閲覧前に必ずご確認ください

⚠️注意⚠️
一.本作は『殴る』や『蹴る』といった物理的攻撃から、『ナイフ』や『包丁』などの凶器的攻撃があります。決して本作でできてるからと、現実で真似をしないでください。
一.本作は現実とは全く無縁の話、つまり『フィクション』のお話です。現実で必ずしも本作通りのことが起きるとは限りません。
一.主人公が56される(○ぬ)シーンがたまに入ります。心臓の弱い方やそういったグロ描写が苦手な方は、本作の拝読はおやめください。なお、グロ描写とはいいますが、それほど激しいものではないです。
一.本作を読んでの体調不良などといった問題は、作者及び製作者達は一切関与しません。
一.アンチコメントは一切受け付けません。また物語を指摘するような発言(「○○がこう言う場面で~~させた方がいいだろ」的な発言)も一切受け付けません。
一.みんなが読む本です。コメントは穏便に………
以上です。

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「『深淵トンネル』〜眠りのオルゴールと淡い燈〜<アビスでの出会い>["Abyss Tunnel"~Sleeping Music Box and Pale Lights~<Encounter in the Abyss>]#1」

#2

第一章『"アビス"の"メリーさん"の愉快な話』第一話「『双角瓢箪』[ソウルゴード]と『愉快なメリーさん』[ミスターアメイジングメリー]」

どうしようもない夢を、いつも見る。心が締め付けられるような、もしくは傷を負ってしまうような、そんな悪夢ばかりだった。自分が死んでしまったり、周りの人が無惨な姿で殺されたり。いっつも、いっつも………………。
私はそれを、いつの頃からか慣らしてしまった。それを見るのが、あたりまえだというように(ちなみに聞いた話だと、夢を見るのはちゃんと寝れていない、浅い眠りになってしまってるかららしい。いっつも目の下にクマがあるのはそのせいか………)。そう、慣れたんだ……。
だから、[太字]これ[/太字]もきっと悪夢なんだ。そうじゃないと、………………。
「………………。」
真っ暗なトンネルのど真ん中に、私は立っていた。唯一の光源といえば、この手に持っている微かに淡い光を放つランタンぐらいだけだろう。
あれ、なんだろう……このランタンの灯火を見ていると、自然と左胸があったかくなっていく気がする。まるで、[太字]心臓の鼓動[/太字]のように。……って、私何考えているんだ。
……さて、いつこのランタンの火が消えるかわからない(昔にあるマッチとかで火をうつして持ち運ぶようなやつ)。火が消えるまでにこのトンネルから出ないと、後がめんどくさくなりそうだ。私は一歩、前方に足を向けた。
虚しいほどに冷たい足音が、トンネル内に木霊す。歩みを続ければ続けれるほど、私の心は少しずつ鼓動を増していく。
あたりまえの事だがトンネルは、冷凍庫のようだった。いつ作られたのだろう、っていうぐらい古そうなコンクリートが剥き出しになっている。少し肌寒く感じるのは、このコンクリートのせいかな、それとも誰もいないからかな、それともたんに冷えているのだろうか………?
ランタンに視線を変えてみた。ランタンの火は、今も元気に燃えている。風も吹いてないのにユラユラ揺れているのは、私が持っている影響のせい?微かなそれは、まるで私の心臓みたい………って、これさっき
も言ったな。
早く、外に出たいな………。ていうか、そもそもこれは夢なのか?私はそんな一つの疑問が浮かんだ。夢は痛みを感じないと言われているけど、もしそれが本当なら立っているという感触自体ないんじゃないのか?これが夢なのかは判断がつかない、というかつけようがない。
………………………ハァ、考えるだけ無駄なこと、か。私は頭をブンブン横に振って思考を乱暴に投げ出し、少しだけ歩みを早めていく。
* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *





* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *
「……………ん……って、あれ、……?」
どれぐらい歩き続けたのだろうか、無意識に歩いてしまっていた。ハッと我に返った私は周りを見渡すが、口から出るのは困惑の音色だ。
今ここにいるのはトンネル、というのは変わらない。変わらないが、今目の前には[太字]ドア[/太字]があるのだ。明治、昭和らへんにあったような、洋館でよく見かけるような扉だった。ちなみにドアの周りはコンクリートで囲まれているため、その奥が何かわからない。
本音を言えば、少しの恐怖より好奇心の方が強い。この先に何があるのかものすごく気になっていたし、前に進むためには絶対にここを通らなければならなさそうだからだ。
生唾を飲み込んで、扉をゆっくり押した。鍵は閉まっておらず、何も抵抗なしにドアは開いた。古びた木製が笑い声をあげる。
「…………………あっ。」
初めの一言目は、そんな言葉だった。だがまぁ、これが間違っているとは思えない。
なぜなら、ドアの先に広がる視界には暗くて見えづらいものの、あきらかにトンネルではない所ということがあからさまだ。足元でたくさんの草がサワサワ揺れている。あれってことはもしかしてここ…………[太字]草原[/太字]……?
……とにかく、前に進もう。私は意を決して歩みを始めた。
多分ここは草原だけど、少し不気味な場所みたいのようだ。なぜなら真っ直ぐ歩いている途中、ゴロゴロとそこらへんに何かの[太字]頭蓋骨[/太字]が落っこちており、さっきからちょくちょく足の先にぶつかるのだ。形は人っぽそうで人っぽい形じゃなくて、ちょうど人で言うおでこら辺に尖った骨が二つあったり、一つあったりしているものだった。それにそれが生えている場所も奇妙で、長いやつが二つ並んでたり、真ん中ら辺に上下あって上が長め下短めのやつだったり。そう、それはまるで童話とかでよく聞く『鬼』を象徴していた。
それに、頭蓋骨だけではなく刀だろうか、刀の柄らしきものが刺さったままのやつなどもあったのだ。もしかして、ここで鬼と人間の戦争があったのだろうか?………安土桃山?(???)
歩き続けていくと少しずつ草がなくなっていき、ついには荒地のような土の地面になっていた。さらにさっきよりも頭蓋骨やらなんやらが顕になっているから、私にとって少しいやな光景だ。もっと言えば、周りが真っ暗で唯一このランタンの火と月明かりで、私の足先ぐらいの距離だけが薄くしか見えないときてる。今すぐにでも現実逃避をしたい。それほどすっごく怖いのだ。
誰かに、会いたいな……。そう私が思った瞬間だった。
「…………あぁ?こんな荒地に誰かが来るなんて、1000年ぐらい久しぶりだな。」
「、っ…………………え、どこ?」
私は慌ててランタンをブンブン左右に振り回した。この視野ではまだ何にも見えてないのだ。
すると、私の前方のちょっと斜め左の方から、愉快そうな笑い声とさっきの低い男性の声が聞こえてきた。
「ははははは、そんなに焦らんでええぞええぞ!!こっちだこっち!そのまま真っ直ぐ歩いてこい!」
「は、はぁ………?」
ちょっとだけ不安はあるものの、私はその声のとおりに真っ直ぐ進んだ。少し奥にでっかい岩があるのはわかるが、近づくにつれ徐々にその岩の上に誰かが腰掛けているのが見えた。私は、手を伸ばせば岩に触れれるぐらいの距離まで来て、やっと私に話しかけている人の姿を確認することができた。その人は豪快に笑いながら手に持ってた瓢箪をグビグビ飲んでいる。酒が入っているのか、少し顔が赤み掛かってもいる。
「がはははは、やっとこれたか!!」
「え、えっと……………あなたは…………?」
「あぁ〜ん??俺の名前だぁ?………んぁ〜、確か周りからはぁ〜………『アガイ』、って呼ばれてたかなぁ〜。」
「アガイ、さん…………あの、私は綷[すい]っていいます。苗字は、…九恵[くいな]です……………。」
「なんだなんだ、綷の名前なんざ興味ねぇっつうの。」
でもちゃんと名前は呼んでくれるんだね……。
男の人、アガイさんはゴクゴクと凄い勢いで瓢箪を九十度に傾け、蓋を閉めて岩から飛び降りて私の隣に着地してきた。地面が少し凹んだが。
アガイさんは、普通の青年っぽそうな姿だった。言い方はおじさんっぽいが、服は真っ黒いシャツと黒いモコモコの上着を着ているが、正直昔の人とは思えないぐらいかっこいい現代版の姿だ。そこでやっと私は、一つ気づいては『いけないこと』に気づいてしまった。
「………………え、アガイ、さん…………それって、、、?」
「んぁ?………………あぁ、これか?これはどっからどう見ても『角』だろ、そんなのもしらねぇのか綷。」
「え、つの、…………角!?!?」
「おうよ。」
アガイさんはあたりまえだと言うように頷いた。そう、私が見たのはアガイさんのおでこの真ん中を挟むように生えている『左右不均等の長さ』の二つの角だ。ちなみに右の方がすごく長く、左の方が短い。まるで時計の針みたい……。
私はそこでやっと気づいた。出会った時から手に持ってる瓢箪を狂ったようにグビグビ飲み、少し顔が赤み掛かっている。そして決定的な証拠として二本の角ときた。さすがに鈍感な私でもわかる、アガイさんは
「お、鬼…………?」
「ん?……………あぁ〜んまぁ鬼って言ったら鬼だな、俺は。」
「え、何か違うのですか?」
「んまぁ〜正確に言えば、鬼っていうよりは『酒鬼』ってやつだ。」
「しゅき………?」
アガイさん曰く、酒鬼とは名前の通り『酒好きな鬼』のこと。常日頃酒を飲みまくり、宴の時は一番盛り上がる種族らしい。だいたいのやつはアガイさんみたいに友好的かつ好戦的なやつらばっかで血の気が多いとか多くないとからしい。つまり普通の鬼のように人間を取って食ったりしないとのことだ。
私はそれを聞いてホッと息をついた。だが今度はまた別の疑問が浮かんでくる。
「あの………アガイさんは、なんでこんな所で……?」
「あぁん?それを言うなら綷の方もだろうがよぉ。綷こそなんでこんなところをぶらぶらほっつき歩いてんだぁ?」
「え、いや、私はあっちにあった、トンネルから歩いてきて-」
「…………あ"??」
私が後ろ側を指差して言うと、アガイさんはいきなり不機嫌な顔をして低い声をだしてきた。ものすごい不安が身体中を駆け巡る。何か言ってはいけないことを言ったっぽそうだ。
けどアガイさんは瓢箪を一飲みしてため息をつき、私に殴ってくるもの何もしなかった。
「綷が、『トンネルから』、ねぇ〜……………。」
「えっと、………トンネルに、なにかあるのですか?」
「………………………本当にお前は何も知らないんだな。」
そう言ってアガイさんはケラケラ笑って、バッ!!と私に右手の人差し指をたてて言ってきた。
「十銭[じゅうぜん]だ。」
「…………え?」
「十銭俺のところに持ってきやがれ。そしたらここの荒地のことと、俺のこと、そして『ここの抜け出し方』を教えてやんよ。」
「い、いいんですか!?」
「おうよ、俺ら『酒鬼』は嘘がなによりも嫌いだからな。嘘なんてつきやしねぇ。」
私は食い気味に彼の提案にのっかった。だが一つここで問題が生じてきた。
「あ、アガイさん………私、十銭がどれくらいの値段なのか、わからないです………。」
「あぁん?……………あぁ〜今は銭って言わねぇのか?」
「はい、一円って言ってます。」
「んじゃ、こんな風なやつを十枚持ってこいってことだ。」
そう言って私に投げ寄越して見せてくれたのは、歴史の教科書に書いてあったようなメダル………確か、『洪武通宝』[こうぶつうほう]とかだったかな。それと似たメダルだったけど、書かれた文字が『友好好戦』って書いてある。アガイさんが言うには、このメダルは彼ら『酒鬼』の中で使ってた特別な銭らしい。
「で、でも私、こんなの持ってませんよ?」
「何言ってんだい、ないなら探してくるんだよ!」
「え、探す………?」
「おうよ。綷はここに来るまで、骨の集まったやつとか見なかったか?」
「み、見ました……。」
「んじゃその骨を弄ってみやがれ。多分一個一枚あるかもしれんぞ。」
「えぇ〜…………。」
アガイさんはケラケラ笑って瓢箪をまた飲み出した。私は少し後ろめたさを感じつつも、彼の言う通りにしてみた。
うぅ〜…………夢なのになんで私こんなことを………。
* * * * * * * * * *


* * * * * * * * * *
「ハァ………ハァ………やっと、見つけた…………。」
かれこれ三時間は探した気がする。身体中がクタクタで、今すぐにでも寝っ転がりたい気分だ。……まぁ、寝てるんだけどね。
「おう、きっちり十銭だな!!お疲れ様だぜ!」
「……………それじゃぁ、約束の、話、聞かせて、ください……。」
「おうよ、んじゃ隣に座れ座れ。」
そう言ってアガイさんはピョンって岩に飛び乗り、初めて出会った時と同じ位置に腰掛けた。……って、私岩登れないんだけど……。
それに気づいてくれたのだろう、アガイさんはすぐに私のところに戻ってきてくれてそのまま持ち上げてくれた。うっ、エリクビヲツカマナイデクルシイ…………。
「酒飲むか?」
「いや、私未成年なので……。」
「んだよ、こう言う時は酒って醍醐味は決まりなのによぉ。」
「なんですかそのショートケーキはいちごから食べるのがあたりまえみたいな言い方は。」
「がはははははは、それが何かしらねぇがなんか一本取られた気がするな!」
なぜだろう、話をするだけなのにもう疲れた気がする………。
私がため息をついたのに、アガイさんは察してくれたのだろう。やっと私が求める話をしてくれた。
ここはかつて、今から数千年前に遡る程前の話。この土地は元々大草原で、アガイさん達『酒鬼』だけではなく、さっきも言ったような『鬼』達みんなが、ひっそりと、でも愉快に豪快に暮らしていた土地だったらしい。アガイさん達にとって、ここが彼らの家みたいなところだった。
でもそんなある日のことだった。いつものように宴をしていると、突如武装した………私たち『人間』が乗り込んできたのだ。宴はもちろん中止、次々と人間に殺されていく眷属達は、怒りに怒りまくって人と鬼の『大戦争』になってしまったとのこと。
酒鬼のすごいところは、『酒を飲むと強く』なるということだ。この時点で圧倒的に人の方が不利ではあるものの、鬼は人ほど人数が多いわけではない。つまり、戦いは互角の始まり方だったらしい。そして戦いが続いて続いて続いて……………唯一生き残ったのが、今私の目の前にいる、この『双角瓢箪』[ソウルゴード]さんだけ。仲間も、敵も、みんな亡くなったとのこと。
「がははははは、自分で言うのもアレだが、久々に聞いたぜ『双角瓢箪』!!みんなからよく怖がられてたなぁ〜。」
「……………アガイさんは、寂しくなかったのですか?」
失礼なことかもしれないが、私は止めるのより先に口が開いてしまった。アガイさんはびっくりした顔で私を見つめ、………そのあと、彼は『笑った』。
「『お前がここにいる』。」
「………………?」
「ん、なんでもねぇよ。」
そう言ってアガイさんは瓢箪をグッと飲み、背伸びをして岩の上に立った。そして、私に手を差し出して彼は言った。
「ここから出たいんだろ?んじゃ俺が出口まで案内してやんよ。」
「え、いいんですか?」
「言っただろ、ここの荒地のことと、俺のこと、そして『ここの抜け出し方』を教えてやるって。」
私はその言葉を聞き、確かにそんな約束していたということを思い出した。少し抵抗はあるが彼の手に自分の手を重ねる。本当に鬼なんだな、って再度改めて認識させられるぐらい、彼の手はごっつごつで大きかった。そのまま私たちは岩を飛び降りた。
「なに、ここから出るのは簡単だよ。なんせここに出口あるんだからよぉ。」
「………え?」
そう言って彼は、ちょっと下がってな、と私を軽く押し退けた。そして彼は、
「ふぅ〜〜〜………………ふんっっっっ!!!!」
ズガガガガガガガガガガガガガガガガガ……………………………
「え、ええええええ!?!?!?!?!?」
自分が座ってた岩を軽く持ち上げた(持ち上げる一瞬グッとはなってたが)。もう今なんて片手で岩を持ち上げてるときた。象ぐらいの大きさのこの岩を片手で…………。
「ほら、ここに扉あるだろ?ここをくぐるだけだ。」
「な、なんでこんなところに…………。」
そう言いつつ少し体を前のめりにして覗き込むと、確かにそこにはトンネルから出る時に見たドアと同じ扉があった。扉っていうよりは、ダクトの開閉口みたいな気がするが。
「………あ。アガイさんは、ついてきてくれないのですか?」
「……………………ハァ。」
「え、なんでため息……?」
「綷、お前俺の言ってほしくないことズカズカ言うんだなこの野郎。」
「ご、ごめんなさい……?」
彼は片手にもつ岩をドーンと横に放り投げ、私を睨んで言った。
「俺は本当は、数千年ぶりに久々に会った人間と、もう少し酒を飲み合いたかった。だけどよぉ、綷は酒は飲めねぇし……いつまでもここにいさせるわけにもいかねぇ。」
「アガイさん……………。」
「それに………………ここには『あいつらがいる』んだ。俺がここから離れるわけにはいかねぇんだよ………。」
そう言ってアガイさんは、彼自身に似合わないような、そんな悲しい表情を浮かべていた。きっと、それほど仲間達のことが忘れられなくて、ずっと過去に縛り付けられているのだろう。
こんなにも優しくしてもらってるのに、今ここで私が彼の仲間思いの心を打ち壊すような言葉をかけるわけにはいかない。本心はついてきてほしかったが、言わない方が吉だろう。
「……んだよ、行くならはよ行けや。」
「あ、はい……。」
アガイさんは私の方を見向きもせず、また岩の上に飛び乗り瓢箪の蓋を開けた。なんだろう、その背中がどこか影掛かっている気がする。私は扉を開けて、……………すぐには入らなかった。
「……アガイさん、私もあなたと会えて、楽しかったです。アガイさんとお話しするのが、人生で生まれて初めて『鬼』と話すことが、すごく楽しかったです。」
「……………。」
「………無神経なのは、わかっているんですけど…………アガイさん、私と一緒についてきてくれませんか?お願いします!」
「………………。」
私は俗に言う土下座をした。アガイさんからの返答はなにもない。そのまま時間が数分経った。
「………綷、顔あげてくれや。」
「はい…………ぃ?」
いきなり目の前から、そんな低い声がかけられ、私は恐る恐る顔を上げた。そこには怒ったアガイさん…………-ではなく、めちゃくちゃ笑っている顔をした酒鬼が、いた。
「がははははははは、いいぜそこまで言うんならついてってやるよ!!」
「…………え、でも、お仲間さんは……?」
「ははははははは、あぁ〜大丈夫×2。どうせあいつらだって、わざわざ俺を引き止めるような奴らじゃねぇよ。あいつらだって俺と同じ仲間だ。きっと大酒がぶ飲みして、『おう行けや行けや!!!』っていうやつらなんだよ。」
「は、はぁ……………?」
「それに…………さっきも言ったが、もう少し人間と話したいと思ってたしな。ちょうどいいってもんだ。」
………ん?じゃぁさっきの悲しそうな目はなんだったんだ……?
私はそんな疑問が一瞬頭をよぎったが、それより早くも襟首を掴まれて中断された。…………ん?
ガシッ
「んじゃ、いくぞ綷!!」
「え、ちょっ、えっ!?」
そう言ってアガイさんは扉を豪快に開け、私を掴んだまま暗い闇の中に飛び降りたのだ!?
「ひゃっっっふぅぅぅぅぅぅぅーーーーーー!!!!風が気持ちいいぜえええ!!!!!」
「私は気持ち悪いですうううううううううう!!!!!!いやああああああああああああああ!!!!!!!!」
なんで梯子があったのにのらないのですかああああ!?!?!?!?!?
私がジタバタするも、アガイさん(は豪快に笑いながら)と急降下するだけだった。
私はひそかに心に決意した。
絶対にバンジージャンプなんてするもんかっっ(涙)!!!!!
「ひゃっっっっっほおおおおおおおおおおおおいいいいいいいい!!!!!!!!!!」
「もう嫌だああああああああああああ!!!!!!!!!!!!」
* * * * * * * * * *


* * * * * * * * * *
「ぅっ……………ぉぇ………………」
「んだよぉ、貧弱だなぁ〜貧弱貧弱ぅ。」
「ちょ、さくけん……………ぅづ……………」
「何言ってるかわかんねぇけど、ほらよ飲みな。」
そう言ってアガイさんが、持ってる瓢箪とそっくりな別の瓢箪を懐から取り出した。酒は飲めませんと言ったら、バーカこれは水だよと言われたので、私はちまちまと水をありがたくいただいた。あれ、水なのはわかるけど、いつも飲んでる水より美味しい気がする………?
「あ、綷お前今美味しいって思ってるだろ。」
「えっ!?なんでわかったんですか?」
「ぬぁはっは、何千年も酒を飲み続けたやつにはそんなの手に取るようにわかるっつぅんだよ!」
アガイさんは豪快にまた笑った。角も笑っている反動で小さく揺れている。本当に(右側のやつが)長いなぁ………。
アガイさんが言うには、この瓢箪のおかげらしい。酒鬼が使う瓢箪は特別な瓢箪で、中に入れた飲み物をなんでも美味しく感じさせ、無限に飲むことができる瓢箪らしい。ただしその中の構造は酒鬼達でもよくわかってないらしいしわかりたいとも思わないらしい。鬼って本当に気楽な性格なんだね……。
「あっ………。」
「……あん?どうしたんだよ、なんか思い出したような顔して。」
「アガイさん………これって私の夢じゃないんですか?」
「あー…………。」
私が聞き忘れていたことを聞くと、アガイさんは苦虫を噛み締めたような顔をして、顔を逸らしてしまった。
「んまぁ夢ということにしといたらいいんじゃね?しらんけど。」
「………え?」
「気にすんな。ていうか、綷の世界でも言わねぇか、『世の中には知らない方がいいこともある』ってよぉ。」
「…………………………………?」
「……やべっ、……んまぁ気にしない方がいいってこった。」
「は、はい……?」
言いすぎたって顔をしてアガイさんは話を無理やりやめた。私はそれに返事をしたものの、納得はしてなどいない。知らない方がいいこと……?どういうことだろう。
というかこれは夢じゃない気がするのだ。さっきの落下だって、落ちるにしてもすごくリアルなものだった。というか、噂によれば落下するような夢を見た時、だいたいの人は目が覚めると言うけど……?
とりあえず思考を止めて、私は別のものに思想変更[シフトチェンジ]した。
私は上半身を起こして周りを見渡した。ランタンが私の隣に置いてあるが、どういう原理なのかさっきとまったく変わらない明るさだった。しかも壊れている部分とか傷ついた部分がない。さすがに落下したなら傷ぐらいつきそうだが……?
私が座っているここは、薄暗いものの水族館のようなところだと言うことがわかった。あの水族館によくある、ガラスのトンネルみたいな場所で、微かにだが薄暗く光を乱反射していた。確かこれって『アーチ水槽』って言う名前じゃなかったっけ?
残念ながらイルカとかシャチとか…………というか魚類じたい何もいなかった。ただ水が満たされているだけのガラスの道だ。ていうかさっき落下しててどっから私たちは降りたんだ……?
「ほらよ、グスグスしてねぇでさっさ行こうぜ。ずっとここにいるのも時間無駄だろ?」
「あ、すみません…………。」
私が膝らへんを軽く叩いて立ち上がると、アガイさんはさっきと同じ少し苦い顔をしていた。あれ、何か間違ったこと言ったっけ?
「……なぁ、その敬語やめねぇか?俺肩苦しいやつ苦手なんよなぁ。」
「えっ、えっと………。」
「別に完全に崩せとは言わねぇけどよぉ、すこしぐらい気休めろよ。ずっと張りっぱなしじゃ、精神もたねぇぞ?」
「あ、ご、ごめんなさい………あ。」
「ほら敬語なってる。」
「……………………………ご、ごめん………?」
「おうよ。」
だいぶ時間かかってしまったが、アガイさんは満足♪とでも言うように満面の笑みになっつ頷いた。
元々私に友達、というかこんなに話す相手がいなかったから、少し慣れない……。でもアガイさんの言うことも一通りあると私は思う。酒を飲み合っている鬼は、確かに肩苦しいイメージってよりかは、さっきのように豪快に笑い合ったりしているイメージの方が強い。
でもさすがに名前は呼ぶのはさん付けじゃないと、私の気が済まないので、そこだけは譲れなかった。アガイさんは渋々了承はしてくれた。
私たちは歩みを始めた。私はランタンを、アガイさんは瓢箪を握って歩き始める。若干アガイさんが私の斜め前を歩いており、とぎとぎチラチラとこちらを振り返ってくれている。もしかして、心配してくれているのかな?
私は少しだけ、アガイさんの優しさに、心が温まった。
「にしてもねぇよなぁ〜。」
「…え、何g-」
「酒のつまみには刺身って相場は決まってんのによぉ、肝心の食材がいないっていうのはなぁ〜。ここのやつもとんだ意地悪なやつときたもんだなぁ〜。」
「…………。」
今ものすっごく物騒な話を聞いた気がするが、私は何も聞かなかった。そう私の軽い咳で聞こえなかったということにしよう。うん、そうしよう。
「なぁ綷、そういえば俺のことは話したけどよぉ、綷のこと詳しく聞いてねぇぞ。」
「……あ、そうだった……。でも、そんなに面白くないで、-面白くないよ?」
「いいんだよ、何度も言うが酒のつまみには塩っけあるやつと会話で成り立つんだよ。」
なんかさっき言ってたことと変わってるような………?まぁ気にしない方がいいかな。私は辿々しいものの私のことをアガイさんに話した。
私、『九恵 綷』[くいな/すい]はまともな人生を送ることが出来ていない。まだ私が5,6歳ぐらいの時、私の両親は交通事故で亡くなっている。すぐに身寄りがない私は施設に送られる……-かと思ったが、私はある青年の人の元に送られた。その人は、私の母の親友の弟らしく、ものすごく優しい人だった。
でも、私が安心できる人はあの人だけだった。学校は一般校の『海明高校』に通っているけど、根暗な私は毎日ひどいイジメを受けていた。それはもうひどいもので、机に落書き、物の盗難もしくは汚されるなんてまだ序の口だった。一番最悪だったのは、屋上から落とされかけたことかな。
「………んだよそれ、それで綷の恩師は何も言わねぇのかよ?」
「うん、先生はきっとめんどくさいことに絡まれたくないと思ってるんだろうね、ずっと見て見ぬふりされてきたよ。」
「…………。」
私がそう言うと、アガイさんは眉間に皺を寄せて、少し荒っぽく瓢箪の酒を飲んだ。もしかして、同感してくれている……?
「でも、不思議なんだよね………目が覚めたら、真っ暗いトンネルの地面に寝っ転がっていて、これが夢なのか違うのかいまだにわからなくて、そして寝る前までなにをしていたか全く覚えていない。」
「………。」
「でもね、アガイさんと会ってから私、少しだけ心が明るくなった気がするの。なんでかな……えへへ。」
私が苦笑すると、アガイさんは真剣な表情で言ってきた。
「………『寂しかったから』、じゃねぇのか?」
「…………え?」
「その唯一優しかったやつだけじゃ、綷は満足しなかったんだろ?言わなくてもわかるよ、どうせ毎日のいじめに苦しんで会話も減ってきたんだろ?」
「……うん、そう、だね………。」
「ふんっ、ま!この俺にかかれば気まずいなんていう空気すらねぇげとな!」
「……………ふふふふ、どこからその自信が湧くの?」
私はつい笑ってしまった。アガイさんはすごいと思う。不安や心配で気が張り付めていた私の心を、優しい手つきで和らげてくれたからだ。
と、アガイさんがびっくりした顔で私を見ていた。
「……え、なに、?」
「………いんや、お前初めて笑ったなって思っただけだ。」
「あ……そうか。」
「はは、綷のその笑顔なら、きっと男なんてイチコロだと思うぜ?」
「えぇ〜そこまででは、ないよ……?」
「んなわけねぇだろ、少なくとも俺は可愛いと思うぜ。」
「えっ、////」
アガイさんは真顔でそう言って、先を言ってしまった。私は熱を帯び始めている(気がする)顔を、ぶんぶん振って熱気を飛ばしながら小走りでアガイさんの斜め後ろについた。うぅ、顔が熱い………な、なんか少し恥ずかしい………っ////
「にしてもなんも変哲のねぇもんだなぁ。最初は、おっ綺麗なところだなって思ったけど、こうしてずっと続くってなると飽きてくるってもんだぜ。」
「そ、そうだね……う、うん。」
なんとか赤み掛かった顔を冷ましたら、アガイさんは瓢箪を酒を飲みながらそう呟いた。彼の言う通り、私たちはさっきからずっと一本道を歩いているだけだった。
と、そんなアガイさんの呟きを神様が聞いたのだろう、いきなり分かれ道に私たちはたどり着いた。三つの道に分岐されて、先が見えない。
「あぁ?分かれ道じゃねぇかよ。」
「えっと………どの道に行ったらいいかな……?」
「しらねぇよ、とりま真っ直ぐ進もうぜ。」
「えぇ〜、本当にいきのかな…………。」
私は不安を感じつつも、ぐんぐん先に行く彼について行った。
* * * * * * * * * *

* * * * * * * * * *
「…………あん?また分かれ道だぁ?」
「……あれ、また三つ??」
「んまぁまっすぐ進むか。」
「う、うん……………。」
* * * * * * * * * *
「…………は??またぁ??」
「あれ、また三つだ……。」
「……………。」
「ま、真っ直ぐ行くんだね……。」
* * * * * * * * * *
「………………………………おい、さすがにおかしいだろ。」
「そ、そうだね………また、三つだ……。」
「………次は左通ってみるぞ。」
「う、うん…………。」
* * * * * * * * * *
「…………おいおいおいおい(怒)!!!なんでまだあんだよ!!」
「ま、また三つ………………もしかして、ループしてる、、?」
「いったん目印でこれをここの手すりの所に置いておくとしようぜ。」
「そ、そうだね。」
* * * * * * * * * *
「……………………おい、なんで銭があるんだよ。」


* * * * * * * * * *
「ハァ………ハァ………んで……抜け出せない………んだよ………。」
「ハァ……ハァ………アガイ、さん………足………早すぎ………。」
私は膝に手をついて(アガイさんは地面に片膝立てて座って)、全身で息をしていた。さっきから私たちは永遠とこのアーチ水槽の道をループしているばかりで、一向に抜け出せる気配がない。
さすがのアガイさんも強引では無理と思ったのだろう、私とアガイさんは少しの間別々で探索することにした。私はとりあえず、一本道だった道を戻りつつ、何か手がかりになるものがないか探すことにした。アガイさんは分岐する道をもう少し探索するとのことらしい。
私は淡い光を放つランタンを握りしめて、元来た道を戻った。 さっきまで隣にいた存在がいなくなってから、少しだけ私は心細かった。アガイさんと話すのに夢中で気が付かなかったが、ここも(トンネルほどとは言わないが)暗い方だ。ランタンの微かな光と、水による光の乱反射で少し先が見えるかなぁってとこだ。
私は曲がり角を右に曲がり、まっすぐ進んだ。こうして一人になると、いろんな思想がポツポツと浮かんでくる。アガイさんのこととか、自分のこととか、これは夢ではないんじゃないかとか、アガイさんがかっこいいなぁとか、色々………。
人って地球上で一番不思議な生物と言われるが、私はそれに共感してしまうと思う。噂が言う通り、人って本当に謎の行動をするからだ。今だってそうだ、私一人だけだったらいろんなことを考えてしまっているし、どんどんネガティブな思考にもなっていっているからだ。
………。
………もしも、だ。私がもっと早く産まれていて、アガイさんの隣にずっといたのなら……………彼は今とは違ったのだろうか?優しさや人好きな性格だけど、裏には寂しさや微かなる人への……………そう、『殺意』がなかったのかな。
私はあの時、一瞬だけ感じ取っていた。アガイさんが私に声をかける時、一瞬だけ『殺意』がこもった気がしたのを。もしかして、彼は今猫を被った状態で私と話しているのかな………。
そう考えた時、一瞬だけ私の左胸がズキッと痛んだ。うっ、なんで………?
「…………あ、着いた。」
気づいたら私は、さっきまで二人でいた初めの場所にたどり着いていた。さっき水飲んむ時に瓢箪の開け方がわからず、少しだけ水をこぼしてしまったが、その後が今もくっきりと残っていた。幸いそんなすごい量をこぼしたわけでもないし、スカートがびしょびしょにならなくて助かった…………。
「……………………ループしている、………ってことだよ、ね……?」
「あぁクソイライラする!!!こうしたらもうゴリ押しでいくぞ!!」
「えぇ〜…………考えないの…………?」
* * * * * * * * * *
私はアガイさんとの会話を思い出しながら、周りをランタンで探った。
『綷の世界でも言わねぇか、『世の中には知らない方がいいこともある』ってよぉ。』
『………『寂しかったから』、じゃねぇのか?』
『ふんっ、ま!この俺にかかれば気まずいなんていう空気すらねぇげとな!』
『少なくとも俺は可愛いと思うぜ。』
うっ////、なんか恥ずかしいことを思い出しちゃった////。
私はまた顔が赤くなるのを肌で感じつつ、密かに心に決めることにした。
もしも、私がここから出れたら…………アガイさんと二人で、酒を飲もうって。
…………それならそれで、今こそ何もしないでアガイさんばかりに頼るばかりにはいかない。少しでも役に立つことをしないと……!私は自分を励まして、一歩強く、地面を踏み締めた。




………………と思っていた時期もありましたと。
「おぉ、おかえり。」
「………なにも、見つからなかった……。」
「ははは、気にすんなや、俺もだし。」
「あははははは……………。」
私は思わず苦笑して、アガイさんはデッカいため息をした。
とりあえず私たちはお互いの報告をしあった。私の方は、一本道を戻っていくとさっき目が覚めたばかりのところにたどり着いたということ。そしてその場所の奥は行けそうでただの壁だったってことだった。ちなみにその壁には、『避難経路は通路の頭上にある非常口のマークを辿ってください。』と書かれた紙が貼ってあった。避難経路のやつって書かれた地図とかなかったっけ………?
アガイさんの方は、どこでループしているのかとかを探索していたらしく、まっすぐ進んだ時はわからないが左や右に曲がるときは必ず一度道を右に曲がるのだが、その時にループ現象が起きているらしい。ちなみにループ現象が起きてすぐに戻ったら私と鉢合わせしたため、元いた場所に引き返す?のはできないっぽそうだとのこと。そういえばなぜか私も戻ってくる時、右に曲がるあそこの道だけ一瞬ランタンの火がチラッと消えるんだったな………。

「………なぁ、綷。もう一回言って欲しいんだが、さっきなんて書いてある紙が貼ってあったんだって?」
「えっ、えっと……『避難経路は通路の頭上にある非常口のマークを辿ってください。』……だったかな。」
「-----、…………………………ちょっと待ってろ!!」
「えっ、アガイさん!?!?」
何かボソッと呟き、天井を一度見てから猛ダッシュでまっすぐ走っていってしまった。私が呼び止めるのも束の間、すぐにアガイさんは後ろにやってきた。
「…………っ、おい綷。ちょっと悪いがジッとしてろ!」
「えっ、なにがですk-キャッ!?!?」
アガイさんは戻ってきて早々、私をいきなり横に担いで走り出した。えっ、えっ、なんで!?なんで!?!?////これって、俗に言う、『お姫様抱っこ』だよね!?!?///
私はアガイさんの酒臭い、でも少しだけみかんっぽい……これは金木犀かな、そんな匂いがした。ていうか、その匂いのせいで、さっきから私の心臓は早鐘を鳴らしまくっていた。ランタンが強く光っているように見えるのは気のせいだろうか?
「……………やっぱりな。」
「う、うぅ〜〜〜〜〜//////」
「………ん、あぁ、すまんないきなり。ほらよ。」
「うげっ!?………ちょ、ちゃんと降ろしてく、ださい、よ……。」
「……あ、すまねぇ。」
私は腰をさすりながら、ふらふらと立ち上がった。アガイさんは、瓢箪をグイッと飲んで、満面の笑みで私に教えてくれた。
「綷、俺はわかったぜこのループの打開方法。」
「…………え、本当に!?」
「あぁ、綷お前のおかげだぜ!」
「え、私はなにも………」
「いんや、役に立つ情報をくれた。ありがとな。」
「………えへへ。」
私は少し照れてしまった。本当に、久々に感謝された気がする。少しだけ、嬉しいと思った。
私とアガイさんは歩きながらアガイさんの説明を聞いた。ちなみに今は右の道を通っている。
「これは無闇に行くだけじゃぁ、永遠にループしてることなのはわかるよな?」
「う、うん………。」
「さっきお前が俺に教えてくれただろ、『避難経路は通路の頭上にある
非常口のマークを辿ってください。』って。」
「え、それのなにが………?」
「俺らがループするごとに、天井にあった非常口の標識が動いてんだよ。ほら、よく見てみろ。」
そう言ってアガイさんはまた三つの道に辿り着いた時、天井を指差した。今非常口のマークが書かれた標識は、ちょうど左側の道にある。
そのままアガイさんはまっすぐ進んでいくことにした。本人曰くわざとのことらしい。そしてそのまま右に曲がりさっきの場所戻って天井を見ると………………
「………あっ。」
「な、だろ?」
確かに、彼の言う通り非常口のマークの場所が変わっていた。今は真ん中の道のところにある。てことは……
「このマークを追えば………抜けられるってこと、?」
「おう、そう言うことだと思うぜ!」
そう言い終わるか終わらないか、アガイさんは元気に歩み始めてしまった。私は慌てて立ち上がり、埃をはたき落としてから小走りで彼の背中を追いかけていった。
アガイさんは本当に、すごいな…………。
今日で何度目の、彼への『憧れ』を私は、持っただろうか?
* * * * * * * * * *


* * * * * * * * * *
鬼は鬼でも、全員馬鹿ってわけではないらしい。無失礼で申し訳ないことだが、私は鬼はバカ………とまでは言わないが、頭がいい方ではないと思っていた(めちゃくちゃ失礼)。
全『酒鬼』の中でもアガイさんの頭の良さは二番目ぐらいらしい。よく周りから、自分が頭めっちゃ悪そうな見た目だ、と言われることばかりでだからもう慣れてしまっているらしい。うぅ、すみません、私も思っていました………。
アガイさんと会話していると、気づいたら私たちはアーチ水槽を(多分)抜け出していた。目の前にまた扉があったからだ。ちなみに今までのとちょっと違い、鉄の頑丈そうな扉だった。
ノブをひねると、やっぱり何も抵抗などなく普通にドアは開いた。……いや、鉄の重さという抵抗はされていて、すごく開けづらいけどね。
ドアの先は、プラネタリウムが水族館になった感じの部屋だった。視界いっぱいに広がる水が満たされている水槽の部屋。アーチ型ではなく、まるまる一個の部屋という形で作られており、360°見渡すことができる部屋だった。さらに、ここでやっと水族館らしい魚達が泳いでるのを目で確かめることが出来た。
「うぉぉ〜……………………。」
「すごい…………。」
一言で言うなら、すごく綺麗。私とアガイさんは、口から自然と感嘆の声があがっていた。
ガチャン
「………………………………ん?」
「アガイさん、すごく綺麗ですね………私、水族館って初めて見ました。」
「………………。」
「小さい頃からの夢だったんです。プラネタリウムや、水族館。映画館とかゲームセンターとか…………家族でも、周りにいてくれる友達でも誰でもいい、誰かと行ってみたいって。」
「……………………………………………。」
「だから私、今すごく幸せです……………アガイさん、本当にありがとうござい-、、、、アガイさん?」
私はハッと我に帰り、さっきから一言も言葉を発しないアガイさんを探した。すぐに彼は見つけることが出来たが、なぜか扉のところに苦しい顔して立っていた。嫌な予感がする………。
「………綷、一つ言っていいか?」
「………………言わないで欲しいって言ったら?」
「…………無理やり言う。」
「……………お願いします、教えてください。」
私は真っ青な顔になりながら、頑張って声をだした。声が震えている、体も震えている。
そして私の不安は、次のアガイさんの言葉で一気に限界まで達した。
「……………閉じ込められた。」
「…………………嘘。」
「鍵が閉められた。とりあえず、どうするか…………。」
「……………っっっっ……………………あ、アガイ、さん…………。」
「………ん、どうした?」
「……………さ、………サメが…………………こっちを、見ています…………。」
「おいおい、マジかよ。」
私はダッシュしてアガイさんの袖にガシッとかぶりついた。アガイさんの真正面には、こちらをジィーと見つめるサメが一匹いた。と思ったら
ガアアアアアン!!!!………………ガアアアアアン!!!!
「きゃああああ!?!?!?!?」
「おいおいそんなんありかよ!?!?」
そうサメがいきなりガンガンと体当たりをしてきたのだ。まだガラスは何も起きてないが、これも時間の問題だ。
「………しゃぁね、やるしかねぇか!」
「なにをですか、って何で酒飲んでるんですかぁ!?!?!」
「黙って、待っとけやあああああああああ!!!!!!!!」
ごくごくごくとアガイさんは手元の瓢箪を一気に喉に流し込んだ。え、気が狂ったんですか………?
そう思っていた私は、アガイさんより馬鹿なのだろう。アガイさんが言ってたではないか、酒鬼のすごいところは、『酒を飲むと強く』なるということだ『酒鬼のすごいところは、『酒を飲むと強く』なる』って。
アガイさんが口元を手で拭った瞬間、とてつもないオーラが彼から噴き出してきた。体をビリビリと振るわせるぐらい、ものすごいオーラが。
「俺はよぉ………『あん時の力』を目覚めさせないようにってからよぉ……………自分の中で封印してたつもりだけどよぉ…………あんまし俺を怒らせるんじゃねぇぞ、『アブソリュート』……………!!!!」
「あ、がい、……さん、、?」
アガイさんの声が、ドスが利いたようなめちゃくちゃ低い声になった。よく見ると、アガイさんの角が『左右均等の長さ』になっている(どちらも長い)。後ろ姿でも伝わってくるアガイさんのオーラは、とてつもなく強者だったっていうことを物語っていた。
「お、らよっっっっっっっっっっっっっと!!!!!!!!!」
ドッッッッ--------------ッッッカアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアンンンンンンンンン!!!!!!!!!!!
「ひ、ひぇ………………。」
アガイさんが殴りつけた扉は、ものすごい勢いで前方に飛んでいった。一瞬残像が見えたような感じも気がするが、きっと気のせいだろう。うん気のせいにしてないと私の気が済まない………。
「おらいくぞ!!!!」
「は、はい!!」
私たちは急いで部屋を出てそのまま走り続けた。今立ち止まって見渡すわけにはいかないが、さっきのアーチ水槽とはまた別の道になっていた。アーチ水槽はアーチ水槽だけど、さっきまでいなかった魚達がたくさん集まってて、一斉にガンガンとガラスに体当たりを繰り返しているのだ。普通なら死んでしまうのに、、!!
「おい、歩くの遅えよ!!」
「あ、ご、ごめん、なさい!!これで、も全力、なんですうう!!!」
「チッ………あ〜も、ほら捕まれ!!」
「キャッ!?」
アガイさんは焦ったそうに舌打ちをして、私を軽々と持ち上げて自分の背中に乗せた。あれ、お姫様抱っこしてくれた時より………『デッカくなってない』!?!?私が慌てるよりも先に、アガイさんは瓢箪をごくごくさらに飲んでから言った。
「……っ、んじゃ、振り落とされないように、捕まっとけよぉ〜。」
「えっ、えっ、何が起こるんですか!?どういうことですか!?てかアガイさんはなんか酔ってませんか!?呂律回ってませんよ!?」
「オラッよ!!!!!!!!!!!」
「キャアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!」
私は訳がわからず、アガイさんの首にガッシリと腕を回して捕まった瞬間だった。アガイさんが腰を低くしたと思ったら、次の瞬間地面を蹴ってものすごいスピードで走っていた。早すぎて何も見えない、ていうかさっき地面を蹴った時めっちゃヒビ入った気がする。
私はなんとか振り解かれないように必死に掴んでいるが、風の抵抗が凄すぎる。やばい、離れそ-
「あっ。」
ガシッ!!!
一瞬腕が離れてしまったが、私はまだそこにいた。気づいたら、アガイさんの右腕が棒って感じに、私の背中の壁になってくれていた。私は恥ずかしい思いもあるが、これ以上迷惑をかけるわけにもいかないので、そのままジッとしてることにした。
とそこで私は気づいた。風の抵抗力は相変わらずものすごいが、目の先に扉があることがわかる。あれ、さっきまで何も見えてなかったのに………もしかして、スピードが落ちてる!?
「おい、あの扉に体当たりするぞ。」
「えぇ!?!?それ大丈夫なんですk-」
ドガアアアアアアン!!!!!!!!
「っっっっだぁあああ、抜け出せたあああ〜〜〜。」
「うわきゃぁっ!?」
私が言い切る前に、アガイさんは扉に豪快なタックルをかましてしまった。そのまま急激に体が縮んでいき、さらにスピードも落ちていって、最後はドサッと前のめりに倒れてしまった。なんだろう、この構図だと、空から私が落ちてきたたまたま通っていたアガイさんを尻にひいてしまっているような感じがする。私はすぐに背中から飛び降りてアガイさんに声をかけた。
「アガイさん、アガイさん!?大丈夫ですか!?」
「…………………。」
アガイさんは全く返事がなかった。息をしているように見えないし、もしかして全力を久々に使いすぎて死んでしまった………!?私は泣きそうだった。
「嘘………アガイさん、………そんなっ…………」
「……………ぐぅ……………。」
「………………え?」
………訂正しよう、よくよく見たらちゃんと息をしていた。アガイさんを優しく半回転させると、スヤスヤと満面の笑みで寝息をたてていた。………あ、そういえばこれも言ってたなアガイさん。
『酒鬼って酒は無限に飲めるのに、人間はほんのちょっとしか呑めれないなんて貧弱だなぁ。』
『えぇ無限に飲める方がすごいですよ。』
『ははははは、と言っても、あんま飲みすぎると俺ら覚醒しちゃうんのはさっき言ったよな?』
『あ、はい。言ってました。』
『んで、覚醒した後、俺らはかならず寝ちゃうんだよな。』
『え、なんですかその可愛い設定。』
『おいメタいぞ。』
「……はははは、すっかり忘れてた………。」
私は苦笑して、近くの壁にアガイさんを寄りかけて、私の上着を被せた。ちなみに私は目が覚めた時から、私が通う『海明高校』の真っ白い制服をきっちり着込んでいた。ちなみに牛乳臭とか水で濡れていてめっちゃ皺がある、というのがなぜか無く、完全に真新しい感じだった。
私はアガイさんの寝顔に苦笑しつつ、周りを見渡した。扉が豆粒のようになっているぐらい離れていることがわかった。それと、奥の方がすごく明るいこともわかった。
…………あれ、私ランタンどこやったっけ、…………ってあ、アガイさんの右手に握られていた。私は優しく右手を開いてランタンを返してもらい、そのまま奥の明かりに行ってみた。ランタンの火は、あんなにすごい風を受けたというのに相変わらず『淡い灯火を灯している』。
さすがにあんなに明るいなら、ランタンはいらなさそえだけど…………なんだか手放していてはいけない気がするし、持って行くことにしよう。私はランタンの持ち手を強く握りしめ、光のある方向に向かった。
なんだろう。
なんだか、
………新しい何かが始まる気がする。
* * * * * * * * * *


* * * * * * * * * *
自分が、なんでここにいるのか、よくわからない。
気づいた時には、ここにいた。
「お〜い、■■■〜?」
「………ん?……お、おぉ〜。」
そう、気づいた時には、『ここにいた』。
…………………………………………気持ち悪い。
なんで?
なんでなんでなんで???
なんでんなんで気持ちなんで悪いなんでなんで気持ち悪いなんでなんでなんでなんで気持ち悪い気なんでなんでなんでなんでなんでんなんで気持ちなんで悪いなんなんでなんでなんでなんでなんでんなんで気持ちなんで悪いなんでなんで気持ち悪いなんでなんでなんでなんで気持ち悪なんでなんでなんでなんでなんでんなんで気持ちなんで悪いなんでなんで気持ち悪いなんでなんでなんでなんで気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪いなんで気持ちなんで悪い悪い悪い悪いなんでんなんでい気持なんでんなんで持ち悪いなんなんでなんでなんで気持ちなんで悪い悪い悪い悪いなんでんなんでで気持ちなお前をで悪い悪い悪い悪いな死ねでんなんででなんで気持ち悪いなんでなんでなんでなんで気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪なんでなんでなんでなんでなんでんなんで気持ちなんで悪いなんでなんで気持ち悪いなんでなんでなんでなんで気持ち悪い気持ち悪い気なんでなんでなんでなんでなんでんなんで気持ちなんで悪いなんでなんで気持ち悪いなんでなんでなんでなんで気持ち悪い殺す持ち悪い気持ち悪殺気持ち悪いなんで気持ちなんで悪い悪い悪い悪いなんでんなんで持ち悪なんでなんでなんでなんでなん死んなんで気持ちなんで悪いなんでなんで気持ち悪いなんでなんでなんでなんで気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪いなんで気持ちなんで悪い悪い悪い悪いなんでんなんでい気持ち悪いなんで気持ちなんで悪い悪い悪い悪いなんでんなんでい気持ち悪いなんで気持ちなんで悪い悪い悪い悪いなんでんなんで持ち悪い気持ち悪い気持ち悪いなんで気持ちなんで悪い殺悪い悪いなんでんなんでなんでなんでなんでなんでなn-

………………………あぁ、そうか。
ぼ(俺)くの世か(たり)をこ(ろ)され(がっ)たんだ。あぁ、そ(りか)うだ。



僕が(お前を)<■■■>ばいいのか。
* * * * * * * * * *


* * * * * * * * * *
「……うわ、眩しい………。」
久しぶりの明るさに、私は目を細めた。それと、無意識に左胸を軽く握っていた。
なぜかだ。なぜか、さっき……ものすごい『殺気』のようなものを感じたのだ。黒く塗りつぶしたような……鉛を。
私は慣れてきた目を開き、あたりを見渡した。私が今立っているここは、まるでサーカス団のテントみたいなところだ。でも、それにしてはサーカスに使いそうな道具が何も見当たらないな〜………。
「特に……何もなさそう、か………。」
私はそう判断し、元来た道を引き返そうとした、その時だった。
ジャ〜ン、ジャララッラッラララ〜ン…ジャ〜ン、ジャララッラッラララ〜ン…ジャ〜ンジャ〜ンジャ〜ン、ジャンジャン♪………
『Ladies and Gentlemen〜〜〜!!!Welcome to "Mr.Amazing Mary's Party Show"〜〜〜〜〜!!!!!!!!』
「え、なに、なになになに!?!?何が起こってるの!?!?」
突然愉快な音楽が、ぶんちゃかもぴー流れながら、楽しそうな男性の大声がスピーカー越しに周りに響いた。一言で言おう、めちゃくちゃうるさい!!!!
私はいったいなにが起こったのかわからず、ただランタンを強く握りしめながら周りをキョロキョロするばかりだった。それでも、スピーカーから聞こえてくるセリフは止む気配を見せてこない。
『I welcome you.私はあなたを歓迎します!ご来場いただき、誠に!!ありがとうございます〜!!Thank you very much for coming!!』
「いや歓迎されたくないです!!!」
『Let's start an amazing and enjoyable show!!さぁ!!楽しくて愉快なショーを始めましょう!!この賑やかな夜空の下で!!そう、Under this bustling night sky〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!』
ジャンジャカジャ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ン♪
音楽も放送も止まった。つい数秒前までそうだったのに、ものすごく沈黙の間が懐かしく感じる気がする。……え、てかいったい……
「………………………………………え、いったいなんだったの、、?」
「ハハハハ、すみませんね〜。久しぶりのお客さんに、皆さん、つい浮かれてしまったのですよ。」
声が聞こえた方を振り返ると、さっきまでなかったはずの道から、誰かがこっちに来ていた。見た目は真っ黒い燕尾服に真っ黒いシルクハット………そして謎の紫色に光る真っ黒い杖……。その姿はまるで、明治を匂わせる紳士のような姿だった。
「やぁやぁやぁ、こんにちわこんばんはもしくはおはようございます。はじめまして?久しぶり?さてどんな挨拶がよいだろうか?」
「……………………はい??」
「え〜と今の時間は〜…………ちょうど正午!!ならこんにちは、が正解だね!では改めましてこんにちは。僕の名前はメリー、そう『"愉快な"メリーさん』[Mr.Amazing Mary]とはこの僕のことさ!!」
「え、え〜〜〜と………」
「ハハハハ、どうだい?さっきのショーの開会式[プロローグ]は?」
「えと、その、………圧倒、されました。」
「ハハハハハハハハ!!そうでしょう?いいねぇ〜愉快っていうのは!!アハハハハハハ!!!」
うっ、ものすごく取っ付きにくい(付き合いづらい)人だ………。
真っ黒い紳士、-『"愉快な"メリーさん』[Mr.Amazing Mary]こと『メリーさん』は、私の大の苦手とする人物そのものだった。陰気な私に反して、太陽以上にキラッキラな陽気な人は私は苦手だ。嫌いとまでは言わないが、話すのはとにかく避けたい感じ。
うぅ〜、どうしよう………早くここから出たい……。
「ハハハハ、それで君の名前はなんていうのだい?」
「え、…………わ、私は、綷………『九恵、綷』………です。」
「ほぉ〜綷ちゃんか!!いい名前だけど、すごく珍しい名前だね〜?」
「うっ、……………は、はい………。」
「いいねぇ〜いいねぇ〜!!若いのっていうのは、本当にいいね〜!!羨ましいよ、青春をこんなにも謳歌できるなんて!!」
「え、は、え………と、……」
「……おい落ち着けよ、動く騒音野郎。綷が引いてるだろ。」
私がどうしたらいいかわからず右往左往していると、私の元来た道の方(背中側)からそんな声がかけられた。あ、この少し低めの男らしい声は……!
「あ、アガイさん!!」
「おう、綷。おはよ、さっきはすまんな。」
「やぁやぁやぁ我が親友なるかつ相棒の『アガイ』!!!『双角瓢箪』がこんなところでなにをしているんだ〜〜〜ね??」
「お前んとこのあの馬鹿どもがうるさくするあの騒音のせいで、こちとら深寝してても起こされるっちゅうねん(怒)。いっつも言うがうるさすぎんだよお前らの自己満お芝居は。」
「ふっふっふ〜〜、やっぱり君は相変わらず口が明後日の方向を向いているようだね!」
「ぶっ飛ばすぞテメェ………(怒)」
「ナッハハハハハ〜〜!そうカリカリしなさんな我が愛しき相棒よ!」
「お前の相棒になった気なんかこれっぽっちもねぇよ。」
「それはメリーさん、悲しい〜んだね。」
デレレレ〜ン……
メリーさんが頭を抱えて悲しそうな表情をすると同時に、悲しそうな効果音が流れた。ダメだ、本当に付き合いづらい方だ……。
「………おい、メリー。俺はお前の喜劇を見に来た訳じゃねぇんだよ。」
「おんやぁ?じゃぁいったい何しに来たと言うんだい?」
「……………"アビスのメリー"。」
「………っっっっっ。………………………………………ふんっ、ついてこい。」
「え、…………?」
それは本当に唐突だった。
場面の流れが早すぎてよくわからないのだが、今アガイさんが何か言った瞬間、愉快なBGMが一瞬止まり、さっきまでニッコニコだったメリーさんの顔に影がかかった。そして、メリーさんは回れ右しながら、さっきまでとは全く違う低い声で私たちにそう言い残し、メリーさんが現れてきた道の先で姿を消した。
「あ、アガイさん…………。」
「………大丈夫だよ、あいつは猫をいつも被っているだけだ。本当のあいつは、今見たと思うがあんな風に"凍男子"[ドライ]気味なやつなんだよ。」
「そ、そうなんですね…………。」
「ほら、それよりも行くぞ。」
「は、はい……!」
私は頷いて返事をして、アガイさんの隣に並んだ。
なにが新しい何かが起きそうな気がする、だ。
まためんどくさいことが起きそうだ。
私とアガイさんは、扉をゆっくりと、開けた。
「……よぉ、人を呼んでおいては遅いお出ましですね。」
「ふんっ、こちとらお前ら程せかせかしてねぇからな。」
「ハッ、ほざくな。」
部屋に入った瞬間、ビリビリと空気が張り詰めた気がした。アガイさんは上から目線のような言い方になっているし、メリーさんもめちゃくちゃ不機嫌そうに頬杖している。ちょ、私、怖いんですけど………。
私たちはメリーさんにすすめられて、近くの席に座った。メリーさんの座る席の真正面に私、その隣にアガイさん。私はランタンを握りしめたまま座る。
「それで、アガイ。お前は何を、この俺に聞きたいんですか?」
「ふんっ、ちげぇよ。話したいのは俺じゃなくて、綷…こいつだ。」
「え、私ですか!?」
「あぁ、なんでも聞いていいぞ。『"アビスの"メリー』はなんでも知っているからな。」
「チッ………その名で呼ぶんじゃねぇよ、ぶち殺されてぇのですか?」
私はアガイさんにそう言われたものの、戸惑うことしかできなかった。いきなり聞きたいことを聞けと言われても、たくさんありすぎて何から聞いていいのかわからないし、そもそも本当にこの人が知っているのかすらわかってないのだ。
私はすがるようにアガイさんの方を振り返った。アガイさんは、瓢箪に口付けていたが、私と目があってニコッと笑ってくれた。まるで、大丈夫だ、と言ってくれてるような気がする。
「………あの、メリー、さん。」
「はい、なんですか?」
「その、たくさん聞きたいことが、あるんですけど、……いいでしょうか?」
「えぇ、お好きに。僕が答えれない質問はほぼほぼないので。」
「………それじゃぁ、まずここはいったいどこなのですか?夢なのですか?そもそも私はなんでここにいるんですか?いったいなんでこんなことになっているのですか?」
「ちょ、質問していいとは言いましたが、そんなに一気にされても答えれませんよ(怒)。」
「……あ、す、すみません……。」
「ハァ〜……………。」
メリーさんはため息をついて、一つずつ私の質問に答えてくれた。
「綷さん、今から僕は何も嘘を言わずに、あなたにありのままの事実を伝える。それを聞く覚悟はできているか?」
「っっ、…………!」
メリーさんは、メガネ越しから私を睨み、低い声でそう問う。私は、少しウッとなるも、覚悟を決めて、彼の質問に強く頷いた。アガイさんとメリーさんが同時に、鼻で笑った(アガイさんはうんうん、と頷いていた)。
「綷さん、直球で言います。」
「お、お願いします……。」
こんなこと、誰が予想できただろうか………?メリーさんは、一回間を置いてから、私に衝撃な言葉を叩きつけてきた。
「綷さん、[太字]あなたは今、死んでいます[/太字]。」

第一話「『双角瓢箪』と『愉快なメリーさん』」-完-

作者メッセージ

第一話完成しました。
ちょくちょく再編集は加えますが、誤字脱字の部分や内容の質問をくれると嬉しいです………

2026/02/28 12:53

甘天 雪美だいふく
ID:≫ 1.HeR52HB1Cxg
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