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『まともを追求し、光り輝く勇者一行の最後尾で泥にまみれた荷物持ちと一羽のハシブトガラスが共謀して作り上げた、誰も死なず誰も救われない、しかし極めて合理的で「まとも」な世界の終わり方についての冒険記』

#6

最⭐︎終⭐︎章:『観測者たちの揺りかご』

1. 舞台裏の密談
魔王城の最上階。ステンドグラスから差し込む月光は、これから始まる「決戦」を待つにはあまりに静謐すぎた。
玉座に座る魔王は、角の生えた恐ろしい巨躯ではなく、疲れ切った学者のような男だった。彼は、自分の膝の上で羽を休めているハシブトガラスのクロを、細長い指で優しく撫でた。
「……カラスよ、お前の連れが来たようだ」
扉が音もなく開き、背嚢を背負ったエリオンが入ってきた。その後ろには、骨の触れ合う音を立てて歩く骸骨騎士、ボーンが控えている。
「勇者一行は、あと一時間でこの階層に到達します」 エリオンは淡々と言った。「彼の聖剣は本物です。まともに受ければ、この城ごと消滅するでしょう。……準備はいいですか?」
2. 生存という名の共謀
「ああ。私が消えれば、魔物たちは散り、人間たちは『共通の敵』を失って、次は自分たちの間で領土を奪い合うだろう」 魔王は自嘲気味に笑った。「だからこそ、完璧な『結界』が必要だ。ボーン、お前に任せられるか?」
ボーンはカタカタと顎を鳴らした。 (「……この城の周囲を、永劫の瘴気で包みましょう。人間には『魔王の呪い』に見え、我々にとっては『静かな隠れ里』となる壁を」)
クロは、魔王の膝からエリオンの肩へと飛び移った。 カラスの目から見れば、この計画は合理的だった。勇者は「名誉」という実体のない餌で満足し、魔王は「自由」という安住の地を得る。エリオンは「真実」という記録を懐に隠し、自分は「安全な餌場」を確保する。
これ以上に「まとも」な取引が他にあるだろうか。
3. 予定調和の爆発
やがて、凄まじい轟音と共に扉が吹き飛んだ。 「魔王! 今日こそ貴様の支配に終止符を打つ!」 黄金の光を放つ勇者が、仲間たちを連れて乱入してくる。
クロは天井の梁へと逃れ、その光景を真上から見下ろした。 勇者の聖剣が振り上げられる。エリオンは壁際で、必死に「恐怖に震える荷物持ち」を演じていた。魔王は立ち上がり、大仰な動作で両手を広げる。
「来い、光の仔らよ! 我が闇を……グアアアッ!」
……あまりにも、わざとらしい悲鳴だった。 聖剣が魔王の胸を貫くと同時に、ボーンが用意していた幻影魔法が発動した。魔王の体は派手な紫色の火花を散らして爆発し、黒い煙が部屋中に充満する。
(カァ。……少し火薬を使いすぎだ。羽が焦げる)
クロは冷静に、煙の隙間から「裏口」へと逃げ出す魔王とボーンの影を追った。
4. 嘘の完成
煙が晴れた時、そこには粉砕された玉座と、勇者の誇らしげな雄叫びだけが残されていた。 エリオンは膝をつき、嗚咽するふりをして顔を隠しながら、手元の手帳にこう記した。
「〇月〇日。魔王、滅ぶ。世界に永劫の光が戻った」
そのインクが乾かぬうちに、彼はページをめくり、反対側の白紙に本当のことを書き留めた。 「……しかし、光が届かぬ森の奥に、最もまともな『生』が隠されることとなった」
5. エピローグ
数日後。凱旋する勇者一行の最後尾で、エリオンは空を見上げた。 そこには、いつものように淡々と、一羽のハシブトガラスが旋回している。
クロは、エリオンがこっそりポケットから取り出したチーズの欠片を見逃さなかった。 空中でそれを鮮やかにキャッチすると、クロは一度だけ大きく鳴き、新しく生まれた「静かな森」の方角へと翼を向けた。
人間は、嘘をつかなければ平和すら作れない。 だが、その嘘を守るために一生を費やす観察者がいるのなら、それもまた、一羽のカラスが見届けるに値する「まともな物語」なのかもしれない。
「正義が勝利したのではない、生活が、勝利したのだ。」

作者メッセージ

ハイ……永らく投稿してませんでした…すみません!!!!
クロ「本音は?」 「まともな小説から解放されて最っっ高にハイってヤツだ!!」
エリオン「……(メモメモ)」 ヤメテェェ!!!メモらないでぇぇぇ!!

2026/06/11 12:13

木綿豆腐
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暴力表現連載小説カラス冒険記

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