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吸血天使は牙を折る。

#13

吸血天使は帰りを待つ。

 あの方が家を出て、僕は内心ほっとした。
 もしも何かがきっかけになって、僕の中の吸血鬼が暴走してしまったら。そう思うと、突然伸びた牙を折ってしまいたいどころか、この首も落としてしまいたくなる。
 僕は日光を浴びても、吸血鬼と違って死ぬことができない。

 天使の頃から母には迷惑ばっかりかけてきた。うまく魔法が使えなくて成績は良くない、かと思えば友達に大火傷を負わせて校長室に呼ばれる。唯一使えた火炎魔法も、その1件で封印しなければならなかった。
 暗い家で、僕がどれだけ悪い子か、母の独り言で分かっていた。
 どうやったってうまくできなくて、失敗ばっかりして、友達の代わりにいじめっ子が周りにいるようになって、でもお母さんは僕のできなさ具合しか見てくれなくて、
……学校の時間、ホームレス街で過ごすようになった。
 そこの人たちは優しくて、僕ができない子なのも気にせず、学校に行ってるはずの時間なのも気にせず、話をしてくれた。
 僕は、特に仲のいい人というのは決めずに、いろんな人と話をした。
 ある日、黒いぼろきれを着たおじいさんと話をした。誰もいない路地にいた。不思議な空気を纏った人だった。
「一緒に食事をしようか……」
 おじいさんはそう言った。
 そう言ったものの、僕が隣でお弁当を広げても、自分の食べ物を出したり、せびったりはしなかった。ただ、隣で僕を見ているだけ。
「おじいさんは、何か食べないの?」
「まだ食べないよ。君が全部食べ終わってから、たんと頂くとするよ」
 僕がお弁当を食べ終わると、おじいさんの手元を見た。
「何を食べるの?」
 すると、おじいさんの手が僕の頭を捉えた。口の中から、大きな牙がのぞいた。
「君の血を、少々頂くとするよ……」

 目を覚ますと、朝だった。時計を見ると、正確には真昼を過ぎてしまっていた。全くもって朝じゃない。
 あの方はまだ帰っていないみたい。
 胃が空っぽ。
 天使の食べ物で空腹を紛らわせることはできないかな。
 食糧庫に入ると、あの頃の僕の好物だったチーズがいくつか積んであった。僕はその中から2つ取って、包装を剥がして食べた。味は、好きなやつじゃなかったけど美味しい。
 喉を通した瞬間から、その異物感が始まった。それが胃に落ちた瞬間、本能が存在自体を拒んだ。
 口から零すように塊を吐き出す。
 無理だ。
 消化できない。完全に異物とみなされている。
 具合が悪い……。
 お腹がすいた。けれど食べれるものはない。
 ふと、拾ってもらった翌日を思い出す。
 またあんなことになってしまったら、僕はどうしよう……。

2025/12/03 22:27

◇Alice◇
ID:≫ 6.HwTpWbghe22
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