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過去も現在も重いんで病んでる方は即閉じてください‼
私には、小学校以前の人間に関する記憶がない。
両親によると、交通事故で記憶が消えたらしい。
幸い、今まで勉強したことは、一部欠落があったものの覚えていた。
だからなのか、目が覚めた時、私にとっては初めましての両親を怖がるなんてことはなかった。これが誘拐犯だったら困ったけど。
「受かった……!」
だから、いつもケチな母が頭のいい高校を受けさせてくれたときは、絶対に最高の高校生活を送って、成果も残して、親孝行しなきゃ。
そう思ったはずだった。
教室に入ったその瞬間から、生ゴミのような腐った空気が漂ってきた。本物の空気ではなく、読むほうの空気だ。
このクラス、何か大きな闇がある気がする。
昔から私は、そういう第6感というものがよく働く子だったらしい。だからこそ感じたのだろうか、この空気を。でもなんだか既視感がある。
これを普通の人が見たら、楽しい高校生活の始まりのはずなのに――。
ちょっぴり憂鬱な気分。
入学式、HR、そして1時間目が始まる。
1人ずつの自己紹介は苦手だ。何を話せばいいのか分からない。
「田辺陽です!好きなゲームは……」
「……なので、皆と仲良くしたいです。……」
断片的にしか聞こえない、不特定多数の自己紹介。
もう、ネタ枠であの幽霊のことでも言おっかな……。
その時、はっきり聞こえた。
「水俣沙耶です。誰も信じてくれないけど霊感があります。将来は霊媒師になります。よろしくお願いします」
水俣沙耶。
記憶の底から、「この人を守れ」と叫び声が聞こえる。
あの子だ。
「また言ってるwいい加減にしなよw」「その霊感アピールもう飽きたってw」
クラス中から湧き上がる言葉のナイフが、私に流れ弾を当てながらその子を刺す。
なんで先生は何も言わないの?なんで誰も止めないの?
[大文字]「あのっ」[/大文字]
誰も止めないなら、私が止めなきゃ――。
そんな夢物語のようなことを思った私が馬鹿だった。
スッ、とクラスが静まり返った。ナイフが音をなくして私に向けられる。
あ、これ無理だ。私なんかには助けられない。
大得意の第6感が呟いた。
「え~と……あの……」
逃げろ。早く何か言うんだ。
「……し、質問なんですけど~……、このクラスに幽霊っていますか?」
精一杯の愛想笑いで聞いた。まだ静かだ。しばらくして沙耶さんが言った。
「……誰かは伏せますが、右手の平に、意識して――触ろうと思って触った跡がある人が1人います。幽霊は、いません」
くすくすと笑い声がする。先生でさえも呆れたような顔で笑う。その中で、私の表情だけが固かった。
沙耶さんは嘘を吐いていない。嘘みたいな本当を公表してしまったがために浮いて、それでこんな理不尽なことをされている。
ねぇ、沙耶さん。私はあなたが本当のことを言ってるって分かってる。きっと、私だけが。
テレパシーが使えたらいいのに。そうすれば今すぐ、ナイフに襲われることなく伝えられる。
目で訴えられないか試すも、「菜花、そろそろ座れ~」の声で遮られた。
――ごめんなさい、沙耶さん。
座った。自分がその後自己紹介で何を話したのか、一切覚えていない。
「ねぇねぇ?」
1時間目が終わり、直後に派手なギャルネイルと長い金髪の生徒に話しかけられた。
「あ……はい」
「せりたんって呼んでいい?」
唐突にあだ名呼びを提案された。
「はい……」
「じゃ、せりたん、お願いがあるんだけど~……」
その一言で雰囲気が変わった。
「[太字]沙耶とは仲良くしちゃ駄目だよ?[/太字]」
「え……なんで」
「あんな頭狂ってる奴とつるんだら、せりたんの可愛~いお顔が汚れちゃうよ?」
親指と中指で両頬をつままれる。ネイルが刺さらないかと不安になったその時には、もう遅かった。
ふと気づくと、私たちの周りには腐った空気が充満していた。
主犯はこのギャル?
「あと~、LINEでは私と菜々子の発言、全肯定でお願いね♡スマホか~し~て~っ!」
そう言いながら勝手にバッグを漁られる。
「ちょっ……何を」
「グループに入れるだけだから♪ね?」
「待っ――」
「せりたんは私たちの言うこと[下線]だけ[/下線]聞いてればいいから」
圧が一気に押し寄せる。
言うこと聞かないと私も同じことされる……。
耐えきれず目線を逸らすと、沙耶さんが申し訳なさそうに、そして怖そうにこちらを見ていた。
家に帰ると、もう通知が来た。
『沙耶~?』
『初日からアピすんな~?』
『バ~カw』
『消えろ~』
悪口の連投。吐き気がしそうだ。
いったん放置しよう。まだ通知を見ただけだから、既読はついていないはず。スマホの電源を切った。
「……お帰り」
あの日――私が撫でた日以降、君は一度も笑わない。ずっと同じ場所に座って、無表情で地面を見つめている。
「……ずっと元気ないよね」
「何も楽しみがないからね」
「飽きないの?」
「何も楽しみがないから、1日はあっという間だよ」
「……好きな食べ物とかないの?」
「あるけど……今は何も食べれない。身体が拒絶しちゃう」
「……好きなものだったら食べられるんじゃないかな」
「……そうかも」
「幽霊って物食べられるの?」
「食べられるけど、物には触れない」
「じゃあ、買ってくるから、食べさせてあげ……」
と言いかけてやめた。
なぜなら、相手は異性である。年下とはいえ。何か思うこととかあるかもしれない。
そんな私の心情を察したように、君は言った。
「大丈夫だよ。僕……恋の仕方とか、全部忘れたから」
そう言った時の君の顔は、少し切なさがあった。
「……じゃあ、プリン、食べてみる」
そんな顔のまま言った。
「わかった、プリンね」
私はそう言って君の顔を見た。
「……何見てるの」
「いや、なんか可愛いなって」
「どこが」
「いろいろ」
そう言って笑う。
あぁ、あんな世界、忘れてしまいそう。
両親によると、交通事故で記憶が消えたらしい。
幸い、今まで勉強したことは、一部欠落があったものの覚えていた。
だからなのか、目が覚めた時、私にとっては初めましての両親を怖がるなんてことはなかった。これが誘拐犯だったら困ったけど。
「受かった……!」
だから、いつもケチな母が頭のいい高校を受けさせてくれたときは、絶対に最高の高校生活を送って、成果も残して、親孝行しなきゃ。
そう思ったはずだった。
教室に入ったその瞬間から、生ゴミのような腐った空気が漂ってきた。本物の空気ではなく、読むほうの空気だ。
このクラス、何か大きな闇がある気がする。
昔から私は、そういう第6感というものがよく働く子だったらしい。だからこそ感じたのだろうか、この空気を。でもなんだか既視感がある。
これを普通の人が見たら、楽しい高校生活の始まりのはずなのに――。
ちょっぴり憂鬱な気分。
入学式、HR、そして1時間目が始まる。
1人ずつの自己紹介は苦手だ。何を話せばいいのか分からない。
「田辺陽です!好きなゲームは……」
「……なので、皆と仲良くしたいです。……」
断片的にしか聞こえない、不特定多数の自己紹介。
もう、ネタ枠であの幽霊のことでも言おっかな……。
その時、はっきり聞こえた。
「水俣沙耶です。誰も信じてくれないけど霊感があります。将来は霊媒師になります。よろしくお願いします」
水俣沙耶。
記憶の底から、「この人を守れ」と叫び声が聞こえる。
あの子だ。
「また言ってるwいい加減にしなよw」「その霊感アピールもう飽きたってw」
クラス中から湧き上がる言葉のナイフが、私に流れ弾を当てながらその子を刺す。
なんで先生は何も言わないの?なんで誰も止めないの?
[大文字]「あのっ」[/大文字]
誰も止めないなら、私が止めなきゃ――。
そんな夢物語のようなことを思った私が馬鹿だった。
スッ、とクラスが静まり返った。ナイフが音をなくして私に向けられる。
あ、これ無理だ。私なんかには助けられない。
大得意の第6感が呟いた。
「え~と……あの……」
逃げろ。早く何か言うんだ。
「……し、質問なんですけど~……、このクラスに幽霊っていますか?」
精一杯の愛想笑いで聞いた。まだ静かだ。しばらくして沙耶さんが言った。
「……誰かは伏せますが、右手の平に、意識して――触ろうと思って触った跡がある人が1人います。幽霊は、いません」
くすくすと笑い声がする。先生でさえも呆れたような顔で笑う。その中で、私の表情だけが固かった。
沙耶さんは嘘を吐いていない。嘘みたいな本当を公表してしまったがために浮いて、それでこんな理不尽なことをされている。
ねぇ、沙耶さん。私はあなたが本当のことを言ってるって分かってる。きっと、私だけが。
テレパシーが使えたらいいのに。そうすれば今すぐ、ナイフに襲われることなく伝えられる。
目で訴えられないか試すも、「菜花、そろそろ座れ~」の声で遮られた。
――ごめんなさい、沙耶さん。
座った。自分がその後自己紹介で何を話したのか、一切覚えていない。
「ねぇねぇ?」
1時間目が終わり、直後に派手なギャルネイルと長い金髪の生徒に話しかけられた。
「あ……はい」
「せりたんって呼んでいい?」
唐突にあだ名呼びを提案された。
「はい……」
「じゃ、せりたん、お願いがあるんだけど~……」
その一言で雰囲気が変わった。
「[太字]沙耶とは仲良くしちゃ駄目だよ?[/太字]」
「え……なんで」
「あんな頭狂ってる奴とつるんだら、せりたんの可愛~いお顔が汚れちゃうよ?」
親指と中指で両頬をつままれる。ネイルが刺さらないかと不安になったその時には、もう遅かった。
ふと気づくと、私たちの周りには腐った空気が充満していた。
主犯はこのギャル?
「あと~、LINEでは私と菜々子の発言、全肯定でお願いね♡スマホか~し~て~っ!」
そう言いながら勝手にバッグを漁られる。
「ちょっ……何を」
「グループに入れるだけだから♪ね?」
「待っ――」
「せりたんは私たちの言うこと[下線]だけ[/下線]聞いてればいいから」
圧が一気に押し寄せる。
言うこと聞かないと私も同じことされる……。
耐えきれず目線を逸らすと、沙耶さんが申し訳なさそうに、そして怖そうにこちらを見ていた。
家に帰ると、もう通知が来た。
『沙耶~?』
『初日からアピすんな~?』
『バ~カw』
『消えろ~』
悪口の連投。吐き気がしそうだ。
いったん放置しよう。まだ通知を見ただけだから、既読はついていないはず。スマホの電源を切った。
「……お帰り」
あの日――私が撫でた日以降、君は一度も笑わない。ずっと同じ場所に座って、無表情で地面を見つめている。
「……ずっと元気ないよね」
「何も楽しみがないからね」
「飽きないの?」
「何も楽しみがないから、1日はあっという間だよ」
「……好きな食べ物とかないの?」
「あるけど……今は何も食べれない。身体が拒絶しちゃう」
「……好きなものだったら食べられるんじゃないかな」
「……そうかも」
「幽霊って物食べられるの?」
「食べられるけど、物には触れない」
「じゃあ、買ってくるから、食べさせてあげ……」
と言いかけてやめた。
なぜなら、相手は異性である。年下とはいえ。何か思うこととかあるかもしれない。
そんな私の心情を察したように、君は言った。
「大丈夫だよ。僕……恋の仕方とか、全部忘れたから」
そう言った時の君の顔は、少し切なさがあった。
「……じゃあ、プリン、食べてみる」
そんな顔のまま言った。
「わかった、プリンね」
私はそう言って君の顔を見た。
「……何見てるの」
「いや、なんか可愛いなって」
「どこが」
「いろいろ」
そう言って笑う。
あぁ、あんな世界、忘れてしまいそう。