息が続かないのは、呼吸の才能がないから。
足が動かないのは、走る才能がないから――。
ずっと、走って、走って、偶然たどり着いた洋館は、大きかった。
まるでお城みたいだわ。
私はくらくらする頭をしっかり首で支えて、それを見上げた。
道中、ひったくりに遭って、パンのかけらもなけなしの小銭も鞄ごと取られた。
はぁ、おなかすいた……。
私に、おなかがすいてもあのひったくりを捕まえられるくらいの才能があればよかったのに。それか、食料を生み出せる魔法の才能でもいい。
でも、才能さえあれば、こんなとこ来なかったのよね、きっと。
私は才能がないから、愛してもらえなかった。愛でさえ、才能のいいなり。
もう、嫌だわ。こんな世界。
……あぁ。もう頭がぼうっとしてきた。空腹すぎて腹痛がする。
この家の方に、食料を恵んでもらえないかしら。
もうまともに動かない腕を持ち上げて、どんどん、と大きな木の戸をたたく。
[小文字]「は~い」[/小文字]
女性の声がした。
その時になって、突然不安に駆られた。
私が才能を持たないって知ったら、この方は何も恵んでくれないのではないか。それどころか、まだ何か盗られるかも。
そんなことを考えているうちに、戸が開いた。
「ようこそ。入って」
その女性は、私の才能を聞かなかった。普通は、最初に才能を聞き、その才能によって態度を変えるのに。
「顔色が悪いわね。食事はとってる?」
「いえ、朝からなにも……」
「なら、相当おなかをすかせているわね。可哀想に、すぐ案内するわ」
私は警戒心を弱めなかった。最近横行している、才能を持たない子供を攫って奴隷にする誘拐事件が頭をよぎったからだ。
……けれど、案内されたのは2人分の食事が用意された綺麗なダイニングルームだった。
「1人分余っていてよかったわ、すぐ準備するから少しだけ待ってて頂戴ね」
暖炉があったかい。
「あなた、名前は?」
「……[漢字]三苫[/漢字][ふりがな]みとま[/ふりがな]アリスです」
「アリスちゃん。可愛いお名前ね。私は[漢字]青野哀華[/漢字][ふりがな]あおの あいか[/ふりがな]。“先生”と呼んでもらえるかしら」
「……先生」
「さ、出来ましたよ。召し上がれ」
テーブルに並べられた綺麗な料理が、食欲をそそった。こんなにおいしそうな料理は久しぶりに見た。
[小文字]「……なんで」[/小文字]
つい、零してしまった。
「なんで、才能もない私なんかに……」
「……ここは、才能主義の世界に疲れた人が暮らす屋敷よ。才能のある人、ない人、あった人……みんなに共通するのは“こんな世界、嫌だ”と思ってること」
私は、目を見開いた。それは、安心と驚きの意だった。
「まぁ、詳しいことはあとにして、食べましょう」
そして、先生はすぅっと息を吸い、
[大文字]「[漢字]宙[/漢字][ふりがな]そら[/ふりがな]さん、アコさん、夕飯ですよ!」[/大文字]
と上の階に向かって言った。
「……アコさんは、来るかわかんないけど」
私にそう言って、先生は私に微笑んだ。
足が動かないのは、走る才能がないから――。
ずっと、走って、走って、偶然たどり着いた洋館は、大きかった。
まるでお城みたいだわ。
私はくらくらする頭をしっかり首で支えて、それを見上げた。
道中、ひったくりに遭って、パンのかけらもなけなしの小銭も鞄ごと取られた。
はぁ、おなかすいた……。
私に、おなかがすいてもあのひったくりを捕まえられるくらいの才能があればよかったのに。それか、食料を生み出せる魔法の才能でもいい。
でも、才能さえあれば、こんなとこ来なかったのよね、きっと。
私は才能がないから、愛してもらえなかった。愛でさえ、才能のいいなり。
もう、嫌だわ。こんな世界。
……あぁ。もう頭がぼうっとしてきた。空腹すぎて腹痛がする。
この家の方に、食料を恵んでもらえないかしら。
もうまともに動かない腕を持ち上げて、どんどん、と大きな木の戸をたたく。
[小文字]「は~い」[/小文字]
女性の声がした。
その時になって、突然不安に駆られた。
私が才能を持たないって知ったら、この方は何も恵んでくれないのではないか。それどころか、まだ何か盗られるかも。
そんなことを考えているうちに、戸が開いた。
「ようこそ。入って」
その女性は、私の才能を聞かなかった。普通は、最初に才能を聞き、その才能によって態度を変えるのに。
「顔色が悪いわね。食事はとってる?」
「いえ、朝からなにも……」
「なら、相当おなかをすかせているわね。可哀想に、すぐ案内するわ」
私は警戒心を弱めなかった。最近横行している、才能を持たない子供を攫って奴隷にする誘拐事件が頭をよぎったからだ。
……けれど、案内されたのは2人分の食事が用意された綺麗なダイニングルームだった。
「1人分余っていてよかったわ、すぐ準備するから少しだけ待ってて頂戴ね」
暖炉があったかい。
「あなた、名前は?」
「……[漢字]三苫[/漢字][ふりがな]みとま[/ふりがな]アリスです」
「アリスちゃん。可愛いお名前ね。私は[漢字]青野哀華[/漢字][ふりがな]あおの あいか[/ふりがな]。“先生”と呼んでもらえるかしら」
「……先生」
「さ、出来ましたよ。召し上がれ」
テーブルに並べられた綺麗な料理が、食欲をそそった。こんなにおいしそうな料理は久しぶりに見た。
[小文字]「……なんで」[/小文字]
つい、零してしまった。
「なんで、才能もない私なんかに……」
「……ここは、才能主義の世界に疲れた人が暮らす屋敷よ。才能のある人、ない人、あった人……みんなに共通するのは“こんな世界、嫌だ”と思ってること」
私は、目を見開いた。それは、安心と驚きの意だった。
「まぁ、詳しいことはあとにして、食べましょう」
そして、先生はすぅっと息を吸い、
[大文字]「[漢字]宙[/漢字][ふりがな]そら[/ふりがな]さん、アコさん、夕飯ですよ!」[/大文字]
と上の階に向かって言った。
「……アコさんは、来るかわかんないけど」
私にそう言って、先生は私に微笑んだ。