凪の笑顔を見送った直後、千鶴の表情から体温が消えた。
自分の家の玄関を開ける。その瞬間、鼻を突くのは安っぽい香水の匂いと、淀んだ酒の気配。
母「あら、お帰り。……遅かったじゃない。誰と油売ってたの?」
リビングのソファにだらしなく座った母親が、虚ろな目で千鶴を見る。手にはグラス。
千鶴「……別に。学校のやつと。」
母「ふーん。……ねぇ、こっち来なさいよ。アンタ、最近ますますあの男(父親)に似てきたわね……気味が悪い。でも、顔だけはいいわ……」
母親がふらりと立ち上がり、千鶴の喉元に冷たい指先を這わせる。
千鶴は奥歯を噛み締め、抵抗を諦めて目を閉じた。ここで逆らえば、もっとひどい暴力と「あんたなんて産まなきゃよかった」という呪詛が飛んでくることを知っているからだ。
母「いい?アンタは私の所有物なんだから。勝手に他の女と仲良くなんてしないで。……服、脱ぎなさい。背中のアザ、まだ消えてないでしょ?見せてよ。」
荒い手つきで制服のボタンを外される。
昼間、凪が触れたのと同じ制服。凪が「カッコいい」と言ってくれた自分の身体。
それが今、汚泥に塗れるように汚されていく。
……あぁ、クソ。……死ねよ。……俺も、こいつも。
心の中で毒を吐きながら、千鶴の意識は急速に冷めていく。
ふと、窓の外に目をやった。
隣の家の、凪の部屋の窓。あそこにはきっと、温かい夕飯と、優しい家族の声がある。
……凪、お前は……こっちに来るなよ。……絶対、見せねぇからな。
背中に走る鋭い痛みと、まとわりつくような不快な愛撫。
千鶴はただ、凪の笑顔を頭の片隅に必死で繋ぎ止めながら、嵐が過ぎ去るのを待つしかなかった。
自分の家の玄関を開ける。その瞬間、鼻を突くのは安っぽい香水の匂いと、淀んだ酒の気配。
母「あら、お帰り。……遅かったじゃない。誰と油売ってたの?」
リビングのソファにだらしなく座った母親が、虚ろな目で千鶴を見る。手にはグラス。
千鶴「……別に。学校のやつと。」
母「ふーん。……ねぇ、こっち来なさいよ。アンタ、最近ますますあの男(父親)に似てきたわね……気味が悪い。でも、顔だけはいいわ……」
母親がふらりと立ち上がり、千鶴の喉元に冷たい指先を這わせる。
千鶴は奥歯を噛み締め、抵抗を諦めて目を閉じた。ここで逆らえば、もっとひどい暴力と「あんたなんて産まなきゃよかった」という呪詛が飛んでくることを知っているからだ。
母「いい?アンタは私の所有物なんだから。勝手に他の女と仲良くなんてしないで。……服、脱ぎなさい。背中のアザ、まだ消えてないでしょ?見せてよ。」
荒い手つきで制服のボタンを外される。
昼間、凪が触れたのと同じ制服。凪が「カッコいい」と言ってくれた自分の身体。
それが今、汚泥に塗れるように汚されていく。
……あぁ、クソ。……死ねよ。……俺も、こいつも。
心の中で毒を吐きながら、千鶴の意識は急速に冷めていく。
ふと、窓の外に目をやった。
隣の家の、凪の部屋の窓。あそこにはきっと、温かい夕飯と、優しい家族の声がある。
……凪、お前は……こっちに来るなよ。……絶対、見せねぇからな。
背中に走る鋭い痛みと、まとわりつくような不快な愛撫。
千鶴はただ、凪の笑顔を頭の片隅に必死で繋ぎ止めながら、嵐が過ぎ去るのを待つしかなかった。