メーディアの鋭い眼光は、飢えた獰猛な獣のそれと大差ないものだった。
いつぶりだろうか、何かに怖気づいたのは。遠い昔、いつからか吸血天使が忌み嫌われるようになったのは、この恐ろしい瞳と、放つ威圧感のせいなのかもしれない。
涎が絶えず顎を伝って流れ続けている。いつ襲われてもおかしくない状況なのだが、身体がまったく動かない。自分の息までも荒く、速くなっていく。
牙を剥いたメーディアはもはや正気じゃなかった。
「やめろ……っ‼」
必死の抵抗も空しく、いつの間にかメーディアの手で押さえ込まれてしまっていた。声も出なくて、指先で触れれば壊れてしまいそうなほど怯えていた。
八重歯が私に向かって突き付けられる。
力量じゃ敵わないとわかっているのに、身体も動かないのに、必死に押し返そうとして、でも何もできない。魔力だったらメーディアを圧倒できるはずなのだが――できなかった。
呼吸がおかしくなっていく。手が震えている。
メーディアが口を大きく開いた。
恐怖で目を瞑る前に、首元に牙が食い込んで、灼熱の感覚が走った。
……そりゃあ吸血なのだから、皮膚と血管を突き破ってしまわなければいけないのは分かっていた。しかし、それは想像を絶する痛み、恐怖、いざとなればどうもできなかった。
「うぁ……っ‼」
堪えきれない声が喉の奥から漏れ出て、涙が零れた。顔が歪んだ。
不快だ。
貧血や恐怖で酔いのような悪心がある上に、首の傷を舐める舌の感覚や伝う涎の生温さで今にも吐きそうになっている。
ほんの1分が1時間のように感じた。
吸血が終わり手の甲で口を拭うメーディアの前で、私はめまいを感じながら下を向いてえずいていた。
無責任に拾ってしまったことを、激しく後悔した。
もし[漢字]こいつ[/漢字][ふりがな]・・・[/ふりがな]を生かしていたら、命にはかかわらないものの体調不良者が増加してしまう。身をもって分かった。
メーディアには申し訳ないが……私は仮にも聖天使で、天使たちを守らなければいけない。
得体の知れないイキモノを拾うなんて、身勝手なことをしてしまった。
立ち上がり、長年共に戦ってきた槍を取って戻った。メーディアは座ったままで、座り込んだ地面を見ていた。
「……すまない」
小さな声で吐き捨て、私は槍を振り上げた。
いつぶりだろうか、何かに怖気づいたのは。遠い昔、いつからか吸血天使が忌み嫌われるようになったのは、この恐ろしい瞳と、放つ威圧感のせいなのかもしれない。
涎が絶えず顎を伝って流れ続けている。いつ襲われてもおかしくない状況なのだが、身体がまったく動かない。自分の息までも荒く、速くなっていく。
牙を剥いたメーディアはもはや正気じゃなかった。
「やめろ……っ‼」
必死の抵抗も空しく、いつの間にかメーディアの手で押さえ込まれてしまっていた。声も出なくて、指先で触れれば壊れてしまいそうなほど怯えていた。
八重歯が私に向かって突き付けられる。
力量じゃ敵わないとわかっているのに、身体も動かないのに、必死に押し返そうとして、でも何もできない。魔力だったらメーディアを圧倒できるはずなのだが――できなかった。
呼吸がおかしくなっていく。手が震えている。
メーディアが口を大きく開いた。
恐怖で目を瞑る前に、首元に牙が食い込んで、灼熱の感覚が走った。
……そりゃあ吸血なのだから、皮膚と血管を突き破ってしまわなければいけないのは分かっていた。しかし、それは想像を絶する痛み、恐怖、いざとなればどうもできなかった。
「うぁ……っ‼」
堪えきれない声が喉の奥から漏れ出て、涙が零れた。顔が歪んだ。
不快だ。
貧血や恐怖で酔いのような悪心がある上に、首の傷を舐める舌の感覚や伝う涎の生温さで今にも吐きそうになっている。
ほんの1分が1時間のように感じた。
吸血が終わり手の甲で口を拭うメーディアの前で、私はめまいを感じながら下を向いてえずいていた。
無責任に拾ってしまったことを、激しく後悔した。
もし[漢字]こいつ[/漢字][ふりがな]・・・[/ふりがな]を生かしていたら、命にはかかわらないものの体調不良者が増加してしまう。身をもって分かった。
メーディアには申し訳ないが……私は仮にも聖天使で、天使たちを守らなければいけない。
得体の知れないイキモノを拾うなんて、身勝手なことをしてしまった。
立ち上がり、長年共に戦ってきた槍を取って戻った。メーディアは座ったままで、座り込んだ地面を見ていた。
「……すまない」
小さな声で吐き捨て、私は槍を振り上げた。