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過去も現在も重いんで病んでる方は即閉じてください‼
沙耶ちゃん――。
頭の中に、まだ紅葉の声が聞こえる。
ド初心者の、初めての霊媒は、成功だったのだろうか。……だって、その基準さえ分からないんだし。
しょうがない。
けど、今はただ、向かわなければいけない場所があった。助けないといけない人がいた。
切符を買って、電車に乗り込む。
その時は、ただ1駅1駅止まる電車がうっとうしかった。
心の中でどれだけ急かしても、電車は一向に速さを増さない。当たり前だけど。
「お願いだから……待ってて」
学校は、最寄り駅から走って10分のところにある。
そこまで走るのは、運動部ではない私にとってからりの負荷だった。
あの時、教えてくれたのは、紅葉だ。確かにあれは、紅葉の声だった。
大丈夫だよ、せりあ。あなたの中には、今、ふたりの魂がある。ひとりじゃないよ。怖がらないで。
私は、今、後悔している。後悔し続けている。まだ思い出せない過去の世界で私が助けられたかもしれない、その命が消えてしまったこと。そして、沙耶さんを置いてきてしまったこと。
……今度こそ、助けたい。
なぜか唐突にそう思った。今度こそ、なんて、前を知る人しか言えない言葉なのに。
絶対に、何かが頭のすぐそこまで出てきかけている。
校門についたとき、頭になにか落ちてきた。
眼鏡――。
この色、形。特徴的な……[下線]沙耶さんの眼鏡[/下線]だ。
反射的に上を見上げた。開いている窓はない。だとしたら……まだ屋上にいる。
外靴は脱いだけど、中靴は履くのを忘れて階段を上った。
この学校は5階まであるので、屋上は実質6階にある。5階分の階段を、上り始めた。
でも私、相当馬鹿だ。
「あっ⁉」
3階と4階の踊り場で、滑って転んでしまった。靴を履かないからこうなる。
膝の皮が剝けて、血が滲んでいる。でも、気にしている暇はなかった。
……痛い。痛い、けど、立ち止まるな、私。
心拍数が上がっていく。呼吸が荒くなっていく。無理にでも自分を鼓舞して、走らなきゃ。
いわば6階についたときには、もう頭もくらくらして、肺が痛かった。脚に疲労が走る。
震える手で、外に出るドアノブを握った。
……握った。
握った、だけだった。
今、動いたら、何かが壊れる。そう、『第6勘』が言った。
呼吸を整える。
そして、その鼓動が、“それ”と重なった。
そこには、紅葉がいた。
フェンスの奥で、[漢字]哀[/漢字][ふりがな]かな[/ふりがな]しい笑みを浮かべていた。
「やっと来てくれたんだね」
遠いのに、はっきりと聞こえる声が、胸を刺した。
――昔、小4の時、知らない子「モミジちゃん」からメッセージが届いたことがあった。
せりあ。一緒に死のう。
モミジちゃんは、紅葉だったんだと思う。
多分、紅葉は、私が記憶を失ったことを知らなかった。だから、放課後の時間だったから、私が来るのを待ってたんだと。
でも私は、知らない子からのメッセージを無視した。
結局、母から、モミジという子の訃報を聞いたのだった。
「……遅いよ。もう1人で飛び降りちゃったんだからね?」
「ごめん……実は」
「知ってるよ。さっき、せりあの身体を借りたときに記憶が見つからなかったんだもん」
そして、ゆっくり、息を吸って言った。
「沙耶ちゃんを助けて。まだ間に合うよ」
そして、紅葉は、還るように、ふんわりと落ちた。
我に返った時には、鼓動は感情のぐるぐるに変わっていた。
そのぐるぐるの軌道に乗せるように、ノブを回した。
私のこころとは正反対の、綺麗な夕焼けだった。
そのオレンジの消失点に、沙耶さんがいた。みんないた。
「あ~、裏切り者のお馬鹿さんが戻ってきた~wやっほ~ww」
腐りきったような笑顔で、ギャルが手を振ってきた。
もう、愛想笑いも機能しなかった。
「ねぇねぇ、今だったらよりを戻してあげるよ~?でも、条件があるの」
はなからそんなことをする気はなかった。無視しようとしたけど、すべて止まってしまった。
[太字]「こいつを突き落としてくれたら、戻ってきてもいいよ?」[/太字]
息が止まった。
この人間は何故、息をするようにそんな恐ろしいことを言える?
「せりた~ん、せっかくのチャンスだよ?棒に振っちゃう?」
取り巻きがほくそ笑んでいる。
私は、動かない足を無理やり動かし、1歩進んだ。
1歩、また1歩。
そして、沙耶さんの前で立ち止まった。
「沙耶さん、これ」
「……なんで」
「落ちてきて」
そして、眼鏡を手渡した。
「ありがとう」
空いた手で、強く沙耶さんの手首を握った。そして強く――引いた。その力に任せ、階段の方に走った。
「なんで、私のためなんかに」
「……[下線]もう、後悔したくないから[/下線]、かな」
「うわ、やっぱあいつ馬鹿だわw」
「何されても知らないからね~?ww」
私は、走った。
とにかく、行ける限り遠くまで走る気だ。
私は後悔が嫌いなのかもしれない。
だって、極力後悔しない道を、無理くり探し出している。
でも。
してしまった後悔は、2度と消せない。
後悔と共存するために――私は、後悔したくない。
頭の中に、まだ紅葉の声が聞こえる。
ド初心者の、初めての霊媒は、成功だったのだろうか。……だって、その基準さえ分からないんだし。
しょうがない。
けど、今はただ、向かわなければいけない場所があった。助けないといけない人がいた。
切符を買って、電車に乗り込む。
その時は、ただ1駅1駅止まる電車がうっとうしかった。
心の中でどれだけ急かしても、電車は一向に速さを増さない。当たり前だけど。
「お願いだから……待ってて」
学校は、最寄り駅から走って10分のところにある。
そこまで走るのは、運動部ではない私にとってからりの負荷だった。
あの時、教えてくれたのは、紅葉だ。確かにあれは、紅葉の声だった。
大丈夫だよ、せりあ。あなたの中には、今、ふたりの魂がある。ひとりじゃないよ。怖がらないで。
私は、今、後悔している。後悔し続けている。まだ思い出せない過去の世界で私が助けられたかもしれない、その命が消えてしまったこと。そして、沙耶さんを置いてきてしまったこと。
……今度こそ、助けたい。
なぜか唐突にそう思った。今度こそ、なんて、前を知る人しか言えない言葉なのに。
絶対に、何かが頭のすぐそこまで出てきかけている。
校門についたとき、頭になにか落ちてきた。
眼鏡――。
この色、形。特徴的な……[下線]沙耶さんの眼鏡[/下線]だ。
反射的に上を見上げた。開いている窓はない。だとしたら……まだ屋上にいる。
外靴は脱いだけど、中靴は履くのを忘れて階段を上った。
この学校は5階まであるので、屋上は実質6階にある。5階分の階段を、上り始めた。
でも私、相当馬鹿だ。
「あっ⁉」
3階と4階の踊り場で、滑って転んでしまった。靴を履かないからこうなる。
膝の皮が剝けて、血が滲んでいる。でも、気にしている暇はなかった。
……痛い。痛い、けど、立ち止まるな、私。
心拍数が上がっていく。呼吸が荒くなっていく。無理にでも自分を鼓舞して、走らなきゃ。
いわば6階についたときには、もう頭もくらくらして、肺が痛かった。脚に疲労が走る。
震える手で、外に出るドアノブを握った。
……握った。
握った、だけだった。
今、動いたら、何かが壊れる。そう、『第6勘』が言った。
呼吸を整える。
そして、その鼓動が、“それ”と重なった。
そこには、紅葉がいた。
フェンスの奥で、[漢字]哀[/漢字][ふりがな]かな[/ふりがな]しい笑みを浮かべていた。
「やっと来てくれたんだね」
遠いのに、はっきりと聞こえる声が、胸を刺した。
――昔、小4の時、知らない子「モミジちゃん」からメッセージが届いたことがあった。
せりあ。一緒に死のう。
モミジちゃんは、紅葉だったんだと思う。
多分、紅葉は、私が記憶を失ったことを知らなかった。だから、放課後の時間だったから、私が来るのを待ってたんだと。
でも私は、知らない子からのメッセージを無視した。
結局、母から、モミジという子の訃報を聞いたのだった。
「……遅いよ。もう1人で飛び降りちゃったんだからね?」
「ごめん……実は」
「知ってるよ。さっき、せりあの身体を借りたときに記憶が見つからなかったんだもん」
そして、ゆっくり、息を吸って言った。
「沙耶ちゃんを助けて。まだ間に合うよ」
そして、紅葉は、還るように、ふんわりと落ちた。
我に返った時には、鼓動は感情のぐるぐるに変わっていた。
そのぐるぐるの軌道に乗せるように、ノブを回した。
私のこころとは正反対の、綺麗な夕焼けだった。
そのオレンジの消失点に、沙耶さんがいた。みんないた。
「あ~、裏切り者のお馬鹿さんが戻ってきた~wやっほ~ww」
腐りきったような笑顔で、ギャルが手を振ってきた。
もう、愛想笑いも機能しなかった。
「ねぇねぇ、今だったらよりを戻してあげるよ~?でも、条件があるの」
はなからそんなことをする気はなかった。無視しようとしたけど、すべて止まってしまった。
[太字]「こいつを突き落としてくれたら、戻ってきてもいいよ?」[/太字]
息が止まった。
この人間は何故、息をするようにそんな恐ろしいことを言える?
「せりた~ん、せっかくのチャンスだよ?棒に振っちゃう?」
取り巻きがほくそ笑んでいる。
私は、動かない足を無理やり動かし、1歩進んだ。
1歩、また1歩。
そして、沙耶さんの前で立ち止まった。
「沙耶さん、これ」
「……なんで」
「落ちてきて」
そして、眼鏡を手渡した。
「ありがとう」
空いた手で、強く沙耶さんの手首を握った。そして強く――引いた。その力に任せ、階段の方に走った。
「なんで、私のためなんかに」
「……[下線]もう、後悔したくないから[/下線]、かな」
「うわ、やっぱあいつ馬鹿だわw」
「何されても知らないからね~?ww」
私は、走った。
とにかく、行ける限り遠くまで走る気だ。
私は後悔が嫌いなのかもしれない。
だって、極力後悔しない道を、無理くり探し出している。
でも。
してしまった後悔は、2度と消せない。
後悔と共存するために――私は、後悔したくない。