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文スト短編集

#42

貴方の望む者にはなれなかった 森鴎外

ある月の綺麗な夜だった。
森が執務室を空けた数分の間に、静かな決別は行われた。

誰もいない首領室のベランダ。そこには、彼女の脱ぎ捨てられた靴が、まるで行儀よく主人の帰りを待つかのように揃えられていた。

その傍らに置かれていたのは、鮮やかなアネモネとコリウスの花束だ。

アネモネの儚げな花びらが夜風に震え、

コリウスの深く色づいた葉が、彼女の秘めた情熱を代弁するように暗がりに浮かび上がる。

その花束に添えられた手紙には、ただ一行、彼女の真実が記されていた。

●●「森さん。……本当は、貴方のことが大好きでした」

●●は、夜風に髪をなびかせながら、迷いなくその縁に立った。マフィアのビルは高く、下界の光はまるで宝石を撒いたように美しい。
彼女は最後に一度だけ、愛しい人が座る椅子を振り返り、ふわりと重力に身を任せた。

数分後、戻ってきた森は、静まり返った部屋の異変に気づいた。開け放たれた窓、風に揺れるカーテン。そして、遺された花束と手紙。

彼は手紙を読み終えると、震える指先でアネモネの柔らかな花弁に触れた。

森「……馬鹿な子だ」

冷徹な首領としての仮面が、音を立てて崩れ落ちる。
彼は知っていた。彼女の視線の意味も、その幼い恋心の熱量も。そして、自分自身が彼女に対して抱いていた感情が、単なる「庇護欲」をとうに超え、歪んだ執着にすら似た深い情愛であったことも。

だが、彼は組織の長であり、彼女はまだ15歳の、あまりに眩しい少女だった。だからこそ、彼はあえて冷徹な「首領」を演じ、彼女を「子供」として扱うことで、己の理性をつなぎ止めていたのだ。

森「私の方が、君を――愛していたというのに。これでは、教育者失格だね」

森は、彼女が溶けていった夜空を見上げ、震える声で独りごちた。
遺された花束と、もう主のいない靴だけが、永遠に噛み合うことのなかった二人の愛を静かに物語っていた。

作者メッセージ

リクエスト待ってます!キャラの指定だけでも、シチュの指定だけでもいいんで!
ぜひリクエストください!

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