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過去も現在も重いんで病んでる方は即閉じてください‼
プリンが好きだった。思えば最後に“ちゃんと”食べれたのもプリンだった。
お前、好きだったよな。
男手1つで僕を育ててくれたお父さんが、仏壇に持って来てくれたのは、蝋燭、ライター、お線香、それとプリン。
泣いてたなぁ。ごめんな、気づけなくって。そう言って、ぼろぼろ涙を落として。
海外に短期間の出張を繰り返していたお父さんは、その国のプリンをお土産に買ってきてくれた。それぐらい僕はプリンが好きで、それぐらいお父さんは僕を愛していた。出張から帰ってきて僕が冷たくなってるのに気づいたその瞬間も、手にはケーキ屋の箱を持っていたらしい。
なのに、何やってんだ僕は。何もお父さんにしてあげられてないじゃないか。
自分が極限まで屑に感じる。本当に。
「じゃあ……、プリン、食べてみる」
口から漏れた言葉。
気づいた時にはもう1人になっていた。
なんだか眠い。
だんだん視界がぼやけてきて、気づいたら眠ってしまっていた。
久しぶりの、夢も見ない、深い深い眠りだった。
目を覚ますと、せりあが覗き込んでいた。
「あ、起きた。おはよう」
朝になっていた。
「おはよう……」
「もうちょっとで学校行くんだけど、そうだ。昨日買ってきたプリン、食べる?帰って来たら寝ちゃってたじゃん」
「……食べる」
昨日、お願いしてた癖して眠っていたので、何だか断れない。
「……はい」
スプーンの上にちょこんと乗った1口分のプリン。縮小しながら反射した朝日がちょっぴり眩しく感じた。
金属のスプーンは冷たくて鉄の味がした。プリンは、鮮やかな着色剤から容易に想像できるような、不自然な甘ったるい味だ。けれど、なんだか懐かしい。
「……もう1口、ちょうだい」
身体は、久しぶりに食事に拒絶反応を起こさなかった。
けれど、もう3口くらい食べたところで、少しぎゅっとなった。拒絶し始めている。
「そろそろ、学校じゃないの?」
「あ、そうだね。じゃ、行ってきます」
玄関から出ていく背中を見送る。
「……っ」
身体が、完全に拒絶する。
気持ちが悪い。
給食を全部食べることを強いられていたあの頃、毎日感じていた感覚。
キッチンに走る。
そして、すべて元に戻る。
そのあとを追うように、シンクを涙が流れる。
「……あぁ……」
噓つきの屑。屑だ。
大嫌い。
大っ嫌い。
僕が居たらまた自分を、そして誰かを不幸にする。
その前に消えてしまいたい。
あ、そうだった。
僕は、[下線]そのために[/下線]死んだんだった。
「お前が[漢字]紅葉[/漢字][ふりがな]もみじ[/ふりがな]を好き?うわ、好かれてる紅葉が可哀想w」
「目ぇ覚ませって。お前なんかがあんな美人と付き合えるわけねぇだろ?」
小4の頃のことだった筈だ。
僕は、[漢字]赤浜紅葉[/漢字][ふりがな]あかはま もみじ[/ふりがな]という同級生に恋をしていた。
当然僕は、紅葉さんに釣り合うような光ったものは持っていなかった。だから、軽い罵りは受けた。当然の事だった。
仕方がない。そう思って、気軽に流せる程度だった。
でも、変わった。
「好きです。付き合ってください!」
紅葉さんに告白された。
僕なんかが?
僕なんかが、告白された?
その時の感情は、思い出すことができない。でも……。
[明朝体]お前なんかがあんな美人と付き合えるわけねぇだろ?[/明朝体]
「……ごめんなさい」
好きだった。でも、振った。
怖かった。不釣り合いだと言ったあの声が、頭の中でリフレインして、僕にそう言わせた。
その判断は、間違っていたようだった。
罵りは、声を荒げた暴言に。
笑い声は、身体中の痣に。
心の突っかかりは、恐怖と……そして自己嫌悪に。
教室の隅で僕が殴られているのを、紅葉さんは見ないふりをして心を守った。自分のせいで好きな人が虐められていると、多少の“勘違い”をしてたらしい。
僕は、自分の行動で、自分を、そして好きな人を傷つけた。
自己嫌悪が心を埋めて許容量を超えた時、恋の感情というものを忘れ、そして生きる意味も忘れた。
歩いてアパートに帰った。
階段を上った。
鍵を開けた。
誰もいなかった。
薬箱を取り出した。
終わった。
「ごめん」
「私のせいなんだよね?」
「本当に」
「ごめん……」
「私も、[漢字]琉夏[/漢字][ふりがな]ルカ[/ふりがな]君と同じところに行きたい」
紅葉さんは、天国に行った。
きっと優しかったからだ。
でも僕はまだ、成仏できていない。
僕がこの世に残されたままだと知らずに、紅葉さんは天国に、独りで行った。
この世界は、素直すぎるんだ。
いいことをした人は天国。
悪いことをした人は地獄。
たとえ天国に行く人が求めている人が幽霊になって、この世にずっと取り残されていたとしても、単調に、例外なしに天国に連れて行かれる。
こんなの、おかしいよ。
何が天国だ。
空が茜色に染まった。
僕はその時放心状態だった。昼からずっと。
時間だけが淡々と、座り込んだままの僕の隣を通り過ぎて行く。
また、あの頃のように、自分がただの屑でしかないような感じがしていた。
そのうち、自問自答を始めた。
今も紅葉さんを好きなんだろうか?
わからない。好きだったとして、まだ紅葉さんが僕を好きでいてくれているわけがない。
それ以前に、何が「好き」なのかがわからない。
また紅葉さんに会えたら、思い出せるのかな――?
お前、好きだったよな。
男手1つで僕を育ててくれたお父さんが、仏壇に持って来てくれたのは、蝋燭、ライター、お線香、それとプリン。
泣いてたなぁ。ごめんな、気づけなくって。そう言って、ぼろぼろ涙を落として。
海外に短期間の出張を繰り返していたお父さんは、その国のプリンをお土産に買ってきてくれた。それぐらい僕はプリンが好きで、それぐらいお父さんは僕を愛していた。出張から帰ってきて僕が冷たくなってるのに気づいたその瞬間も、手にはケーキ屋の箱を持っていたらしい。
なのに、何やってんだ僕は。何もお父さんにしてあげられてないじゃないか。
自分が極限まで屑に感じる。本当に。
「じゃあ……、プリン、食べてみる」
口から漏れた言葉。
気づいた時にはもう1人になっていた。
なんだか眠い。
だんだん視界がぼやけてきて、気づいたら眠ってしまっていた。
久しぶりの、夢も見ない、深い深い眠りだった。
目を覚ますと、せりあが覗き込んでいた。
「あ、起きた。おはよう」
朝になっていた。
「おはよう……」
「もうちょっとで学校行くんだけど、そうだ。昨日買ってきたプリン、食べる?帰って来たら寝ちゃってたじゃん」
「……食べる」
昨日、お願いしてた癖して眠っていたので、何だか断れない。
「……はい」
スプーンの上にちょこんと乗った1口分のプリン。縮小しながら反射した朝日がちょっぴり眩しく感じた。
金属のスプーンは冷たくて鉄の味がした。プリンは、鮮やかな着色剤から容易に想像できるような、不自然な甘ったるい味だ。けれど、なんだか懐かしい。
「……もう1口、ちょうだい」
身体は、久しぶりに食事に拒絶反応を起こさなかった。
けれど、もう3口くらい食べたところで、少しぎゅっとなった。拒絶し始めている。
「そろそろ、学校じゃないの?」
「あ、そうだね。じゃ、行ってきます」
玄関から出ていく背中を見送る。
「……っ」
身体が、完全に拒絶する。
気持ちが悪い。
給食を全部食べることを強いられていたあの頃、毎日感じていた感覚。
キッチンに走る。
そして、すべて元に戻る。
そのあとを追うように、シンクを涙が流れる。
「……あぁ……」
噓つきの屑。屑だ。
大嫌い。
大っ嫌い。
僕が居たらまた自分を、そして誰かを不幸にする。
その前に消えてしまいたい。
あ、そうだった。
僕は、[下線]そのために[/下線]死んだんだった。
「お前が[漢字]紅葉[/漢字][ふりがな]もみじ[/ふりがな]を好き?うわ、好かれてる紅葉が可哀想w」
「目ぇ覚ませって。お前なんかがあんな美人と付き合えるわけねぇだろ?」
小4の頃のことだった筈だ。
僕は、[漢字]赤浜紅葉[/漢字][ふりがな]あかはま もみじ[/ふりがな]という同級生に恋をしていた。
当然僕は、紅葉さんに釣り合うような光ったものは持っていなかった。だから、軽い罵りは受けた。当然の事だった。
仕方がない。そう思って、気軽に流せる程度だった。
でも、変わった。
「好きです。付き合ってください!」
紅葉さんに告白された。
僕なんかが?
僕なんかが、告白された?
その時の感情は、思い出すことができない。でも……。
[明朝体]お前なんかがあんな美人と付き合えるわけねぇだろ?[/明朝体]
「……ごめんなさい」
好きだった。でも、振った。
怖かった。不釣り合いだと言ったあの声が、頭の中でリフレインして、僕にそう言わせた。
その判断は、間違っていたようだった。
罵りは、声を荒げた暴言に。
笑い声は、身体中の痣に。
心の突っかかりは、恐怖と……そして自己嫌悪に。
教室の隅で僕が殴られているのを、紅葉さんは見ないふりをして心を守った。自分のせいで好きな人が虐められていると、多少の“勘違い”をしてたらしい。
僕は、自分の行動で、自分を、そして好きな人を傷つけた。
自己嫌悪が心を埋めて許容量を超えた時、恋の感情というものを忘れ、そして生きる意味も忘れた。
歩いてアパートに帰った。
階段を上った。
鍵を開けた。
誰もいなかった。
薬箱を取り出した。
終わった。
「ごめん」
「私のせいなんだよね?」
「本当に」
「ごめん……」
「私も、[漢字]琉夏[/漢字][ふりがな]ルカ[/ふりがな]君と同じところに行きたい」
紅葉さんは、天国に行った。
きっと優しかったからだ。
でも僕はまだ、成仏できていない。
僕がこの世に残されたままだと知らずに、紅葉さんは天国に、独りで行った。
この世界は、素直すぎるんだ。
いいことをした人は天国。
悪いことをした人は地獄。
たとえ天国に行く人が求めている人が幽霊になって、この世にずっと取り残されていたとしても、単調に、例外なしに天国に連れて行かれる。
こんなの、おかしいよ。
何が天国だ。
空が茜色に染まった。
僕はその時放心状態だった。昼からずっと。
時間だけが淡々と、座り込んだままの僕の隣を通り過ぎて行く。
また、あの頃のように、自分がただの屑でしかないような感じがしていた。
そのうち、自問自答を始めた。
今も紅葉さんを好きなんだろうか?
わからない。好きだったとして、まだ紅葉さんが僕を好きでいてくれているわけがない。
それ以前に、何が「好き」なのかがわからない。
また紅葉さんに会えたら、思い出せるのかな――?