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文スト短編集

#24

歪な関係 太宰

ポートマフィアの息がかかった、薄暗い路地裏の廃ビル。
 鉄錆と潮の匂いが混ざり合うその場所が、十五歳の太宰治の「お気に入り」だった。

「……また、君か。熱心だね、死神を追いかけるなんて」

 崩れたコンクリートの縁に座り、ぶらぶらと足を揺らしながら、彼は振り返りもせずに言った。
 全身に巻かれた真新しい包帯が、月光を弾いて白く浮き上がっている。触れれば壊れてしまいそうなほど細い体躯。けれど、そこから放たれる威圧感は、並の構成員を震え上がらせるのに十分だった。

「太宰さん。……怪我、増えました?」

 私が隣に並んで座ると、彼はようやくこちらを向いた。
 右目を覆う包帯の隙間から、底の見えない闇のような左目が私を射抜く。

「これ? 掃除が行き届いていない階段があったせいだよ。……あぁ、期待したような劇的な心中未遂じゃない。残念だったね」

 嘘だ。彼がそんな単純な不注意で怪我をするはずがない。
 私が黙って、彼の剥き出しになった手首の、冷たい肌に指先を触れる。彼は拒絶もしない代わりに、体温を分かち合おうともしなかった。

「ねぇ、一つ教えてよ。どうして君は、僕がいつ消えてもおかしくないって知っていて、そんな顔で僕を見るの?」

 太宰がふっと顔を近づけてくる。
 幼さの残る顔立ちに、不釣り合いなほど冷徹な微笑。

「哀れみ? それとも、僕という毒に当てられたかな。……もしそうなら、今のうちに逃げたほうがいい。僕は自分を愛せない人間を、愛し方なんて知らない人間を、君の隣に置いておくほど慈悲深くはないんだ」

 彼の言葉は、まるで鋭い硝子の破片だ。
 けれど、私は逃げなかった。ただ、彼の冷え切った手を両手で包み込み、自分の熱を押し付けるように握りしめる。

「……逃げません。太宰さんがどこかへ行くなら、その裾を掴んででも引き止めますから」

 私の言葉に、太宰は一瞬だけ、本当に一瞬だけ、計算外のことが起きたかのように目を見開いた。
 次の瞬間、彼は自嘲気味に声を立てて笑う。

「……ははっ、滑稽だね。君は。……僕を繋ぎ止められると本気で思っているの?」

 彼は笑いながら、けれど握りしめた私の手を振り払うことはしなかった。
 それどころか、彼は私の肩に頭を預け、深い闇の底に沈むような溜息をつく。

「……重いよ。君の体温。……でも、悪くない。……ほんの少しだけ、夜が明けるまでなら、君のその勝手な幻想に付き合ってあげてもいい」

 十五歳の彼は、まだ愛を知らない。
 けれど、その夜。私の体温に触れながら眠るふりをする彼の指先が、微かに私の服を掴んでいたのを、私は一生忘れないだろう。

私の肩に預けられた太宰さんの体温は、驚くほど低かった。
 けれど、彼が規則正しく刻む呼吸の音だけが、この廃ビルの中で唯一の「生」の証拠のように思えて、私は動けずにいた。

 ……その静寂が、無遠慮な足音によって粉々に砕かれるまでは。

「おい、手前(てめえ)! こんなところで油売ってんじゃねえよ、青鯖!!」

 鼓膜を震わせる怒鳴り声。
 重いブーツの音がコンクリートを蹴り、階段を駆け上がってくる。

 太宰さんは目を開けることすら億劫そうに、私の肩に顔を埋めたまま、深く、深ーい溜息をついた。

「……あぁ、最悪だ。せっかく心地よい眠りの淵にいたのに。不法投棄されたナメクジの鳴き声が聞こえるよ」
「誰がナメクジだ、ぶち殺すぞ!!」

 現れたのは、オレンジ色の髪を逆立てた少年――中原中也だった。
 彼は私たちが肩を寄せ合っている姿を一瞥し、一瞬だけ毒気を抜かれたような顔をしたが、すぐにまた眉間に皺を寄せて詰め寄ってくる。

「森の野郎がお呼びだ。重要拠点の警護方針について、手前の知恵を貸せってよ」
「森さんも人使いが荒いねぇ。僕は今、この子と心中するかどうか、人生で一番大事な会議の最中なんだけど?」

 太宰さんはようやく私の肩から頭を離すと、わざとらしく私の腰に手を回し、中也を挑発するように薄く笑った。

「なっ……心中だと!? 手前、また一般人を巻き込んでんのか!」
「巻き込んでないよ。彼女は僕の『特別』なんだ。ねぇ?」

 耳元で囁かれる甘い声。
 けれど、私に向けられたその瞳の奥には、中也への嫌がらせを楽しむ子供じみた光と、先ほどまでの孤独が入り混じっていた。

「……太宰さん、仕事なら行ったほうがいいんじゃ……」
「ほら見ろ、こっちの方がよっぽど話が分かるじゃねえか。さっさと立て、太宰」

 中也が苛立たしげに足元を蹴ると、太宰さんは「ちぇっ」と舌打ちをして、ゆっくりと立ち上がった。
 服についた埃を払う仕草さえ、どこか優雅で、それでいてひどく投げやりだ。

「……じゃあね。邪魔が入っちゃったから、今日のところはこれでおしまい」

 彼は去り際、中也の視線を盗むようにして、私の耳元に唇を寄せた。

「次は、あのチビの届かないもっと高いところで会おう。……君の体温、忘れないであげるよ」

 ひらひらと包帯の巻かれた手を振って、彼は文句を垂れ続ける中也と共に、闇の奥へと消えていく。
 残されたのは、鉄錆の匂いと、私の肩に残った微かな重みだけだった。

「……おい、手前。ちょっと待て」

 太宰が森さんの元へ先に行った隙を見計らい、中原中也が足を止めて振り返った。
 夕闇の中で光る青い瞳は、鋭く、けれどどこか居心地が悪そうに私を見つめている。彼は苛立ったように帽子の庇をぐいと下げ、ポケットに手を突っ込んだ。

「……あいつと、いつからあんな風にツルんでやがる」

 その問いに答えられずにいると、中也は短く舌打ちをした。私を責めているのではなく、あいつ――太宰の得体の知れなさに腹を立てているのは明白だった。

「いいか、よく聞け。あいつは……太宰って男は、人間に見えるが中身は空っぽだ。底のねぇ深い穴みたいなもんでな。どんなに熱を注ごうが、優しくしようが、全部飲み込んで消しちまう」

 中也が一歩、私との距離を詰める。
 彼の纏う空気は荒々しいが、先ほどの太宰が放っていた「底知れぬ闇」とは違う、人間らしい熱量に満ちていた。

「手前みたいな真っ当な奴が、あいつの側にいて無事でいられると思うなよ。あいつは自分の孤独を埋めるために、平気で他人を道連れにする。心中だなんだと、本気じゃねぇフリして、いつか本当に手前を泥沼の底に引きずり込みかねねぇんだ」

 中也の言葉は、太宰を憎んでいるから出るものではない。
 相棒として隣にいる彼だからこそ知っている、太宰治という人間の「危うさ」に対する、彼なりの警告なのだ。

「……悪いことは言わねぇ。今のうちに逃げとけ。あいつに心を全部食われちまう前にな」

 中也はそれだけ言うと、ふいと顔を背けた。
 夕風に煽られたコートの裾が翻る。彼はそのまま歩き出そうとして、思い出したように足を止めた。

「……どうしても逃げられねぇってんなら、せめて、あいつに呑まれるな。……手前まで、あっち側の住人になっちまう必要はねぇんだからな」

 ぶっきらぼうな言い捨て。けれどそこには、マフィアという闇に身を置きながらも、光側の人間を放っておけない中也らしい優しさが滲んでいた。

「……チッ、何言ってんだ俺は。行かねぇと、あの鯖野郎がまた面倒なことしやがる」

 彼は一度もこちらを振り返ることなく、足早に闇の中へと消えていった。
 残された私の掌には、先ほど太宰さんに握られていた時の、冷たい感触だけがこびりついている。

 ――中也さんの忠告は、正論だ。
 けれど、あの「底のない穴」のような瞳を思い出して、私の足は、逃げる方角には動いてくれなかった。

翌日、いつもの廃ビルに向かうと、太宰さんは既にそこにいた。
 けれど、昨日とは雰囲気が違う。彼は柵に背を預け、手遊びのように一錠の薬を弄びながら、私が近づくのを待っていた。

「……あぁ、来たね。今日も律儀に、死神の元へ」

 その声は、一見いつも通り穏やかだ。けれど、私を捉える左目は、昨夜よりもずっと冷たく、鋭い。
 私が数歩手前で足を止めると、彼はふいとその薬を放り捨て、音もなく歩み寄ってきた。

「昨日の帰り、中也と何を話していたの?」

 心臓が跳ねた。やはり、見られていた。
 太宰さんは私のすぐ目の前で立ち止まると、逃げ場を奪うように、ひんやりとした指先で私の顎を掬い上げた。

「彼はなんて言った? 『あいつは空っぽだ』とか、『深入りするな』とか……そんな、つまらない正論を吐かれたのかな?」

 図星だった。私が黙り込むと、太宰さんの瞳に暗い愉悦が浮かぶ。

「図星だね。……中也は馬鹿だけど、ああいう『人間らしい』心配だけは得意だから。でも困るなぁ、僕の飼い犬を怖がらせるような真似をされては」

 飼い犬。その言葉に私が眉を潜めると、彼はさらに顔を近づけた。包帯の隙間から覗く肌の白さと、微かな消毒液の匂いが鼻を突く。

「ねぇ。君は中也の言う通り、僕から逃げる? それとも――」

 彼は顎に添えていた指を、そのままゆっくりと私の首筋へと滑らせた。まるで、どこを絞めれば一番簡単に「生」が零れ落ちるかを探るような、無慈悲な手つき。

「――中也の言葉なんてゴミ箱に捨てて、僕と一緒に地獄の底まで落ちてくれる?」

 その問いは、愛の告白などではない。
 自分と同じ孤独の中に、私を道連れにしようとする少年の、必死で残酷な「救い」の求め方だった。

「中也を選んでもいいよ。でも、中也は君を『普通の女の子』としてしか扱わない。……僕だけだよ。君の中に眠っている、僕と同じ『空虚』を愛してあげられるのは」

 嘘だ。私は彼ほど空っぽじゃない。
 けれど、そうやって私を闇に定義しようとする彼の瞳が、あまりに綺麗で、寂しそうで。

「……逃げないって、昨日言ったはずです」

 私が震える声で答えると、太宰さんは一瞬、満足そうに目を細めた。そして、首筋にあった手を、今度は私の頬を包み込むように移動させる。

「いい子だ。……あんなナメクジの言うことなんて、二度と聞いちゃダメだよ。君の耳も、心も、僕だけのものなんだから」

 そう言って冷たく微笑む彼の横顔は、昨日の弱々しさなど微塵も感じさせない、ポートマフィア最年少幹部候補としての、美しくも恐ろしい「支配者」の顔だった。

その日から、私と太宰さんの関係は、目に見えて歪んでいった。

 彼は私を、美しい硝子細工か何かのように扱う。
 ポートマフィアの任務でどれほど血生臭い場所にいても、私の前では少年のような無垢な顔をして見せ、一方で、私の交友関係や行動範囲をじわじわと、蜘蛛の巣を張るように制限していった。

「今日はどこへ行っていたの? ……あぁ、言わなくていい。服にパン屋の匂いがついている。あそこの店主は、客にやたらと愛想を振りまくから嫌いなんだ。……明日は、行かないでね」

 そんな風に、彼は私の日常を少しずつ「太宰治」という色だけで塗り潰していく。

 けれど、彼が私を縛り付けているようでいて、実はその反対なのだということも、私は気づき始めていた。

「……ねぇ。今日も、寝付くまで手を握っていてよ」

 廃ビルのいつもの場所。深夜、任務を終えた太宰さんは、ひどく疲れ切った様子で私の膝に頭を乗せる。
 この時の彼は、昼間の冷徹な幹部候補とは思えないほど、脆い。
 私が指先で彼の柔らかな髪に触れると、彼は壊れ物を抱きしめるような力強さで、私の腰にしがみついてくる。

「君がここにいると思うだけで、この退屈で仕方のない世界が、少しだけマシに見えるんだ。……不思議だね。君は毒にも薬にもならないはずなのに」

 彼は私を「自分のもの」にすることで、かろうじてこの世界に自分を繋ぎ止めている。
 私が彼から逃げないことは、彼にとって、死ぬことよりも重要な「生の証明」になっていた。

 ある日、廊下ですれ違った中也さんは、私を憐れむような、あるいは諦めたような目で一瞥した。

「……手前、本当にあいつの沼に嵌りやがったな」

 そう吐き捨てた中也さんの声には、もう最初の頃のような激しい怒りはなかった。
 彼にも分かっているのだ。太宰治という怪物を繋ぎ止めておけるのは、もはやその毒を甘んじて受け入れる覚悟をした、私だけなのだということが。

「太宰さん。……私、どこにも行きませんよ」

 膝の上で、微かに震えた彼の肩に毛布をかけながら、私は呪文のように繰り返す。
 彼は何も答えない。けれど、握りしめられた私の指に、さらに力がこもる。

 私たちは、救い合っているのではない。
 二人で一緒に、底のない暗闇へ、ゆっくりと沈んでいっているだけだ。
 けれど、その暗闇は、どんな陽光の下よりも、今の私には心地よく感じられた。

「……いい子だ。……ずっと、僕の側にいてね」

 眠りに落ちる寸前、彼が零した言葉は、願いのようでもあり、決して解けない呪いのようでもあった。

横浜の空は、あの日と同じように高く、どこまでも無関心に晴れ渡っていた。
 私は、ポートマフィアという組織の影が薄れた今の生活に、ようやく慣れ始めていた。あの「包帯の少年」が忽然と姿を消してから、数年。私の時間は、止まったまま動いているような、奇妙な感覚の中にあった。

 そんなある日の午後。
 人混みの中で、ふっと風に乗って「あの匂い」がした。
 薬の匂いと、微かな潮風。そして、記憶の底にこびりついて離れない、誰よりも冷たかったあの体温の記憶。

 振り返ると、そこには見知らぬ砂色のコートを纏った、背の高い男が立っていた。

「……あぁ、やっぱり。君は、驚くほど変わらないね」

 その声。15歳の頃の、どこか刺々しかった少年っぽさは消え、穏やかで、けれど深淵のような奥行きを湛えた大人の男の声。
 右目を覆っていた包帯はもうない。剥き出しになった両の瞳は、以前よりもずっと、柔らかに光を反射していた。

「太宰、さん……?」
「そうだよ。おひさしぶり、と言えばいいのかな」

 彼は以前のように、無理やり私を暗闇へ引きずり込もうとはしなかった。
 ただ、数歩の距離を保ったまま、悪戯が見つかった子供のような顔で笑っている。

「……死んだって、聞きました。マフィアを裏切って、それから……」
「死のうとはしたけれどね。残念ながら、まだ神様に嫌われているみたいで。……今の僕は、ご覧の通り。人を助ける仕事なんてものを、柄にもなく始めているんだ」

 彼は、探偵社の手帳をちらりと見せて、可笑しそうに肩をすくめた。
 かつて、「僕の側にいて」と呪いのように私を縛り付けた彼。あの歪な共依存の日々は、今の彼にとっては、もう過ぎ去った過去の思い出に過ぎないのだろうか。

 不意に、太宰さんがその距離を縮めた。
 かつてのように私の首筋に手をかける代わりに、彼はそっと、私の頬に触れるか触れないかの距離で手を止める。

「……君を置いていったこと、怒っているかな」
「……」
「君をあの泥濘に残したまま消えるのは、僕にとって唯一の心残りだった。……でも、今の君の瞳を見て、安心したよ。君は、ちゃんと自分の足で、光の下を歩いている」

 その言葉に、胸の奥がぎゅっと締め付けられる。
 彼は、私を自由にするために、あの日、何も言わずに消えたのかもしれない。

「ねぇ。今の僕は、君を暗闇に閉じ込める必要はなくなった」

 太宰さんは、私の手を取った。
 15歳の頃、あんなに冷たかった彼の掌。けれど、今、重ねられたその手は――驚くほど、温かかった。

「これからは、光の中で君の隣を歩いてもいいかな。……今度は呪いじゃなくて、約束として」

 再会した彼の瞳には、かつての孤独な少年はいなかった。
 けれど、握りしめられた指先の、少しだけ震える熱量が。
 彼が今も、私という存在に「生」を繋ぎ止めてもらおうとしている、あの頃のままの彼であることを教えてくれていた。

太宰さんが、私の手を優しく包み込み、甘い約束を口にしようとしたその時。

「――おい、太宰ッ!! 手前、こんなところで何サボってやがる!!」

 地面を震わせるような怒号が響き、空から「重力」を纏った黒い影が舞い降りた。
 着地の衝撃でアスファルトが微かに鳴り、砂埃の中から現れたのは、かつてよりも一回り逞しくなり、より一層上質な黒帽子を被った男。中原中也だった。

 彼は鋭い視線で太宰を睨みつけていたが、その隣にいる私の存在に気づいた瞬間、その青い瞳が驚愕に揺れた。

「……あ? 手前、まさか……」
「やぁ、中也。相変わらず声が大きくて、周りの鳩がみんな逃げてしまったよ」

 太宰さんは露骨に嫌そうな顔をして、私の肩を抱き寄せ、これ見よがしに距離を縮めた。

「見ての通り、私は今、数年ぶりの再会を惜しんで、最高にロマンチックな時間を過ごしているところなんだ。野暮なナメクジは、自分の棲家(マフィア)に帰ってくれないかな」
「誰がナメクジだ!! ……つーか、手前! まだこの女を振り回してやがったのか!?」

 中也が私の方へ一歩踏み出す。彼は私をマジマジと見つめ、呆れたように、けれどどこか安心したように鼻を鳴らした。

「おい、手前……。あれだけ逃げろっつったのに、結局まだこの包帯無駄遣い機とツルんでんのかよ。物好きにも程があんだろ」

 その言葉は乱暴だけれど、15歳の頃のあの「忠告」を彼が今も覚えているのだと分かり、私は思わず小さく笑ってしまった。

「中也さん、お久しぶりです。お元気そうで良かったです」
「元気なわけねぇだろ。こいつがいなくなってから、後始末の半分が俺に回ってきてんだぞ」

 中也が毒づくと、太宰さんは「それはそれは、ご苦労様」と心底どうでもよさそうに笑い、私の耳元で囁く。

「ねぇ、行こうか。このままだと、彼の低すぎる身長が伝染してしまいそうだからね」
「あんだとコラァ!! 待て太宰、話は終わってねえぞ!!」

 太宰さんは中也の怒声を受け流しながら、私の手を引いて歩き出す。
 かつての廃ビルの暗闇とは違う、眩しい午後の光の中を。

 去り際、中也が「……おい」と、少しだけ声を落として私を呼んだ。
 振り返ると、彼は不機嫌そうに帽子を深く被り直し、そっぽを向きながら言った。

「……ま、今度は死ぬ気で守れよ、太宰。次、こいつに泣きそうなツラさせた時は、マジで重力で潰すからな」

 その言葉に、太宰さんは振り返ることなく、ただひらひらと手を振って応えた。
 
「言われなくても。……今の私は、以前よりもずっと、独占欲が強くなっているんだ。中也みたいに優しくはないよ?」

 握られた手の熱が、さらに一段、強くなる。
 それは15歳の頃の「縛り付けるための熱」ではなく、共に生きていくための、確かな生命の熱だった。

作者メッセージ

約7400文字!!AIを使ってます!!
今回は名前のとこ付けてないです!!
め、、めんどくさかったとかじゃないのよ?!

2026/02/23 19:27


ID:≫ 8hMcn.vWKf9vE
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