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『まともを追求し、光り輝く勇者一行の最後尾で泥にまみれた荷物持ちと一羽のハシブトガラスが共謀して作り上げた、誰も死なず誰も救われない、しかし極めて合理的で「まとも」な世界の終わり方についての冒険記』

#4

第四章:正義という名の更地

1. 勇者の決断
真実を知った勇者の反応は、教科書通りでした。 「魔物と通じ、子供たちを贄にするなど、人の道に外れている!」 彼の瞳には、曇りのない「正義」が燃えていました。彼にとって、悪は斬るべき対象であり、そこに「冬を越すための食糧事情」という生存の理屈は介在しません。
勇者は村の中央で聖剣を抜き放ちました。 彼が召喚した聖なる炎は、魔物との契約の証である「古い祭壇」を焼き払い、村人たちが縋っていた唯一の生存手段を、一瞬にして灰に帰しました。
2. 荷物持ちの沈黙
エリオンは、その様子を村の外れ、大きな樫の木の下で見ていました。 彼は止めませんでした。止める権利も、止める力もないことを知っていたからです。
彼はただ、膝の上に広げた日記帳に、震える手で事実だけを書き込みました。 「〇月〇日。エルダー村、解放。同時に、この村の冬の餓死者は一〇〇名を超える見込み。勇者は満足げである」
エリオンの隣には、大きなハシブトガラス、クロが止まっています。 クロは首を傾げ、燃え盛る村の煙を眺めていました。
3. カラスの感想:群れの崩壊
クロは、逃げ惑う村人や、勝ち誇る騎士たちを見て、こう「感想」を抱きます。
(……馬鹿な群れだ。巣を温めるために、巣そのものを燃やしてしまった。あの輝く男は、自分が何をしたのか分かっていない。獲物がいなくなれば、自分が飢えることも。そして、この村人たちも、もうすぐ『動かなくなる肉』に変わることも)
クロにとって、勇者の行いは「狩りの成功」ではなく、「環境の破壊」でした。 せっかくの安定した餌場を、感情という不合理な理由で潰してしまったのです。
4. 灰の中の再出発
翌朝。 勇者一行は「また一つ、世界を救った」という晴れやかな顔で、次の目的地へと馬を走らせます。彼らのマントは風になびき、朝日を浴びて神々しく輝いています。
最後尾を歩くエリオンは、重くなった荷物(村人が口封じに持たせようとした、最後の食糧の詰め合わせ)を背負い直しました。
「……行こうか、クロ」
エリオンが呟くと、クロは力強く羽ばたき、彼の頭上を旋回しました。 勇者が作った「正義の更地」には、もう一粒の麦も残っていません。
(カァ。……あっちに、もっと賢い群れの匂いがするぞ。パンを持て、記録係。俺が道を見てやる)

作者メッセージ

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2026/03/27 09:11

木綿豆腐
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暴力表現連載小説カラス冒険記

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