「どーしたのアデナくん、おうちに突然“魔気バリア”加工なんかしちゃって~」
私の家の前でレルマ様が言った。
「……聖天使の方は、皆さん施されているので」
「そっか~、流行りに乗りたかったって感じ?」
「まぁ、そういうことです」
レルマ様の、こういう騙されやすい辺り、すごく心配になる。いつかとんでもない奴に騙されてしまうのではないかと。
(吸血天使を匿ってる聖天使に騙されてる時点でアウトな気がするのだが……)
私は昨日、ゴミ捨て場を出てすぐ、自宅に“魔気バリア”の加工を施した。吸血天使の魔気……言い改めると、“真っ黒いもの”は、聖天使にはいともたやすく感じ取れてしまうからだ。
吸血天使の子供は、家で治癒を続けると、かなり回復した。
子供は今朝、自らをメーディアと名乗った。見かけであれば私と同い年か少し年上くらいである。しかしそれ以外のことは何も分からない。まだ心を開いていないのだろう。
「じゃね、アデナくん!」
「……はい、それでは」
手を無邪気に大きく振るレルマ様を見送った後に、私は家に入った。
メーディアは私を無言で迎えた。
伸び放題でボサボサだった髪は洗ったら多少は見栄えが良くなったし、服もサイズが合わず仕舞っていたものを着せたらいくらか普通の子供らしくなった。
けれど、黒い髪と羽、赤い目と輪は明らかに“普通”の天使の子ではない。
違和感を覚えながらも、それでも私はメーディアの状態を少しでも好くしようと努めた。
メーディアの目から警戒の色は消えない。
「……大丈夫か?」
何も返事はない。
今朝方、名前を聞いて、ぼそりと「……メーディア」と答えてから、何も話してくれない。
「私のことは信用していいんだからな」
努めて声色を優しくして言ってみた。
メーディアは私を上目に見た。
唇が微かに動いた、まるで何かを話そうとするみたいに。
……と、勘違いしていた。
メーディアは、理性を失った目を大きく鋭く開き、牙を剥き、口から筋のように涎を垂らして、私を見つめているのだった。
私の家の前でレルマ様が言った。
「……聖天使の方は、皆さん施されているので」
「そっか~、流行りに乗りたかったって感じ?」
「まぁ、そういうことです」
レルマ様の、こういう騙されやすい辺り、すごく心配になる。いつかとんでもない奴に騙されてしまうのではないかと。
(吸血天使を匿ってる聖天使に騙されてる時点でアウトな気がするのだが……)
私は昨日、ゴミ捨て場を出てすぐ、自宅に“魔気バリア”の加工を施した。吸血天使の魔気……言い改めると、“真っ黒いもの”は、聖天使にはいともたやすく感じ取れてしまうからだ。
吸血天使の子供は、家で治癒を続けると、かなり回復した。
子供は今朝、自らをメーディアと名乗った。見かけであれば私と同い年か少し年上くらいである。しかしそれ以外のことは何も分からない。まだ心を開いていないのだろう。
「じゃね、アデナくん!」
「……はい、それでは」
手を無邪気に大きく振るレルマ様を見送った後に、私は家に入った。
メーディアは私を無言で迎えた。
伸び放題でボサボサだった髪は洗ったら多少は見栄えが良くなったし、服もサイズが合わず仕舞っていたものを着せたらいくらか普通の子供らしくなった。
けれど、黒い髪と羽、赤い目と輪は明らかに“普通”の天使の子ではない。
違和感を覚えながらも、それでも私はメーディアの状態を少しでも好くしようと努めた。
メーディアの目から警戒の色は消えない。
「……大丈夫か?」
何も返事はない。
今朝方、名前を聞いて、ぼそりと「……メーディア」と答えてから、何も話してくれない。
「私のことは信用していいんだからな」
努めて声色を優しくして言ってみた。
メーディアは私を上目に見た。
唇が微かに動いた、まるで何かを話そうとするみたいに。
……と、勘違いしていた。
メーディアは、理性を失った目を大きく鋭く開き、牙を剥き、口から筋のように涎を垂らして、私を見つめているのだった。