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文スト短編集

#28

遊園地 ニコライ

「さあさあ、お立ち会い! 今日のクイズです!
平凡な日常から、一瞬で最高のスリルへ飛び込む方法はなーんだ?」

駅の待ち合わせ場所。突如として私の目の前の空間が「割れ」、外套をたなびかせたニコライが飛び出してきました。周囲の人が驚いて足を止める中、彼は恭しくお辞儀をします。

「正解は……僕の手を取ること! はい、決定!」

答えを待たずに彼は私の手を取り、そのまま外套の裏側——異能『外套』の空間へと引きずり込みました。視界が暗転したかと思えば、次の瞬間、私たちは色鮮やかな遊園地のゲート前に立っていました。

「ジャジャーン! 移動時間ゼロ。これぞ自由の特権だね!」

観覧車、空中の檻
絶叫マシンで喉が枯れるほど叫ばされ、ポップコーンを空中に浮かせて口に放り込む手品を見せられ……。
遊び疲れた夕暮れ時、彼は「最後はここだ」と、ひときわ大きな観覧車を指差しました。

ゆっくりと上昇するゴンドラの中。
地上から遠ざかるにつれ、下界の騒がしさが消え、密室に二人きりの沈黙が訪れます。

「ねえ。ここなら、重力からも、他人の視線からも『自由』になれると思わない?」

ニコライは窓の外を見つめながら、ふっと仮面のような笑顔を解きました。その瞳には、沈みゆく夕日の色が反射して、吸い込まれそうなほど綺麗です。

「……でも、結局はこのゴンドラという箱に閉じ込められている。皮肉だよね」

彼は私の隣に座り直し、細長い指で私の髪を弄びました。
いつもは冗談ばかりの彼が、今は驚くほど穏やかな、それでいて壊れそうな声で囁きます。

「僕はね、何にも縛られたくない。感情にも、運命にも、道徳にも。……でも、君と一緒にいると、胸の奥が『ぎゅっ』とするんだ。これは不自由だ。とっても、とっても不快で……愛おしい不自由さだ」

彼は私の頬を包み込み、自分の額を私の額に預けました。
彼の銀色の睫毛が触れそうなほど近く、いつもより速い鼓動が、繋いだ手から伝わってきます。

「ねえ。もし僕がいつか、この不自由さから逃れるために君を……なんて、嘘だよ! 冗談! あはは!」

急に顔を離し、彼はまた道化師の顔に戻ってケラケラと笑いました。
でも、その目は少しも笑っていなくて、ただ私を求めるような切なさが滲んでいます。

魔法が解ける前に
ゴンドラが地上に近づき、夜のパレードの光が見え始めました。

「おっと、楽しい時間はあっという間! 魔法が解けちゃうね」

ニコライは私の手の甲に、羽が触れるような軽いキスを落としました。

「今日のデートは、僕の心臓に深く刻まれたよ。君という名の『鎖』に繋がれるのも、たまには悪くないかな」

地上に降り立つと、彼はまた私の手を引いて、夜の雑踏へと駆け出しました。
自由を愛する鳥が、自らその羽を休める場所を見つけたような。
そんな、可笑しくて少しだけ切ない、二人だけの遊園地の思い出です。

作者メッセージ

そういえば3月10日誕生日なので5個程投稿予定です

2026/02/24 19:39


ID:≫ 8hMcn.vWKf9vE
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