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無自覚シンデレラと絶対領域の王子たち

#2

地味子、転校初日から目を付けられる

[太字][大文字]♡完璧な変装と、机の上の暴言[/大文字][/太字]




「よし、今日から新しい学校だ! がんばるぞー!」
お城みたいにキラキラした『私立聖プレアデス学園』の校門を見上げて、私はぎゅっと拳を握りしめた。
普通の庶民の私が、まさかこんな超セレブ校に転校できるなんて夢にも思わなかったなぁ。
成績トップの特待生にスカウトされて、本当によかった! お財布がピンチな我が家のために、学費タダは絶対に死守しなきゃ……!
だけど、こんなお城みたいな学園で生き残るための絶対ルールがある。
それは――空気のモブになって、とにかく目立たないこと!
「おいこむぎ、そんな眩しい場所に行くなら、完璧に変装して存在感を消せよ? お前は無防備すぎるんだからな」
地元の幼馴染の男の子に、すっごく真面目な顔で心配されたのを思い出す。
だから私は、その忠告通りに、毎朝鏡の前で『地味子変装』をすることにしたんだ。
重くて分厚い前髪で、眉毛をきっちり隠す。
小さなお顔に全然合っていない、大きめの黒縁眼鏡をかける。
スカートはひざ下まできっちり伸ばす。
よし、これで完璧!
緊張で手をガタガタ震わせながら、教室のドアを開けると――。
「――おいおい、マジかよ。あれが噂の特例の転校生?」
「なんだよ、随分と野暮ったいのが来たなー!」
「確かに頭良さそうな顔してるわ! ガリ勉の見本みたい!」
教室に入った瞬間、クラスの男子たちからクスクスと意地悪そうに笑われちゃった。
う、うぅ。転校初日からすっごく言われてる……!
トゲトゲした言葉が痛くて、私はきゅっとカーディガンの裾を握りしめた。
でも、言葉のトゲを無理やり気にしないように、頭の中で唱える。
私は空気、私は綿毛……。目立たないモブになれてるなら、これでいいんだ……!
「花咲「はなさき」こむぎです。よろしくお願いします」
できるだけ小さな声でお辞儀をして、私は指定された席に座った。
男子たちの視線はチラチラ刺さるけれど、気にしないように机だけを見つめる。
朝のホームルームが終わった、その時。
「花咲。お前、成績が良すぎるから、さっそく生徒会から呼び出しが来ている。放課後、一番上の階の生徒会室へ行くように」
えええっ!? 初日から生徒会に呼び出し!?
先生の言葉に、教室中がバッと一斉に私を振り返った!
「おい、初日から生徒会に目を付けられるなんて、あいつ終わったな……」
「あの7人の王子たちに逆らえる奴なんていないのに、可哀想に」
みんなの囁き声を聞きながら、私の心臓はドキンと嫌な音を立てて跳ね上がっていた。
学園のトップで、頂点に君臨する7人のVIPが集まる場所、生徒会。
私みたいな庶民に、一体何の用だろう……?
放課後。
私は借りてきた猫みたいに小さくなって、一番上の階の生徒会室へ向かった。
お城の扉みたいな、重くて豪華な扉をそっと開けると――。
部屋の中に漂ういい香りと一緒に、息を呑むほどカッコいい7人の視線が突き刺さった。
「遅いぞ、庶民」
高級なソファに深く腰掛けて、偉そうに足を組んでいたのは、如月「きさらぎ」司「つかさ」くん。
触れたら切れそうなほど冷たい顔をした男の子だ。
司くんは私をチラッと冷たく見て、興味なさそうに鼻で笑った。
「……チッ。それが噂の特待生か? 随分と冴えないタヌキが来たね。使えないなら即クビだ。ここはお前みたいな地味な人間が足を踏み入れていい場所じゃない」
そっか……。私みたいに冴えない子が、こんな素敵な部屋に来ちゃダメだったよね……。私のせいで、みんなを不快にさせちゃったのかな……。
あまりの怖さに、私はただ困ったように苦笑いすることしかできなかった。
神楽「かぐら」怜「れい」くんが冷たい眼鏡の奥から厳しい視線をよこし、一ノ瀬「いちのせ」蓮「れん」くんが、
「僕の美意識にはこれっぽっちも引っかからないな」
と気だるげに吐き捨てる。
クビなんて絶対ダメ……! ここにいさせてほしい……! 特待生を取り消されたら、お家のピンチが大変なことになっちゃう……! どんくさい私だけど、できることならなんでもがんばるから……!
「――っ、何でもするので、ここにいさせてください!」
私はぎゅっと拳を握りしめて、頭を深く下げて大声を張り上げた。
「書類の整理でも、床のお掃除でも、お茶汲みでも、何でもやります! だから、どうかクビにしないで、ここに置いてください!」
必死に雑用を快く受け取ろうとする私に、部屋の空気が一瞬だけ固まる。
「わあ、やる気満々だね!」
桃瀬「ももせ」みる君が目をキラキラさせる。
阿修羅「あしゅら」景「けい」くんが、
「ハッ、面白い雑用係じゃねえか」
とニヤリと笑い、神代「かみしろ」刹那「せつな」くんが、
「おやおや、いい心がけですね」
と目が笑っていない笑顔を浮かべた。
「……フン、そこまで言うなら働け。幽、そのタヌキに余っている書類を入力させろ」
司くんの冷たい命令に、私は「ありがとうございます!」と元気に返事をして、部屋のいちばん隅っこにある、薄暗いデスクへと向かった。
パソコンの前に座っているのは、月読「つくよみ」幽「ゆう」くん。
めったに部屋から出ないっていう噂の男の子だ。
「……ん」
幽くんは、私が隣の席に恐る恐る座っても、視線を画面の文字から一切外さない。
私はペコリとお辞儀をして、手元の書類をパソコンに入力し始めた。
(カタカタカタ……)
よし、がんばって入力するぞー! 早く役に立ちたいな!
夢中で作業を進めていた、その時だった。
あ、あれ……っ!?
私のふわふわしたカーディガンの袖口が、机の端にあった書類の束に引っかかっちゃった!
パサッ――!
派手な音を立てて、白い紙が床一面にバラバラと散らばっていく。
「あ、アワワ、すみません……っ!」
慌てて拾おうとして、勢いよく下を向いて屈んだ――その瞬間。
ガツンっ!
「痛っ……!?」
机の角に、私の大きな黒縁眼鏡が強く当たっちゃった。
その衝撃で、眼鏡がずるりと顔から滑り落ちて、床へと転がっていく。
「あっ……」
視界を遮っていた分厚いレンズが消えて、急に周りの景色がパッと明るくなった。
落ちた眼鏡を拾おうとして、私が反射的に顔を上げた――その時だった。
「……おい」
隣から、かすれた低い声が聞こえた。
見上げると、それまで画面しか見ていなかったはずの幽くんが、ノートパソコンをバタン!って激しく閉じていた。
指示された書類を入力していただけなのに、信じられないものを見るような目で、私のことをじーーーっと見つめてる。
え……? な、なに……? どうしてそんなに見つめるの……?
眼鏡が外れて、重い前髪が左右に綺麗に分かれちゃったせいで、私の『本当の姿』が完全に丸見えになっていた。
マシュマロみたいに真っ白で柔らかそうな肌。
こぼれ落ちそうなほど大きくて潤んだ、琥珀色の瞳。
ぽってりとした、甘い桜の蜜みたいな唇。
自分で気づいていないだけで、そこにあったのは、見る人すべての理性を奪っちゃうような、息を呑むほど美しい『国宝級の美貌』だった。
「……え」
幽くんは、手に持っていたペンをポロリと床に落とした。
いつも無表情だった彼の顔が、耳の付け根まで一瞬で、真っ赤に染まっていく。
外れた眼鏡の奥の顔を、穴が開くほど見つめられたまま、その薄い唇から、ぽつり、とかすれた声が漏れた。
「……かわいい」
「――えっ!? だ、だだだ、だれがですか!?」
な、なんなのこの人――!? 急にどうしちゃったの!?
あまりの至近距離で見つめられて、心臓が爆発しそうになる。
私が不思議そうに首を傾げると、幽くんはカハッと息を詰まらせて、自分の口元を片手で強く押さえた。
私は恥ずかしさでパニックになりながら、慌てて眼鏡を掴んで顔に押し付けた。
前髪をいつものように重くセットすると、一瞬でさっきまでの「地味な庶民」に元通り。
遠くのソファからは、
「おい、幽、急にどうしたんだ?」
って、司くんたちの呑気な声が聞こえる。彼らはまだ、私の素顔にまったく気づいていないみたい。
だけど、幽くんの心臓は、部屋中に聞こえそうなほどの爆音でドクドクと警報を鳴らしていた。
眼鏡の奥に隠された私の顔を、飢えたような熱い目で見つめたまま、彼はガタガタと震える手で、私の腕を強引に掴んできた。
グイッ――!
「っ……!?」
引っ張られた勢いで、幽くんの顔がすぐ目の前に迫る。
綺麗な瞳が、まっすぐ私を捕らえて離さない。
(ダメだ。絶対に、他の奴らに見せるわけにいかない。あいつらが見たら、一瞬で狂う……!)
「花咲……こむぎ。明日から、僕の隣、絶対固定」
「えええっ!? わ、私、何かまた怒らせちゃうような大失敗を……!?」
「バカ。違う……っ。……お前が、無防備で可愛すぎるのが悪い」
幽くんは、私の耳元で、甘く低く、独占欲を爆発させるように囁いた。
「お前のその顔……僕以外の男に、1秒でも見せたら流石に許さないから」
「――っ……!?」
他人に興味がなかったはずの天才ハッカーの、突然の強烈な、甘すぎる急接近。
ここから、こむぎの「無自覚な美貌」を巡る、大きな恋の争奪戦へと変化していくのだった――。

作者メッセージ

新しく逆ハー系の小説出してみました!

2026/08/05 23:56

ふる003
ID:≫ 10.YZDmJ7U7Dk
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