「……ふぅ」
お風呂上がりの濡れた髪をタオルで拭きながら、お風呂場の1階から部屋のある2階まで上って、ひと息ついた。
5階建ての無駄に大きなこのお屋敷は、おじいちゃんのおじいちゃんが増築を繰り返してこうなった。研究好きの一家だから、研究スペースをどんどん広くする増築にはお金をかけられた。
広いのに、居住スペースは1割とちょっとくらいで、クラスのみんな――それこそ周ちゃんや杏奈ちゃんがそうだ――のおうちみたいなブランド品コレクションルームだとか、お客さんのお部屋だとか、お金持ちらしい設備はほぼない。外観だけだ、立派で豪華なのは。
元々居住スペースしかなかったこの民家は森にあるもんだから、まず横に土地を買って増築し、限界がくると縦に3階分伸びた。
そんな中で暮らしてるわけだから、「普通のお金持ち」とはかけ離れた家、環境。どっちかというと家っぽいところはボロくて、だいぶ昔の民家。友達なんて呼べないし、そもそも呼ぶ友達もいない。
……で、そんな誰も呼べないボロ民家に、ついでにわたしの部屋に、知らない男の子がいる。
「だれ……?」
そう零すわたしに、男の子は「おかえり、どうだった?」と訊いてきた。
「え、いやいやいやいや、なんのこと?」
「なんのこと、って……? お母さんから聞けたの? って」
男の子はぽかんと訊く。
「だから、なんで? あなたは誰なの? なんでわたしの部屋にいるの?」
「変な冗談やめてよ……」
わたしと男の子は見つめあった。
「……まさか」
すこしの沈黙の後、男の子が言った。
「忘れちゃったの……?」
「あなたのこと、わたし知らないもん。忘れてるもなにも……」
……あれ?
わたし、なにか忘れてる。
この男の子のことだけじゃない……。
お風呂上がりの濡れた髪をタオルで拭きながら、お風呂場の1階から部屋のある2階まで上って、ひと息ついた。
5階建ての無駄に大きなこのお屋敷は、おじいちゃんのおじいちゃんが増築を繰り返してこうなった。研究好きの一家だから、研究スペースをどんどん広くする増築にはお金をかけられた。
広いのに、居住スペースは1割とちょっとくらいで、クラスのみんな――それこそ周ちゃんや杏奈ちゃんがそうだ――のおうちみたいなブランド品コレクションルームだとか、お客さんのお部屋だとか、お金持ちらしい設備はほぼない。外観だけだ、立派で豪華なのは。
元々居住スペースしかなかったこの民家は森にあるもんだから、まず横に土地を買って増築し、限界がくると縦に3階分伸びた。
そんな中で暮らしてるわけだから、「普通のお金持ち」とはかけ離れた家、環境。どっちかというと家っぽいところはボロくて、だいぶ昔の民家。友達なんて呼べないし、そもそも呼ぶ友達もいない。
……で、そんな誰も呼べないボロ民家に、ついでにわたしの部屋に、知らない男の子がいる。
「だれ……?」
そう零すわたしに、男の子は「おかえり、どうだった?」と訊いてきた。
「え、いやいやいやいや、なんのこと?」
「なんのこと、って……? お母さんから聞けたの? って」
男の子はぽかんと訊く。
「だから、なんで? あなたは誰なの? なんでわたしの部屋にいるの?」
「変な冗談やめてよ……」
わたしと男の子は見つめあった。
「……まさか」
すこしの沈黙の後、男の子が言った。
「忘れちゃったの……?」
「あなたのこと、わたし知らないもん。忘れてるもなにも……」
……あれ?
わたし、なにか忘れてる。
この男の子のことだけじゃない……。