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吸血天使は牙を折る。

#9

聖天使は仲間を得る。

「アデナく~ん?」
 私は動けずにいた。
 レルマ様が、メーディアの着ていた服を手に持って、私を見つめている。
 蛇に睨まれた蛙とはまさにこのことなのかもしれない。
「“魔気バリア”の技術なら褒めてあげられるけど~……衣服は洗濯しても魔気が少し残るって、もしかして知らなかった?」
 ……そういえば、天使養成所の中等学年で、そんなことを言われたような言われなかったような。
「忘れてました……」
 覚悟はしなければならない。
 掟を破ってしまったのだから、それにどのような裏面があろうと、私に罰が下るのは当然のことだろう。
「……で、」
 しかしレルマ様の反応はやや変な方向を向いていた。
「これ以降、どう隠蔽するつもりだったの~っ?」
「……はい?」
 目キラッキラな上、うっきうき、わっくわくな返答に、身体中に麻酔のようにまわっていた緊張がふっとなくなった。
「あと、この服の持ち主の子にも会いたいな~っ♪」
 私が言うのもなんだが、隠蔽をしていた天使に対する聖天使のあるべき態度じゃないよな、これ。
 私は冷静になり直してから訊いた。
「……他に何か、気づかれそうなところはありましたか」
「これ以外?そもそもの存在くらいじゃない?もうこれさえなければ完璧だと思うよ~!」
 そんなレルマ様に、思わず尋ねてしまった。
「悪いこと、だとか思わないんですか……?」
「う~んとね、まぁ思うけど、可愛いアデナくんの隠し事なら喜んで手伝うよっ!」
 この人、魔力も強いけど、メンタルと自信も必要以上に強いんだよな……。

「私の魔法は“創造”。自分の分身以外だったらなんでも作り出せるの!あとは“譲渡”、オーブに自分の持つ魔法を包んで人にあげることができる魔法……なんだけど、今は誰にも譲渡できないんだ!“創造”の力は天界中に知れ渡ってるから、聖天使ともあろうものが魔法を失うなんてことほぼないからね~、怪しまれちゃう!」
 レルマ様が話す。
「ま、どんどん頼ってってこと!」
 そう誇らしげに胸に手を当てる。
「……はい」
「じゃ、私帰るね~♪」
 ばいば~い、と手を振られた。私が振り返すと――。
「……あと、治癒魔法は傷跡が残る程度に、ね?」
 耳元でそっとささやいた。
「え――」
「それじゃっ!」
 戸惑う私を待つことなく、レルマ様は行ってしまった。
 最後の言葉――あれは、なんだったんだ?

2025/10/07 22:39

◇Alice◇
ID:≫ 6.HwTpWbghe22
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