で拭った。自分の能力を他人に知られるのは、なんとなく避けたかった。目立ちたくないという本能が働いたのだ。
だが、少年の目は誤魔化せなかった。
「偶然で片付けるには、あの蜘蛛の攻撃速度は速すぎる。それに……お前のその鼻血、そしてひどい脳の疲労感。それは、異能力を無理に使った『反動(オーバーヒート)』の典型的な症状だ」
少年はトウマの肩にガシッと手を置いた。
「隠さなくていい。お前、さっき『何か』をやったな? 予知か、それとも瞬間移動か?」
「……俺は……」
トウマが言い淀んでいると、少年はニカッと白い歯を見せて笑った。
「まぁ、詳しい報告は本部に帰ってからでいい。俺は特務部隊第二部隊の『雷河(ライガ)』だ。お前、面白い能力を持ってるな」
ライガは懐から、黒い金属製のライセンスカードを取り出し、トウマの目の前に突きつけた。そこには、国家防衛局の紋章が刻まれている。
「トウマ、お前を『異能力特務部隊』にスカウトする。その力を腐らせるな。俺たちと一緒に、あの境界線の向こう側から来る化け物どもをぶっ潰そうぜ」
退屈だったトウマの日常が、音を立てて完全に崩れ去った瞬間だった。

2026/08/08 23:56

ふる003
ID:≫ 10.YZDmJ7U7Dk
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次元の裂け目巨大な獣異能力特務部隊

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