高く、高く振り上げた槍を、私は何故振り下ろせない?
手が震える。
メーディアはまだ気づいていない。殺るなら、今しかないのに。
なのに。
何故躊躇うのだ、私は。
振り下ろせ。刺せ。早く。
「……⁉」
私の足元で、メーディアが真っ赤な目を見開いてこちらを見た。恐怖で怯えていた。
気づかれてしまった――。
焦る自分の中で安心している自分を、見て見ぬふりをしていた。
「……ごめ、なさい」
少し血のついたままの口から、か細い声が漏れた。
「ごめんなさい、ごめんなさい……勝手に、襲っちゃって、ごめんなさい……」
泣いている。
きっと、さっきのあれはただ“吸血本能”であり、メーディアは本当は優しい子なんだろうな。
こんなとこで殺さずに、生かしておいてあげたい――。
……あぁ。駄目だ。私は何を変なことを考えているんだ。私は聖天使なのだ。この天界に住むすべての天使を守る責務がある。情けをかけて助けてしまえば、これからたくさんの天使が襲われてしまうのだから、今ここで殺さねばいけないのだ。
手の震えが強くなり、槍の装飾が音を立てて鳴った。この震えを貧血のせいにしてしまいたいのだけれど。
「……僕を」
メーディアがまた、ぼそりと言った。
「僕を、また誰かを怖がらせる前に、殺してください……っ」
本気の目だ。
メーディアは本気で、自らの死を願っているのか……。
……もしも私が、私の意思を尊重するならば、私は聖天使の誓いを破った者として処刑されるだろう。
でも、私は……。
掲げていた槍をそっと下ろし、しゃがんで目線をメーディアに合わせた。
メーディアの目の周りは濡れてしまっていた。私はなお零れ続ける涙を親指で拭ってやった。
「……なんで、殺してくれないんですか……?」
自分の死を切実に願う吸血天使は、“それ”を救いと信じた。
そんな“元”天使の涙を拭いながら私は言った。
「死にたい奴に『生きていてほしい』って思うことは、罪なのか――?」
手が震える。
メーディアはまだ気づいていない。殺るなら、今しかないのに。
なのに。
何故躊躇うのだ、私は。
振り下ろせ。刺せ。早く。
「……⁉」
私の足元で、メーディアが真っ赤な目を見開いてこちらを見た。恐怖で怯えていた。
気づかれてしまった――。
焦る自分の中で安心している自分を、見て見ぬふりをしていた。
「……ごめ、なさい」
少し血のついたままの口から、か細い声が漏れた。
「ごめんなさい、ごめんなさい……勝手に、襲っちゃって、ごめんなさい……」
泣いている。
きっと、さっきのあれはただ“吸血本能”であり、メーディアは本当は優しい子なんだろうな。
こんなとこで殺さずに、生かしておいてあげたい――。
……あぁ。駄目だ。私は何を変なことを考えているんだ。私は聖天使なのだ。この天界に住むすべての天使を守る責務がある。情けをかけて助けてしまえば、これからたくさんの天使が襲われてしまうのだから、今ここで殺さねばいけないのだ。
手の震えが強くなり、槍の装飾が音を立てて鳴った。この震えを貧血のせいにしてしまいたいのだけれど。
「……僕を」
メーディアがまた、ぼそりと言った。
「僕を、また誰かを怖がらせる前に、殺してください……っ」
本気の目だ。
メーディアは本気で、自らの死を願っているのか……。
……もしも私が、私の意思を尊重するならば、私は聖天使の誓いを破った者として処刑されるだろう。
でも、私は……。
掲げていた槍をそっと下ろし、しゃがんで目線をメーディアに合わせた。
メーディアの目の周りは濡れてしまっていた。私はなお零れ続ける涙を親指で拭ってやった。
「……なんで、殺してくれないんですか……?」
自分の死を切実に願う吸血天使は、“それ”を救いと信じた。
そんな“元”天使の涙を拭いながら私は言った。
「死にたい奴に『生きていてほしい』って思うことは、罪なのか――?」