文字サイズ変更

無自覚シンデレラと絶対領域の王子たち

#3

秘密のデスク――机の下の超至近距離

[太字][大文字]♡引きこもり王子のバグと、近づく足音[/大文字][/太字]



幽くんに強引に腕を掴まれたまま、私はただ頭が真っ白になっていた。
「お前のその顔……僕以外の男に、1秒でも見せたら流石に許さないから」
耳元で囁かれた甘くて低い声が、頭の中で何度も何度もぐるぐると回り続けている。
えええっ……!?
な、なんなの今の……っ!?
やっぱり、どんくさい私が書類をバラバラに落としちゃったから、幽くんをすっごく怒らせちゃうような大失敗をしちゃったのかな……。
お前が無防備で可愛すぎるのが悪い、なんて言われたけれど、そんなわけない。
変装が下手くそすぎて、幽くんの目にゴミでも入れちゃったんだ、きっと。
「あの、幽くん……? 腕、ちょっと痛いかも……」
私が困ったように苦笑いしながら小さく呟くと、幽くんはハッと我に返ったみたいに、パッと私の腕を離した。
いつも無表情だった彼の顔が、いまだに耳の付け根まで真っ赤に染まっている。
「……あ。……ごめん」
幽くんは小さくノートパソコンの陰に隠れるようにして、またカチカチとキーボードを叩き始めた。
でも、手元がガタガタと目に見えて震えている。
やっぱり、私のドジのせいで、天才ハッカーの幽くんの精密なパソコンの機械をバグらせちゃったのかもしれない。
本当にごめんなさい、って心の中で何度も謝った。
遠くのソファでは、如月先輩たちが相変わらず優雅にお茶を飲んでいる。
パーテーションの向こうのこの隅っこの席で、私の眼鏡が外れて素顔が見えちゃったなんて、他の誰にも気づかれていないみたい。
よかった……。もし知られたら、冴えないタヌキなんて言われた私は、今度こそ一瞬でクビになっちゃう。
それからしばらく、部屋には私のタイピング音だけが静かに響いていた。
なんとか次の書類を打ち終えて、私がホッと胸をなでおろした、その時。
カツン、カツンと、床を鋭く踏みしめる足音がこっちに向かって近づいてきた。
パーテーションの隙間から、ものすごいオーラをまとった如月先輩が姿を現す。
その手には、まだ山のように積まれた、新しい書類の束が握られていた。
「おい、幽。そのタヌキの作業はどこまで進んだ?」
如月先輩がすぐ近くまで歩いてきて、私の心臓がドキンと跳ね上がった。
「まだ残っているデータがある。使えないなら即クビだと言ったが、これくらいは今日中に終わらせて――」
如月先輩が私の方へ手を伸ばし、書類を突き出そうとした、その瞬間。
グイッ――!
「っ……!?」
突然、私の右腕が、ものすごい力で真横に引っ張られた。
驚いて声を上げそうになった私の口を、誰かの冷たくて大きな手が、がっしりと塞ぐ。
そのまま体がふわりと浮いたかと思ったら、私は幽くんの広いデスクの奥――机の下の狭い隙間へと、強引に引きずり込まれていた。
ドササッ!
幽くんがわざと派手に書類の束をデスクの上に落として、大きな音を立てる。
机の上からは、不機嫌そうな如月先輩の冷たい声が聞こえた。
「……おい、幽? 急に何をして――」
でも、今の私はそれどころじゃなかった。
え……? な、なに……っ!? どうして私、机の下にいるの……!?
幽くんの机の下は、パソコンの配線や黒い機械がたくさん並んでいて、すっごく狭い密室みたいになっていた。
そこに、私と幽くんの二人が、お互いの体がぴったり密着するくらいの超至近距離で閉じ込められている。
「……静かにして」
口を塞いでいた幽くんの手が離されて、代わりに彼の顔が、すぐ目の前に迫った。
暗い机の下で、幽くんの綺麗な瞳が、まっすぐに私を捕らえて離さない。
近すぎる彼の吐息が、私の前髪を優しく揺らして、マシュマロみたいな肌に直接触れる。
「あいつにお前の顔……見せたくない。……見せたら、絶対に奪われるから……っ」
幽くんは、今にも壊れそうなほど必死な声で、きゅっと私の肩を抱き寄せた。
耳元で聞こえる幽くんの心臓の音が、信じられないくらいの爆音でドクドクと鳴り響いている。
他の誰にもバレちゃいけない、二人だけの秘密の空間。
狭い机の下で、幽くんの強烈すぎる独占欲に包まれて、私の心臓も破裂しそうなほどに激しく高鳴り始めていた――。

2026/08/06 22:19

ふる003
ID:≫ 10.YZDmJ7U7Dk
コメント

通報フォーム

お名前
(任意)
Mailアドレス
(任意)

※入力した場合は確認メールが自動返信されます
違反の種類 ※必須 ※ご自分の小説の削除依頼はできません。
違反内容、削除を依頼したい理由など※必須

盗作されたと思われる作品のタイトル

どういった部分が元作品と類似しているかを具体的に記入して下さい。

※できるだけ具体的に記入してください。

《記入例》
・3ページ目の『~~』という箇所に、禁止されているグロ描写が含まれていました
・「〇〇」という作品の盗作と思われます。登場人物の名前を変えているだけで●●というストーリーや××という設定が同じ
…等

備考欄
※伝言などありましたらこちらへ記入
メールフォーム規約」に同意して送信しますか?※必須
タイトル
URL

この小説の著作権はふる003さんに帰属します

TOP