弥生
「うっわぁ……。ボク、配達先連絡と後処理の担当やんな?
なんで子守りから介護まで全部やっとんのや……」
配送センターのラウンジで、小森 弥生はオレンジ色の
マッシュヘアをかき上げ、深い溜息をついた。
宙に浮きながら、右手では抹茶オレを飲み、左手では巨大なスケジュール帳を操っている。
目の前は、まさに[漢字]地獄絵図[/漢字][ふりがな]カオス[/ふりがな]だった。
ブラック
「弥生時代さーん! お腹すいたー! 心臓ゼリーたべたぁーい!」
弥生
「ブラック! 誰が弥生時代や! ゼリーは冷蔵庫にあるやつにしとき!」
6歳のブラックが弥生の足にしがみつき、ブンブンと振り回されている。
星乃
「弥生さん。ルカくんがまた気絶しましたわ。放電しすぎてスマホが爆発しそうですの」
麻・星乃が優雅に報告してくるが、その横では速水 ルカが白目を剥いてデスクに突っ伏し、
周囲にバチバチと青白い火花を散らしている。
弥生
「危なっ! ルカ、それ絶縁シートの上で寝ぇ言うたやろ! センター焦げるわ!」
弥生は空中を泳ぐように移動し、ルカの体を絶縁マットへ放り投げた。
乃ノ
「弥生さん、みてぇ。しろちゃん、お腹空いて弥生さんの
カバン食べてる。……あちゃ、やりすぎ?」
弥生
「乃ノちゃん! それボクの予備の伝票入っとんねん! やめさせーや!」
10歳児の無表情なイタズラに、弥生は泣きそうになりながらカバンを奪い返す。
そこへ、神貴 尽が背後から忍び寄る。
尽
「ねぇ弥生さん、ゲームしよ。負けたら脳を溶かしてあげるね。
あ、手が麻痺してるから、ボタン押して?」
弥生
「押せるか! 尽、あんたは大人しく寝とけ! 脳を溶かすな、自分の腕を治せ!」
さらに、部屋の隅では柚柚 咲良が不安そうにカッターをカチカチ鳴らしている。
咲良
「弥生さん……僕のこと、嫌いになった……? 汚いもの、散らかしたから……?」
弥生
「嫌いになってへん! 咲良、あんたは透過してんと掃除機持って! 物理的に掃除して!」
最後は、最強の神谷 ゆめがトドメを刺しに来た。
やめ
「弥生さーん! 特大ケーキ焼けたよぉ! 食べるまで時間停止しとくね!」
弥生
「待て待て待て! 時間止められたらボク、
永遠に仕事終わらへんやろ! ケーキは後や!」
結局、弥生は空中を右往左往しながら、ブラックに飯を食わせ、
ルカに毛布をかけ、星乃にお茶を淹れ、咲良の頭を撫で、
尽の麻痺した手をマッサージし、乃ノのぬいぐるみを修理し、ゆめのケーキを切り分けた。
弥生
「……はぁ。ボク、便利屋ちゃうねんぞ」
全員が満足して寝静まった深夜。
弥生は一人、静かになったセンターで抹茶オレの二缶目を開けた。
弥生
「……まぁ、あんたらの後処理すんのが、ボクの一番大事な仕事やしな」
オレンジ色の瞳を少しだけ細めて、弥生は空中を漂いながら、
明日届く「黒い伝票」を優しく整理するのだった。