愛のお薬
#1
お薬の代償
舞台は、感情が「数値」で管理されるようになった近未来。
水は、自分の感情ステータスが常に『空っぽ(0)』であることに絶望し、
街の片隅にある、看板のない診療所を訪れた。
そこで待っていたのは、自分よりも少し年下の、
真っ赤な髪をした天才医者、りうらだった。
りうらは、カルテも見ずに淡々と告げる。
赤「ほとけ、また来たの? 君の心、もうボロボロだよ。
普通の薬じゃ効かない。……今日は、特別なやつにする?」
りうらが差し出したのは、ほとけの瞳と同じ色をした、綺麗な空色のカプセル。
「これはね、『自己愛』の処方箋。これを飲めば、
君は世界で一番、自分のことが愛おしくなる」
ほとけは縋るようにその薬を飲み干した。
瞬間、モノクロだった世界が鮮やかに色付き、
自分自身のことが涙が出るほど愛おしくなる。
水「りうちゃん、見て! 僕、生きてていいんだって思える!」
無邪気に笑いかけるほとけを見て、りうらは一瞬だけ、
形を崩した悲しげな微笑みを浮かべた。
_____________________
しかし、薬の効果は長くは続かない。
深夜、薬が切れたほとけは、以前よりも酷い自己嫌悪に襲われ、
震える足で診療所へと這いずった。
水「りうちゃん、もっと……もっとあの青い薬をちょうだい!」
りうらは、冷え切ったほとけの体を優しく抱きしめる。
赤「……ほとけっち。その薬の原材料、知ってる?」
耳元で囁くりうらの声は、どこか遠い。
「俺がほとけを想う気持ちを抽出して作ってるんだ。
ほとけっちが自分を愛せない分、俺の愛を削って、分け与えているんだ」
_____________________
薬を処方するたびに、りうらの心からは「ほとけへの愛」が確実に消えていく。
ほとけが偽物の愛で満たされるほど、りうらはほとけを
「愛せなくなっていく」という、残酷な等価交換だった。
赤「もうすぐ、俺の[漢字]在庫[/漢字][ふりがな]こころ[/ふりがな]はなくなる。そうしたら、俺はほとけっちを見ても何も感じなくなる。……それでも、まだ処方してほしい?」
りうらの瞳から、自分に向ける熱が消えていく。
その温度差に、ほとけは初めて、薬では得られない「本当の胸の痛み」を自覚するのだった。
水は、自分の感情ステータスが常に『空っぽ(0)』であることに絶望し、
街の片隅にある、看板のない診療所を訪れた。
そこで待っていたのは、自分よりも少し年下の、
真っ赤な髪をした天才医者、りうらだった。
りうらは、カルテも見ずに淡々と告げる。
赤「ほとけ、また来たの? 君の心、もうボロボロだよ。
普通の薬じゃ効かない。……今日は、特別なやつにする?」
りうらが差し出したのは、ほとけの瞳と同じ色をした、綺麗な空色のカプセル。
「これはね、『自己愛』の処方箋。これを飲めば、
君は世界で一番、自分のことが愛おしくなる」
ほとけは縋るようにその薬を飲み干した。
瞬間、モノクロだった世界が鮮やかに色付き、
自分自身のことが涙が出るほど愛おしくなる。
水「りうちゃん、見て! 僕、生きてていいんだって思える!」
無邪気に笑いかけるほとけを見て、りうらは一瞬だけ、
形を崩した悲しげな微笑みを浮かべた。
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しかし、薬の効果は長くは続かない。
深夜、薬が切れたほとけは、以前よりも酷い自己嫌悪に襲われ、
震える足で診療所へと這いずった。
水「りうちゃん、もっと……もっとあの青い薬をちょうだい!」
りうらは、冷え切ったほとけの体を優しく抱きしめる。
赤「……ほとけっち。その薬の原材料、知ってる?」
耳元で囁くりうらの声は、どこか遠い。
「俺がほとけを想う気持ちを抽出して作ってるんだ。
ほとけっちが自分を愛せない分、俺の愛を削って、分け与えているんだ」
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薬を処方するたびに、りうらの心からは「ほとけへの愛」が確実に消えていく。
ほとけが偽物の愛で満たされるほど、りうらはほとけを
「愛せなくなっていく」という、残酷な等価交換だった。
赤「もうすぐ、俺の[漢字]在庫[/漢字][ふりがな]こころ[/ふりがな]はなくなる。そうしたら、俺はほとけっちを見ても何も感じなくなる。……それでも、まだ処方してほしい?」
りうらの瞳から、自分に向ける熱が消えていく。
その温度差に、ほとけは初めて、薬では得られない「本当の胸の痛み」を自覚するのだった。