夢だというのは、すぐに理解できた。
天界ではないどこかで私は布団の上に横たわっていて、そんな私を静かに見つめる天使の男がいた。髪は不器用にボサついていて、伏せ気味の瞳で私を見つめていた。
「……誰ですか」
私のその問いに、男は答えなかった。
「まだ動かないでください」
現実では、この人は治癒魔法を扱う看護天使なのだろうか。眠った状態の無意識領域に、現実で私を看病する彼が入り込んでいるのだろうか。私が眠っているのは、病院なのだろうか。
そんなことを考えていると、意識がふわふわとしてきた。
「……もう行ってしまわれるのですね」
男は言った。
「さようなら、また会いましょう」
生ぬるい雫がおちてきて、それで目を覚ました。病院ではなく、自宅の布団の上だった。
枕元でメーディアが泣いていた。
「ごめんなさい……僕のせいで……」
「……メーディア」
私が倒れるまでの記憶はまばらだった。なんとか悪獣を倒し、区の安全を確認した後、なんとか家に帰って……飢えた吸血天使に噛まれた。
「僕なんかのこと匿ってるせいで……」
ごめんなさい、ごめんなさい、そう言い続ける黒色の天使は、涙を止めることもなく、ただただ謝罪の言葉を述べ続けるだけだった。
心臓を強く握られたような気がした。
「泣くな……泣かないでくれ……」
600年生きて、初めて感じた痛みだった。
「……なんでだか私まで、おかしくなってしまうんだ」
目が熱い。
おかしいのは今だけじゃなくて、メーディアと出会ってからずっとそうだ。調子が心地よく狂う感覚、胸のうらがわの奥深くが数センチ浮遊する感覚。
「……なんで、貴方が泣くのですか……」
目を赤く腫らしたメーディアの声は、震えていた。泣いているから……ではなさそうだった。
「なんで笑うんだ……」
ふっと軽くなった感じがする。
「……なんでもありません」
もう少し、まで言って、メーディアは言葉を止めた。
「いや、“これからは”、ちゃんと自分のことを愛してあげてもいいのかな、って」
窓から差し込む朝の斜陽が子供たちの手にかかる。両方とも、絶えず血の廻る生きた手だ。
私は決意を口にした天使に言った。
「ああ。ずっとそうしてやるべきだったし、これからも自分にそうしてやっていけ」
天界ではないどこかで私は布団の上に横たわっていて、そんな私を静かに見つめる天使の男がいた。髪は不器用にボサついていて、伏せ気味の瞳で私を見つめていた。
「……誰ですか」
私のその問いに、男は答えなかった。
「まだ動かないでください」
現実では、この人は治癒魔法を扱う看護天使なのだろうか。眠った状態の無意識領域に、現実で私を看病する彼が入り込んでいるのだろうか。私が眠っているのは、病院なのだろうか。
そんなことを考えていると、意識がふわふわとしてきた。
「……もう行ってしまわれるのですね」
男は言った。
「さようなら、また会いましょう」
生ぬるい雫がおちてきて、それで目を覚ました。病院ではなく、自宅の布団の上だった。
枕元でメーディアが泣いていた。
「ごめんなさい……僕のせいで……」
「……メーディア」
私が倒れるまでの記憶はまばらだった。なんとか悪獣を倒し、区の安全を確認した後、なんとか家に帰って……飢えた吸血天使に噛まれた。
「僕なんかのこと匿ってるせいで……」
ごめんなさい、ごめんなさい、そう言い続ける黒色の天使は、涙を止めることもなく、ただただ謝罪の言葉を述べ続けるだけだった。
心臓を強く握られたような気がした。
「泣くな……泣かないでくれ……」
600年生きて、初めて感じた痛みだった。
「……なんでだか私まで、おかしくなってしまうんだ」
目が熱い。
おかしいのは今だけじゃなくて、メーディアと出会ってからずっとそうだ。調子が心地よく狂う感覚、胸のうらがわの奥深くが数センチ浮遊する感覚。
「……なんで、貴方が泣くのですか……」
目を赤く腫らしたメーディアの声は、震えていた。泣いているから……ではなさそうだった。
「なんで笑うんだ……」
ふっと軽くなった感じがする。
「……なんでもありません」
もう少し、まで言って、メーディアは言葉を止めた。
「いや、“これからは”、ちゃんと自分のことを愛してあげてもいいのかな、って」
窓から差し込む朝の斜陽が子供たちの手にかかる。両方とも、絶えず血の廻る生きた手だ。
私は決意を口にした天使に言った。
「ああ。ずっとそうしてやるべきだったし、これからも自分にそうしてやっていけ」